見るのが100倍オモロくなる西洋美術史PART-7 〈ゴシック美術〉
美術の歴史を知って、美術鑑賞をもっとおもしろく見てみましょうと始めたこの企画。
今回は第7弾、ゴシック美術(1100年中頃~1300年代)についてです。
1100年中頃、フランスから新しい美術のスタイルが生まれました。これがゲルマン民族のゴート族にちなんで「ゴシック」と呼ばれます。
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余談ですが、日本ではゴシック(Gothic)の短縮形としてゴス(Goth)と使われるこがあります。ですが英語の頭文字のGothはゴート人を指します。また欧米や日本ではGothはゴシック・ロックやゴシック・ファッションにに使われる用語でもあります。
ただし実際のゴシック・ファッションはゴシック時代のファッションではなく、ヴィクトリア朝風ドレスやエリザベス朝のもので、ゴシック時代の影響を直接受けているものではありません。
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ゴシック美術の始まり
さて、本題に戻ります。
1137年に修道院長のシュジェールがサン・ドニ修道院の改築にあたり、王権を神に授けられたものとして聖堂を壮大なものにしようとしたのがゴシックの始まりです。
それ以後の大聖堂はサン・ドニ大聖堂にならって建築されました。ゴシック建築の特徴は高く伸びた塔と、たくさんの大きな窓です。代表的なゴシック建築で世界遺産のシャルトル大聖堂を見てみましょう。
神の光の象徴・ステンドグラス
ゴシック建築の特徴はステンドグラスです。ステンドグラスは聖堂内に「神の光」があふれるイメージを演出しました。また、聖書のストーリーや聖人伝を描いたステンドグラスは文字の読めない人たちにとっては、目で読む聖書として重要な役割を果たします。
ただしシンプルな形が持ち味のステンドグラスは繊細な絵画表現には適しておらず、しだいに小規模となっていきます。
枠の制約から解き放たれた建築
前時代のロマネスク美術では建築の枠の形にあわせるよう、不自然で窮屈な表現の彫刻がほどこされていました(枠の法則)。しかしゴシック時代になると、その制約から解放されます。人物像は独立した丸彫となり、人間的で感情表現もされた写実表現がみられるようになります。
この時代は厳めしい神よりも、慈愛にみちた聖母像が好まれました。聖母像はS字型に体をくねらせた優美な姿、体の動きにあった流れるような衣の襞が特徴です。
写本制作は町の工房へ
それまで写本づくりは修道院の工房でつくられていましたが、ゴシック時代になると町の工房でつくられるようになります。優雅な人物像が好まれたため、流麗な線と華麗な色彩で表現されました。
1300年代には写本工房の親方ジャン・ピュセルが北方(フランス・ドイツ・イタリア)初の室内の空間表現を行います。彼はイタリアの立体感とフランドル美術(ベルギー周辺の美術)の人物表現をとりいれ優美で洗練されたフランスのスタイルをつくり、それが国際ゴシック様式へとつながっていくことになったのです。
まとめ
11世紀~12世紀のロマネスク美術は厳粛で精神的、教会は低く堅いつくり、美術のスタイルは素朴で田舎風でした。それに対して、12世紀~14世紀のゴシックは華麗で現実的、教会は高い塔があって、美術のスタイルは都会的で洗練されたものに変化していったということがいえます。
次回はイタリア・ゴシックを紹介する予定です。
ついに西洋絵画の父ジョットが登場!西洋美術史における絵画時代の幕開けとなります。
最後までお読みいただきありがとうございました!
※参考文献:西洋美術史(美術出版ライブラリー 歴史編)/鑑賞のための西洋美術史入門(リトルキュレーターシリーズ)/Wikipedia
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