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ハーバードの授業

もちろん受講するクラスによって千差万別だが、私が受講したノンテクニカルな授業に関しては、「レベルが高くてついていけない」なんてことは一切なかった。入学する前は、「Failしたらどうしよう」と本気で心配していたけれど、まじめに授業を受け、まじめにアサイメントを提出すれば、その心配は一切ないと断言できる

  • 一日の流れ

    • スケジュールによって多少の前後はあるが、7時頃起床し、18時くらいまではジム・授業・アサイメントをやるのみ。夕飯後も23時頃までアサイメント、もしくは次の日の準備という流れなので、一日中勉強

    • 朝昼晩ほぼすべて家でご飯をすませる。授業やアサイメントが忙しく、ソーシャライズする余裕がないのと、私に関しては金銭的余裕が一切なかった

    • 基本的にアサイメント等は平日中に終わらせ、土日は授業関連のことは一切しないのがデフォルトだったが、日曜の夕方には次の日の準備をせざるを得なかった

    • 忙しすぎて、アメリカ外の友人との連絡が途絶えがちになった

  • 授業選択

    • 卒業には合計32単位が必要。これを秋・1月・春タームで配分して受講するのだが、3つのカテゴリーから各4単位ずつ授業を取得することが必須。各タームの最小・最大単位数など色々条件があり、かつ卒業条件に関する情報がウェブサイト上に散在しているので、自分で情報収集、かつ、まとめて把握することが大事

    • リーダーシップ系の授業を12単位以上取得するとMLD証書(Certificate in Management, Leadership and Decision Sciences)を取得できる

    • HKSのMCMPAプログラムは本来STEM対象ではないのだが、2024年卒から所定の授業を16単位以上取得すると、STEM対象の学位を取得できるようになった。これにより、卒業後に申請できる1年の就労ビザが2年間延長できる(諸々縛りあり)

    • 卒業単位が32単位なので、MLD証書やSTEM取得する場合は、授業選択にあまり自由がないのだが、結果的には良い選択をできたので満足

    • 人気のある授業は、応募数が募集数を上回ると、入札のプロセスに入る。1年で1000点のポイントを付与されるので、過去の入札結果や、自分なりに色々考え、入札価格を決めて申し込む。クリアリングプライスが入札価格より低ければ受講できるが、高ければそのクラスは受講できない。高い授業料を払っているのになぜ取りたい授業が取れないのか、席を増やせば良いではないか、と皆不満だった。そのとおりだ

  • ハーバードの授業

    • ハーバードはコールドコールが有名(「あなたはどう思う?」といきなりふられる)だが、そんなになかったし、あっても難しい質問とかはふられなかった

    • 参加型授業を好み、かつ、発言するのが大好きな生徒が多い。関係ないコメントで時間が取られたり、教授によっては脱線を避けられない事態になったりするので、私はあまりこのスタイルは好きではなかった

    • アサイメントに関しては、どれほど力を入れたいか、で力の加減が変わってくると思う。私は興味が沸かないものに関してはリーディングをやっても一向に頭に入らず、20ページ読むのに3時間かかって何も学ばないなんてことも多々あったので、興味ないものは一切読まない、とあるタイミングで振り切った。アサイメントはちゃんとAを取りたいので頑張るけど、レビューも「もうこれ以上レビューしても何も出てこないな」と思ったらすぱっと切り捨てて、提出した

    • 受講生は目的がみんな違う。純粋に学びにきていて、毎日朝の2時まで勉強して、アサイメントに真面目に取り組む人もいれば、ただハーバードのタイトルがほしい、もしくはハーバードのネットワークを広げることが目的の人ももちろんいて、アサイメントも出さない、もしくは適当、授業中は上の空だけど終わった瞬間に教授のもとに駆け寄って印象作りに取り組む人もいる。周りの人のことは気にせず、自分がなぜ進学したのか、何をしたいのか、きちんと芯を持って自分が納得いく受講スタイルを遂行すれば良いと思う

  • 印象に残った授業

    • リーダーシップ/交渉術のクラスは一番学びが多かった。「Advanced Workshop in Multiparty Negotiation and Conflict Resolution」は1月の集中短期間型タームにのみ提供され、1月2日から10日間ほど、09:00-18:00まで月~土に授業があり、毎日宿題も出るし、次の日のシミュレーションの準備もしなくてはならず、この期間は本当に勉強以外何もできないのだが、今までハーバードで学んだ内容としては、一番プラクティカルだった。仕事だけでなく、日常生活においても非常に重要な対人スキルを習得できた

    • 「Moral Leadership: Ethics in Public Life」という道徳の授業では、世界で起きている正義の欠如等について学び、何が道徳なのか、何が良い判断なのかを深く考えさせる授業だった。もちろん、白黒した答えはないが、自分で納得する回答を出すためのツールボックスやコンセプトを学べ、また物事における視点の違いがいかに不可避か、そしてそれを乗り越えた答えを導くのが、あるべきリーダーシップだと思う

    • ハーバードではCross Registrationといって、一定の単位数までMIT・タフツ等の大学で授業を受講することができる。春学期にMIT(スローン)でサステナビリティの授業を取ったのだが、企業勤めをしていた人間にとってはプラクティカル内容だし、その他MBAの生徒と経験や知識について共有できたことは有意義だった

  • 健康に!

    • ストレス発散と、授業中は座りっぱなしなので身体を動かそうと、ジム(プール)はほぼ毎日通った

    • その上、時間および金銭的事情から外食・飲酒をしなかったので、明らかに体脂肪が減った

    • ハーバードのジムは、ハーバード他校の学生は無料だったりするのだが(学費に含まれているらしい)、HKSの学生は一年間の会員費としてUSD525支払う

    • プールは新しくてきれいなオリンピックプールがHBS(ビジネススクール)のほうにある。HKSに近いのはおんぼろプールで汚い。ルールも緩く、キャップ被らない人もいるし、事前にシャワーも浴びない人も多々見受けられるので衛生面がすごく気になる(水に髪がうようよ浮いている)

  • 差別に関する繊細さ

    • 女性、非白人差別に関して、システムも人も非常に繊細である。差別の歴史が深い国であること、そして何よりもハーバードがリベラルな学校であることがその環境づくりに寄与している。所謂、差別の被害者にあたる人が「これは差別だ」と非難すると、加害者にあたる人間(特権を持つ人)はその意見を反対することができないので、被害者が優位なパワーバランスが生まれざるを得ないように見える。ざっくりいうと、白人男性には発言権がないという構造が出来上がっているように感じた

    • 個人的な経験としては、秋の交渉術の授業で数週間にわたり、4回程ペアを組んで交渉のシミュレーションエクササイズをしたのだが、最後に交渉をした女性から、「今までのエクササイズがうまくいったのは、相手が女性だった。男性は押し付けることしかしないから生産的な会話ができなかった。あなたもそう思わなかった?」と質問された。数回のネゴシエーションというサンプルサイズで決めつけられるものなのか、そしてスキルセットの有無等の要因を考慮しないのかい、と疑問に思った

    • 2023年10月以降のパレスチナ戦争勃発への対応が批判され、ハーバード大学学長のクローディン・ゲイは辞任を余儀なくされた。その原因に至って、彼女が女性かつ黒人であるという社会的差別であるという批判とスキルの欠如であるという批判が、クラスの中でも数か月ほどぶつかり合っていた

  • 地政学的緊張の最中

    • 2023‐2024年は、ウクライナ戦争、パレスチナ戦争、エクアドルの治安悪化等、世界各国で大きな地政学的緊張が起きた年だった。直接的に影響を受ける生徒ももちろんいたし、そうでなくても、日々の会話、授業の発言などで、これらのトピックには毎日触れた

    • 2024年4月、パレスチナに関して大規模な学生デモが起き、全米で何百人もの学生が逮捕された。激動の社会でポリシーの学校にいることは非常に意義がある経験だったが、経験や情報によって形成された考え方の違い、そしてその中で平和への道を導き出す難しさというのを目の当たりにし、人間社会の複雑さを再認識した

    • 議論、デモ、いずれも日本では見かけることがない。日ごろから目にする環境にいたことによって、会話やデモの重要さを知った。これらがあるからこそ関心が生まれ、理解が深まり、かつ、それが当事者へのプレッシャーとなる。その一方、影響力が不明である中、参加することによって失うものも大きいので、デモ活動をどこまで守るのか、どこまでの活動が許されるべきなのか、国際社会全体として答えを見出す必要がある


ハーバードヤードのキャンプ:イスラエル・パレスチナ情勢に関する学生による抗議活動の一種。数日前、立ち退き命令が出ていた
試験中など、クリップボードで学生へのメッセージが作成される
4棟ほどの建物が中庭を囲む
学生ラウンジ。ここで勉強をしたり、無料のコーヒーやお茶を飲む。サプライはすぐなくなるので午前中に行くべし
カフェテリアと建物内の中庭。中庭で毎月金曜日にハッピーアワーが行われる。カフェテリアの食べ物は高く、おいしくない
ブロジェットジムの受付前のスペースにはハーバードのスポーツマンシップの歴史的なものが展示されている
ほぼ毎日通ったマルキンセンター(ジム)。古くて、施設も良いわけではないが、HKSに一番近い
2023年9月24日、クローディン・ゲイの大学学長就任式


寒い雨の中、心に刺さるスピーチに聴き入った


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