大瀧詠一 白い港
この曲はテープが擦り切れるまで聴いた。
大瀧詠一 白い港
りゅう坊が親元を離れ就職して4年半が経つ頃、昭和60年の秋に異動を命じられた。
りゅう坊の生まれ故郷に営業所ができるので、そこに赴任せよとの辞令だった。
その半年くらい前に、親しくなった年上の女性がいた。
仕事つながりで、最初は電話でのやり取りだけで、顔も見たことがなかった。電話で仕事の話しが終わると雑談をよくした。
声の感じもよかったし、話しが合った。よい印象だった。
ある日、その相手から食事の誘いがあった。
りゅう坊は22歳だった。恋人もおらず・・・浮足立った。舞い上がった。
逢ってみると、電話での印象どおり明るくて、ソバージュの似合う綺麗な女性だった。年齢はりゅう坊より3歳くらい上だった。車関係の仕事つながりだったので、その辺の話題で盛り上がった。
また逢う約束をした。
その後、何度か食事したり、ドライブに行ったり、りゅう坊のバイクの後ろに乗っけたりした。
やがてりゅう坊の想いがつのってきた。
『この人が好きだ』
ある晩、電話で自分の気持ち、想いを告白した。
様子がおかしい。
「ごめんなさい」を繰り返す彼女。
ちょっと長い沈黙・・・
彼女は結婚が決まっていたのだった。
「じゃぁ、なんでオレなんか誘ったんだよ!」
「ごめんなさい・・・」
マリッジブルーというのか、結婚に迷いと不安があったところに、話しが合うりゅう坊が現れたということだった。
失意のズンドコにあったりゅう坊にちょうど、異動の話しが持ち上がった。一人暮らしも疲れてきたし、彼女のことも忘れたい気持ちでいたので、実家に帰ることにした。
引っ越しの荷造りをしていた時に聴いていたアルバムが「ナイアガラトライアングル」(大瀧詠一・佐野元春・杉真理)の中の大瀧詠一の「白い港」だった。(前置きが長くなりました・・・)
「白い港」 作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一
心の片隅
何かがこわれたよ
青空が眩しい
港のカフェーの椅子で
ぼくはふと目をふせながら
腕時計巻いた
・・・
青空が眩しい
かもめが波をかすめる
ふれもせず
僕をかすめた
君に似ているよ
・・・
帽子の影から
流れる黒い髪
いつまでも見ていた
港のカフェーの椅子で
ぼくはふと
ひとりなんだと
気がついて
苦いコーヒー飲むよ
りゅう坊のふるさとは離島で、彼女に帰ることを伝えたら「港」まで見送りに来た。「白い港」ではなかったが、「白っぽい港」での別れだった。