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2024年度夏の青春18きっぷ旅行 3日目その1 セレンディピティを信じて街歩きを楽しむ(※無計画の意)(山代温泉周辺巡り)

※先に記しておくと、今回の旅の3日目については青春18きっぷは登場しない。1日中、加賀温泉(山代温泉)でのんべんだらりと過ごす予定。


前回のあらすじ

姫路から敦賀へ。東海道新幹線が停まった影響が俺の青春18きっぷ旅行にも少なからず影響する。混迷を極める北陸新幹線。駅弁買えず。加賀温泉。葉渡莉のエントランスは木の香り。そのぬくもりに用がある。海鮮丼で優勝。梨リキュール万歳。温泉最高。全員優勝、全員優勝、全員優勝。(サンボマスターのオマージュ)

朝風呂・九萬坊の湯と朝食ブュッフェ

昨晩はお楽しみでしたね

葉渡莉では予定通りに起床に成功。畳のイグサの匂いに包まれる和室の朝、心地よい。諸々準備をして、そそくさと葉渡莉の2つ目の大浴場・九萬坊の湯に向かう。

画像は公式サイトより引用。葉渡莉・九萬坊の湯

浴場は当然ながら撮影禁止なので公式サイトから写真を引用する。どうよ、この木のぬくもりが広がる空間は。これを朝から堪能することを贅沢と言わず何と言おう。特に奥の露天風呂、見た目の美しさもさながら身体の芯から温まる湯加減。気持ち良くて、風呂から出たら目覚めたばかりだけど部屋で二度寝してえな、という気にさせる。ここで2泊するのもアリだったかもしれない。

ちゃあちゃあ(迫真)

ちなみに九萬坊の湯にはサウナもある。また、葉渡莉には他にも貸切風呂が2つある。檜造りの「くらかけの湯」、石造りの「まこもの湯」だ。利用には別途料金が必要。連泊するときのマンネリ解消とか、あるいは家族連れ等でプライバシーを確保したい旅客には向いていると思う。

朝風呂から上がって朝食ブュッフェに向かう。男子高校生くらい食うぞ〜!と意気込んでいたけど、湯冷めしたのか空調にやられたのか、食事中に腹痛に襲われ、一般的な成人男性くらいの食事量で済ませてしまった。ほっけの西京焼が美味でした。

朝食の写真はこれだけ
売店でお土産を確保。チェックアウトまでラウンジで寛ぐ
1日も早い復興をお祈りしています

魯山人寓居跡 いろは草庵

葉渡莉オススメスポット

チェックアウトの時間になった。ここから次の宿に泊まるまでノープラン。セレンディピティを信じて街歩きを楽しむ、と言えばそれっぽいコンセプトの旅に聞こえるが、ぶっちゃけ、旅行計画段階で仕事に追われたりコロナに罹ったりして考える余裕と気力がなかったのが本音だ。故に、予め「なんとなくここ行きたいかも〜」と思っていたスポット+上掲した葉渡莉オススメスポット、その他その場で調べたスポットに押しかけることにした。

街歩きをするのに荷物が幾分かさばっていたので、ダメ元で次の宿泊先に電話して預かっていただけないか交渉する。チェックイン前の時間にも関わらず了承していただく。大変ありがたい。葉渡莉チェックアウト後にその足で次の宿に向かい、軽く挨拶して、街歩きには不要な荷物を預ける。15時から16時の間にまた改めてチェックインに来ますと告げて、身軽になった身体で最初に向かったのは、

ここだ
入館券を購入

芸術家・北大路魯山人が大正4年の秋から約半年間山代温泉旅館の刻字看板を彫るために逗留された場所。建物は明治初期に建てられと言われ、2002年より一般公開されている。建物内を見学するだけの文化財かと思っていたら、サービスで加賀棒茶と金平糖(きんぺいとう)をいただく。この日の気温は34℃、涼みながら冷たいお茶をいただけるなんて僥倖だ。

サービスの加賀棒茶と「きんぺいとう」
金箔が入っているから「きんぺいとう」らしい
須田菁華窯で制作された九谷焼と山中塗
篆刻
書斎
書斎

北大路魯山人とは(概略)

俺に教養がないので、「北大路魯山人とは誰やねん」ということを調べた内容を記す。
彼は明治〜昭和中期くらいに名を馳せた芸術家で、篆刻家、画家、 陶芸家、書道家、漆芸家、料理家・美食家などのさまざまな顔を持っていた。独学で書と篆刻を学び、「一字書き」の名手として名を知られるようになった1915年頃、魯山人は金沢の茶人で書家の細野燕台の元に食客として寄留し、山代の地で九谷焼の窯元・須田菁華など地元の有力者(旦那衆)に紹介され、美食や陶芸について啓発されて才能を開花させていく。彼は山代を離れた後も京都や金沢の素封家の食客として転々と生活し、食器と美食に対する見識を深めていく。例えば、会員制食堂を発足して自ら厨房に立ち料理を振舞ったり、そこで使用する食器を自ら創作したり、星岡茶寮という会員制高級料亭を始めたり。器や盛り付けを観賞するという意味で「日本料理は目で食べる」という言葉があるが、これに関連してなのか「食器は料理の着物」という言葉を残しているのは北大路魯山人その人である。この他に彼は、1954年には欧米各地で展覧会と講演会を開催し、その際にピカソやシャガールに会ったり、1955年に織部焼の重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定されるも辞退したりしている。

……Wikipediaとか公式サイトとかリーフレットの情報を統合すると上記のようになる。大学生のしょぼいレポートみたいになってしまった。勉強になるね!

服部神社・八十八ヶ所・萬松園栄螺堂

鳥居の前のクソデカ舞台

先に宿泊していた葉渡莉という旅館名の由来は、この服部神社、及びこの土地の旧地名の服部らしい。いろは草庵から出てすぐのところにこの鳥居があるのだけど、何かの工事か祭の準備かで通れないため、裏手に回って参拝しにいく。

(肝心の社殿そのものを撮っていないことにはこの記事を書きながら気づいた)

Googleマップ上では服部神社からさらに登った場所に萬松園栄螺堂という展望台があるらしい。景色がキレイなのかなあ、という好奇心に駆られて登る。この日の気温は34℃、標高が100mもないとはいえ坂道を登ると汗が噴き出てくる。スーツケース預かってもらっていて心底良かった。

九州ではまず見かけない看板
鬱蒼としている。あんまり人通りないのかも?

なお、この萬松園に向かう道中には、かつてこの地で湯治とお百度参りをした結果足腰が回復した人の呼びかけで、四国八十八ヶ所巡りに倣って八十八体の石仏が建立されたという逸話がある。ただ、その石仏の配置が無秩序で、かつ普段はあんまり人が通らないからか寂れた雰囲気を醸しており、草は生い茂っているし、午前中なのに暗いし、総じて不気味な印象だった。

こういう感じで無秩序に建立されている
こんにちは!

汗を垂らしながら坂道を登ると、お目当ての展望台、ではなく、廃墟と化した旅館があった。見るからにヤバそう。

もう何年こんな感じなんだ
虎ロープ付、いわくつき、進入禁止
怪異の類

ガチ廃墟だ。内部に立ち入るようなことはモラル的にも心理的にも躊躇われるので、外から見える範囲で写真を撮っておく(これもモラル的にも心理的にもアレかもしれないが)。不法投棄とか、不法侵入の痕跡とか、公序良俗に反した落書きとかがある。バイオレンスで衝撃的。閲覧注意かもしれないので他の写真はお蔵入りとする。

萬松園栄螺堂。螺旋階段をサザエに見立てているとのこと
登ってみた景色はこんな感じ、他の方角は木々がモリモリで景観が微妙
すれ違ったネッコ

ちなみに服部神社からここまで、及び、ここから復路では誰ともすれ違わなかった。というか、このあともあんまり人と出会うことはなかった。

山代温泉源泉足湯

坂道のアップダウンに疲れたので足湯で休憩する
熱い!!…と思っていたけど時間経過とともに慣れる。
隣にいた老夫婦やマッチョの旅人も同じ反応をしていた
オオシオカラトンボ。厳つい見た目

気温34℃の中で浸かる足湯、なかなかに修行である。

昼食・まるみ座

昨日葉渡莉で知った蕎麦屋
!?
老舗感があって気分がそそられる
!?

蕎麦の気分だった俺の思惑は打ち砕かれ、ふらふら辿り着いた寿司屋も要予約営業。何が「セレンディピティを信じて街歩きを楽しむ(ドヤ顔)」だ、ただ無計画なだけじゃないか。昼飯を食べたあとの計画も何もないし。しかしまあ、慌てることはない。時間はちょうど12時過ぎ、次の宿の本来のチェックインまで3時間もある。食事処を探しつつ、そこで涼みながら作戦を練ることにしよう。

選ばれたのは、まるみ座でした
かわりかつ丼

この地元でも人気の食堂らしい。観光地価格ではない良心的価格設定に財布が癒やされる。何にしようかとメニュー表を開くと、イラスト付きで「かわりかつ丼」というメニューがレコメンドされていたので、このお店の推しだと信じて注文。オムライスとカツ丼の中間くらいのメニュー。玉子にトンカツ、その上にデミソースがかかっており、そしてソース自体は意外にもあっさり目で美味しい。結果オーライかもしれない、ありがとうセレンディピティ。
現実に意識を戻す。このあとの動きについて。事前に調べていた観光スポットの記憶と魯山人の寓居跡・いおり草庵のことを思い出し、そういえば須田菁華作陶品のあるお店とか、九谷焼の展示館とかが周辺にあったはずだなと思いを馳せる。そこを九谷焼をじっくり見学していればチェックイン時間までの間も持つだろう。他にも、バスで南下して山中温泉まで向かった後に鶴仙渓を散策するのもアリかもしれないと思ったが、バスの本数も少ないし断念する。景色は良いだろうけど、暑さに堪えてしまっている自分もいる。

九谷焼の洗礼

須田菁華の九谷焼窯元

魯山人の項で書いたことに重複するけど、初代須田菁華は魯山人に作陶を教授した人物でもある。その須田菁華は現在4代目。いろは草庵で出された加賀棒茶が注がれた湯呑みは、この4代目の作品である。用の美が光っている。
ここで手頃かつ素敵な湯呑みに巡り会えたらお迎えするのもアリだな、とか思いながらギャラリーを見渡すが、俺は見積もりが甘かった。値段のゼロが想像より1つあるいは2つ多い。そりゃあ作品だし、それぞれに菁華窯の銘が記されているし、高価なものだ。それでも(ビビりながら)湯呑みや器を眺めていると、いろは草庵で使わせてもらった湯呑みと同じ絵付けがされているものを見つけた。渋沢栄一だけではビクともしない値付けがされていた。俺の生活に用の美を取り入れられる日はまだ先かもしれない。

貴重な体験だったな、としみじみ

須田菁華窯元で審美眼を養う、もといウィンドウショッピングを終えた後は、九谷焼窯跡展示館に向かう。歩いて少し北上する。絵付け体験やろくろ回しも体験できるらしい。せっかくの機会だしやってみようか。セレンディピティ万歳。

!?

完全に俺の落ち度である。よく見ると、いやよく見なくたってGoogleマップにも火曜日は営業していないと書いてある。なんてこった。何が「セレンディピティを信じて街歩きを楽しむ(ニヤニヤ)」だ、ただ無計画なだけじゃないか。

そういえば、すれ違う人の少なさに妙な違和感はあった。いおり草庵は何組かいたけど、服部神社でも女性2人組の一組のみ、萬松園栄螺堂では猫一匹としかすれ違わなかったし、足湯は老夫婦一組と俺と同じような一人旅風のマッチョのみ。まるみ座は流石に満席だったけど行列ができるほどではなかった。おまけに街中は(平日というのもあるだろうけど)シャッターが閉まっていたり、あるいは売物件になっていたり、半分くらい廃墟化したりしているところが目立つ。気温34℃というこの暑さも相まって、俺の推理は次のような結論を導く。

山代温泉って宿にお籠りして過ごすのが正解なんじゃね?

時刻は14時を回った。他には小洒落た甘味処が何軒かあったけど、暑いし値が張るし昼飯食べたばっかりだしそういう気分でもない。無論この暑さで別の場所を開拓するのも骨が折れる。
俺は観念した。宿泊先に電話をする。「……あの、早いですけどチェックインってもうできます?」セレンディピティの敗北宣言である。みんな、旅行は計画的に。俺との約束だぞ。

ホテルききょう編に続く

オマケ コインランドリー編

これはホテルききょうにチェックインした後の話。
今回の5泊6日に渡る青春18きっぷの旅行で頭を捻らせた事柄の1つが服装だった。毎日違う宿に転々としていると洗濯に困るし、かといって毎日違う服装をするとなると荷物が増えるし、旅の終わりで洗濯するものの量が尋常じゃなくなる。思案した結果、今回の旅のうち2泊3日を過ごす山代温泉の2日目(つまり旅全体の3日目)でコインランドリーを使い、使っている間に山代温泉を巡ろうという魂胆で旅に臨んだ。

見てくれよ、この日焼け

ところが、生来からの汗っかきな俺は、気温34℃という猛暑の追い打ちも食らって3日目のチェックアウト後から滝のような汗を服に染み込ませることになる。猛烈な陽射しで日焼けも進む。左手首にはG-SHOCKを着けていた部位とそうじゃない部位でくっきり皮膚の色が変わっているくらいだ。朝のうちにコインランドリーに着く前に、ここで「夕方まで待って今日着ている分の服まで洗濯したほうがコスパは良いかもしれない」と思い至る。

ホテルチェックイン後に着替えて、しばし部屋で休憩した後に徒歩10分弱の距離にあるコインランドリーまで向かう。洗濯機と乾燥機は別々の機械で動いており、洗濯30分弱(600円)、取り出して乾燥機に衣類を移し替えて30分弱(300円)くらい操作をする。このスキマ時間で観光するのは中途半端だ、朝方に方針転換をしたのは英断だったと自分を褒める。念の為に暇を潰せるように持っていた文庫本を読み進めることにした。

一部、30分弱300円では乾ききらない衣類があったので追加で300円投入して徹底的に乾かす。MARGARET HOWELLが悪いわけではない(というかむしろ何も考えずに乾燥機に突っ込んだけど大丈夫だったんだろうか)。こういう追加動作も含めて、トータル1時間強ほどコインランドリーに拘束されていた。ちなみに普段の実生活でコインランドリーを使う時はWASHハウスのアプリを使っているので、どれくらいの時間で終わるのかの確認も支払いも全てアプリ上で完結させてスキマ時間を有効活用している。そういう意味ではWASHハウス、めっちゃ便利だよ。

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