自民党総裁選で「特別支援教育」は話題になるのか:こども政策公開討論会文字起こし②岸田・高市・野田各候補
自民党総裁選 4候補が子ども政策めぐり討論 | NHKニュース https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210922/k10013271621000.html
自民党総裁選挙は22日、子どもに関する政策を議論する討論会が開かれ、立候補した4人は、政策を推進するための新たな行政組織の創設や、関連予算の倍増に前向きに取り組む考えを示しました。
この討論会は、子どもに関する政策を一元的に担う「こども庁」の創設を目指す自民党の有志の議員が開いたもので、河野規制改革担当大臣、岸田前政務調査会長、野田幹事長代行が出席し、高市前総務大臣はビデオメッセージを寄せました。(2021年9月22日 18時56分)
河野太郎候補はこちら
ご覧いただきありがとうございます。本項では、「ChildrenFirstのこども行政のあり方勉強会」主催の総裁選公開討論会において、特に何かしらの教育的・福祉的サポートを要する子どもに対する各候補の課題意識・理念・政策を知ることを目的に文字起こしを行っています。
本討論会だけですべての公約を知ることはできません。すべてを把握するためには一次情報を常に取得することが必要になってきますが、現実には不可能です。それでも、たまたま聞き流していた配信で「関心ある分野の名前があがる」 もしそんな出会いがあるとすれば、是非はともかく記憶に残るのではないでしょうか。
文字起こしは短時間で音声入力も活用して行ったため、誤植等もあると思います。ご指摘いただければ随時訂正を行います。何かの参考になれば幸いです。また、次回はまとめと自分の意見等も付したいと思います。
岸田文雄候補
岸田文雄です。今日はこうした素晴らしい機会を持っていただきましたことを心から感謝申し上げます。私は3人の男の子の父親です。一番下はもう大学生になっていますのでもう親離れはすんでいるんですが、振り返りますと本当に悪戦苦闘の連続でありました。あと、失敗もいっぱいしました。しかしやはり子供と一緒にいる時間、ありがたいなと思いますし、そして子供たちが突然見せるこの成長の跡。知らない間にこの成長している。びっくりする思いをする。こういった経験もいたします。そういったことを考えますときに、やはり多くの人たちにとって、また社会にとって国にとって。子どもたちは未来であるということを感じました。
しかしこの、事前に自見はなこさんやあるいは山田太郎さんから頂いた資料を拝見いたしますと、児童の自殺者数、いじめ、あるいは虐待相談数など、本当に深刻な数字がいっぱい並んでいました。コロナ禍で妊娠控えが起こり、そして少子化もより深刻になってる。こうした指摘もありました。
いまこうしたこの事態を見るときに、「Children first」、子供にとって何が一番好ましいのか。これを行政のあり方から考える。これは、誠に時期を得ているなと思っています。
そして皆さんの話、関係者の皆さんの話を聞きながら、政策、予算、法律といったものを一元化させなければいけない。さらには、各省庁の縦割りの壁、打破しなければならない。当然強く思います。
そしてその際に一つ鍵になりますのが、先ほど河野大臣からもありました「データ」だと思っています。私もかつて内閣府特命担当大臣に勤めてる時に、自殺問題担当大臣というのを務めたことがあります。あの時、警察のデータと厚生労働省のデータ。何でこんなに食い違ってるのか、本当に疑問に思ったことを記憶しています。やはり、子どもに関するデータを共有するというところから、こうしたこの一元化の取り組み、進めていかなければいけないなということを感じています。
そしてこの、妊娠前から妊娠出産、そして新生児期、乳幼児期、そして学童期、思春期、そして大人と、成長の過程を辿っていくわけですが、そうしたこの様々な家庭に対する支援等について、どこがしっかり責任を持つのか。こういったことについてもしっかり考えていかなければならないと思っています。
そして最近、私は痛ましいと思っているのは、旭川市における女子中学生の事件。そしてあれは町田市だったと思いますが、小学校6年生の子の事件。本当に痛ましい事件を見ました。
その際に一つ思ったのは、この事件について検証を行う第三者委員会の公正性・独立性。こういったものをどうやって高めていくのか、工夫が必要なんではないかな、こんなことも感じました。
こういったことに思いを巡らす中で、改めてこの子どものたちの命、そして健康、さらには人権。こうしたものを、一元的にしっかり見ていく子ども庁という組織の大切さ。専任大臣を置くということも含めて、これしっかりと進めていかなければいけない。こういったこと感じているところです。
そして今日はこの地方組織の皆様も、地方の皆様方も大変おられるということですが、現場において現場にもっとも近いところで、こうした実態を見ておられる地方組織の皆様との連携。これは何よりも大事だと思いますし、先ほどアンケートがありました予算につきましても、OECD諸国最低基準だという水準だという話を聞きました。思い切って、倍増をしていかなければいけない。こんなことを思っています。
そして最後にひとつ最近感じた事を皆様に申し上げたいと思います。
ある都市部において生活しておられる若いお父さんの話でありました。「岸田さん、最近子供たちは公園で野球やサッカーしないんですよ。どうしてだかわかりますか?」と言うことを聞いてくれました。わからなかったんで、「どうしてですか」と聞きましたら、「市が管理しているこの公園においては、ボール遊び禁止なんですよ。だから子供ができない。市が、これ事故が起こっても責任を負えないから禁止にしてるんです」。こういった話を聞きました。
私はそれを聞いて、自分のことだったとき、このボール・バットを持って公園で遊びました。この元気に過ごすことも大事でしたけど、チームワークですとか、あるいは勝ことの楽しさや負けることの悔しさ。いろんなことをこの野球ボール遊び、遊びの中で学んだ。こういったことを考えますと、今、外遊びをする子どもがだんだん減っている。大変寂しい思いをしています。こうした、様々な外遊びということになりますと、公園と様々な役所にまたがる。こういったことを考えました時にも、子ども庁、是非重要だと思っています。
そういったことから、私もこのすでに総裁選挙で明らかにしてる政策集に、子ども、家庭に対する教育費、あるいは住居費の支援ですとか、あるいは幼保小の連携ですとか、学童保育においたものを盛り込んでいます。特に学童保育の老朽化。これは私、現実の問題、大変深刻な問題です。そして子ども庁も、政策集の7ページに明記させていただいているということを申し上げて、私の話を終わります。
高市早苗候補
高市早苗でございます。子供を取り巻く状況は深刻さを増しています。長年の課題である少子化問題、児童虐待やいじめの問題、または子どもを取り巻く環境の違いによる、育ちや学びの格差の問題などが顕在化しています。
そうした中で私は、第一に子供を産み育てやすい環境を作ること。第二に子供が健やかで安心して育つことができる環境を育むこと。第三に誰一人取り残さことがないよう、困難を抱える子どもへの抜けうちのない支援を構築していくことの3点が重要であると考えております。
第一に、子供を産み育てやすい環境づくりについて申し上げます。子供を産み育てることの負担感を軽減するための環境を整えることが重要です。たとえば、子育て支援を充実するため、待機児童の減少や病児保育の拡充に向けた取り組みを進めたいと存じます。
また、育児や介護しながら働く方が多い中、ベビーシッターや、家政士を国家資格にし、スキルを高めていただいた上で利用代金の一定割合を税額控除の対象とすることで、利用を推進したいと考えます。
さらに多子世帯への支援充実に向けた取り組みをすすめ、一人ではなく二人三人と、子どもを産み育てたい世帯への支援を充実させることも、少子化対策においては重要であると考えております
また低所得世帯については、児童手当18歳まで支給することを検討致します。現政権では不妊治療の保険適用に目処が立ち、男性の育児休業取得を法制化されましたが、取得率はまだ7.5%です。さらに強い取り組みを進めてまいります
第二に、子供が健やかで安心して育つことができる環境づくりについて申し上げます。自由民主党は3歳から5歳までの幼児教育・保育の無償化を実現したところです。一方、子供たちが実際に受けられる教育の環境というのは、家庭や地域によって異なることから、この違いが就学時の育ちや学びの格差に繋がらないよう、就学前教育の質的な向上、義務教育への切れ目ない連携が重要でございます。
また義務教育に入ってからも、放課後児童クラブなどとの連携を推進し、子どもたちが体験活動や外遊びを通じてのびのびと遊び、学べる環境を整備する必要があります。
さらに子どもの安全確保のための環境整備も進める必要があります。たとえば現政権では、わいせつ教員への厳正な対処に関する法制が成立しましたが、これをさらに発展させ、子供が活動する現場で職に就こうとするものから子供を守ることができる仕組みの構築を検討していきたいと思います。
第三に、困難を抱える子どもへの抜け落ちのない支援について申し上げます。誰一人取り残さない支援という観点から、子どもの貧困、児童虐待、10代のいじめ・自殺・孤独・孤立など、子供が様々に抱える課題の早期発見、早期対応が必要です。たとえば児童虐待については、虐待予防から虐待を受けてしまったあとのトラウマケアも含め、子どもや子育て世代に対する福祉的な支援体制を強化する必要があります。適切な司法関与、児童相談所の充実、自治体や現場を含めた人員体制強化を推進する必要がございます。
また特別支援学校・学級の子どもや、医療的ケア児、引きこもり、ヤングケアラー、特別な支援が必要な子どもの教育面、また療育面からの支援というのも目を向ける必要がございます。
子供や保護者が抱える課題は複合的であり、個々の課題が複雑に絡み合っていることから、これをふまえた包括的な支援制度を整えることが必要です。そのためには、学校・家庭・地域社会・関係機関がしっかりと連携し、制度間の縦割りを極力排除することが不可欠です。
以上、大きく三つの観点から子ども政策についての考えを述べましたが、その手法として重視するべきことについて3点申し上げます。
まず、政策立案にあたっては、子ども・子育て当事者の視点に立ち、制度組織の縦割りを排除した包括的なものを立ち上げていく必要があります。
また、子供を取り巻く環境は地域家庭によって多種多様であることも踏まえ、データ統計を活用したエビデンスに基づく政策立案と実践を確立することも重要でございます。
さらに、支援を必要とする子どもや保護者のアクションを待つのではなく、予防的な関わりを充実させて、プッシュ型の支援・アウトリーチ型の支援へと転換していく必要がございます。
もちろんこれらを進めていくための十分な財源を確保することも重要です。こども政策予算は、次の世代に確かな未来を送るために必要な不可欠なものであると認識でございます。
そして、これら取り組みを進めていく上で、政府では子ども政策を担う新たな行政組織に関する検討を行うための議論をはじめていることを承知しております。私はこの総裁選において、令和の省庁再編に取り組むことをお約束致しました。その中で子ども政策を推進するために、もっとも効率的かつ効果的な組織は何か、ということも検討してまいります。本当にご清聴頂きましてありがとうございました。
野田聖子候補
野田聖子でございます。本日はこの総裁選の最中に、先ほどの話にもありましたように、どこのテレビ局に行ってもしっかりと議論をさせていただく時間を持たない。だけど日本にとってとても重要な、これからの人口減少に向かって、ややもすると、底抜けをしてしまう我々の国民の数に対してどう取り組んでいくかということで、私にとっては最重要課題だと思います。
「真の保守」という言葉があります。国を守ると言います。領土を守っても、そこに住まう人たちがいなくなる。絶滅していくっていうことは、これが一番保守にとっては許されざることです。持続可能性な国家を作っていくこと、その根本は人であります。
今回は大変硬い出だしを致しましたけれども、どうしても子供と言うと「母子福祉」「女性が子供を産む」という壁を打破することができずに、私自身はこの20数年、孤立した中で自民党でこの仕事・プロジェクトをライフワークとして取り組んできました。
実は今日持ってきた本、これ私が書きました本で「誰が未来を奪うのか」という本で、2005年に記しました。ここで私は、はじめて子ども省、いまは子ども庁。いずれにしても、新しい行政機関を作って、抜本的に、単なる子供を産む・産まないの議論になっている少子化対策を、国家の戦略、国がやらなくちゃならないことなんだということを知らしめるために書かせていただきました。以来ずっと取り組んできましたが、日常的な自民党の活動でもこのことはほとんど議題に上がりません。そして過去の総裁選挙でも、ほとんどあがりません。今回の討論会でもほとんどあがりません。
今回こうやって勉強会討論会を開いていただいたことは、まさに日本の再チャレンジに向けての第一歩だと思い心から感謝を申し上げます。
私が総裁選挙に遅まきながら出ようと思ったことも、ここにあります、先ほど三候補の政策提言を読まさせていただきましたけれども、これからの持続可能な国を担う子供がセンターに置かれていないことに恐怖を感じました。原理原則ができない中、様々な政策立案をしても、それを担う人がいないという厳しい現実に答えが出ていませんでした。
さて総裁選挙というのは任期が3年です。いろんなことをやりたい、でも時間も限られている中、優先順位を決めなければなりません。まず一番取り組まなければならないことはコロナウイルスとの戦いであり、収束に向けた取り組みです。これは菅総理が自ら科学的知見に伴い、様々なワクチン接種を中心として数字を出して頂いています。これをしっかり続けることが大事。とともに、次に向かうにはコロナ関連で傷ついていることに気がつかなければなりません。
お話がありましたけども、正確を期すために、私は数字を申し上げたいと思います。昨年コロナ禍でありましたけれども、超過の死亡はありませんでした。むしろ亡くなる方が減っているという国家にあって極めて数字が多くなったことは、児童生徒の自殺者数499人。統計開始以来過去最多です。そして児童虐待で死亡した児童61名。前年より増えています。児童相談所の虐待相談対応相談数19.4万件。いじめ重大事態723件。不登校、小中学校における不登校中8.1万人。子供の精神的幸福度37位。妊産婦の自殺の一位、自殺(※筆者注:原文ママ。妊産婦の死因一位は自殺)。ひとり親世帯の家庭相対貧困率50%。これOECD でもっとも高いんです。
私たちはどんな日本を見てるんでしょう。かつてのように、経済の強い成長過程にある日本を考えているのでありませんか。子ども庁というのは単に産み育てるだけではなく、子供のこれだけの社会での問題を通じて、そこにかかわる大人の人たちの社会もかえていく、大きなパラダイムシフトの一つの塊なんです。
ここから地方の様々な人口減少の問題の解決も生まれてきます。教育の格差が変わることで、小さい頃から格差をなくしていくということが可能になってきます。そして多くの人達への可能性。たとえば、僕は将来自衛官になる、警察官になる、私は医師になる看護師になる、僕は教師になる、私も教師になる、いや僕はユーチューバーになりたい、私はインスタグラマー、インフルエンサーになりたい。そういう可能性を今押さえ込んでいるのが、これまでの上書きされてきた大人ありきの、この国は大人だけでまわっていくんだという国家のあり方なんです。
こういう大きな転換を、この3年のうちにしっかりやり遂げることこそが自民党の改革でもあり、今苦しんでる人たちへの光を届ける政治の大切な仕事だと思ってます。
3年の任期の中で、もうすでに私たちは自民党の中で本部決定をして、子ども庁の創設、そしてその中身である子供真ん中という、世界ではじめての政策を掲げ作業に取り組んでいます。通常国会では、この法案、子ども庁設置法案、そしてその中身の「子供真ん中理念法」を皆様方にお届けすることで、劇的にやはり「すべての弱き者にも生きる価値がある」という新たなこの国の規範を作ることで、「今の苦しみから一人でも多くの人を一緒に抜け出していこうじゃないか」という政治のメッセージを送りたいと思います。
私の願いは、社会の中で一番弱いと言われる人たちがいつも笑顔でいられる社会を作ることです。ありがとうございました。