【映画】Yen and Ai-Lee(台湾映画、林書宇監督)

台湾を旅行中に立ち寄った花蓮の町で、時間もあったので観ました。
昔の鉄道の施設が公園になっており、リノベーションした建物の中にあるレトロな映画館で、雰囲気がありました。どうやら映画祭をやっているらしく、毎晩少しずつ作品が上映されていき、他の観客も相当な映画好きとお見受けしました。

林書宇監督の作品です。台北の出身ですが、アメリカにも長く住み、映画を勉強された方とWikipediaで解説されていました。
作品は、台湾のローカルな街の家族の間の人間ドラマを描いていますが、外国人にとっても分かりやすい作りになっています。監督が国際的な視点をお持ちだからなのでしょう。

お話は、酒を飲んでは暴れる実父を殺して服役し、出所してきた娘を巡る家族や周囲の人との交流や諍いについてです。
最初のシーンは、テロップが流れながら道路の奥から誰かが自転車をこいでカメラに近づいてきて、最終的には主人公の女性の顔がアップになると血だらけであることが分かり、そのまま交番に入っていきます。主人公は、実父を殺した後に警察に自首するのですが、そうしたことは話が進んでいくと理解できるようになります。

刑務所に8年間位服役して出てきた主人公は、実母の家に戻りますが、実母はヤクザの男とできていて、居づらい。主人公が仕事を探そうとしても、美容院では履歴書の空白期間について怪しまれ、前科者には世間は厳しい目を向ける。また、死んだ実父は、愛人のところで子供を作っていて、ある日その愛人女性が急に現れて、邪魔になったその男の子を主人公に押し付けて行方をくらましてしまい、その子をどうやって、誰が面倒を見るかで実母と大いにもめます。

実母は、ヤクザの男に、宝くじ屋というかスクラッチカード屋でいかさまの商品を売らされ、嫌だなと思いながらも、中年を過ぎた女性にとっては相手にしてくれる男はなかなかいないなどといって、男と別れられない。

という感じで、まぁ、日本でもよくあるような家族のゴタゴタが描かれていて、国は変われど、人が悩んだり怒ったり喜んだりすることは不変だなぁと思いました。元々、台湾は日本ともっとも文化的、感覚的に近い国だとは思うのですが。

最後に、実母がいかさまを断って、ヤクザ男から殺されそうになるシーンは迫力がありますし、暴力の撮り方も印象的です。また、ラストの方で、主人公が実母と言い争う中で、泣き叫びながらも、亡くなった(自分で殺した)実父への憎しみとゆがんた愛情、愛着を吐露します。DV被害に遭った被害者たちが、DVをする男などと容易に別れられない心情に通じるものがありますね。

なお、台湾旅行中、街中に沢山の宝くじ屋があり、夜遅くまで開いているのを見ましたが、映画の中でも宝くじが重要なモチーフになっており、やっぱり日常生活で賭け事は必要不可欠なものなんだなぁと思いました。日本のIR計画でも、ギャンブルが好きな中国に人達をターゲットにしていると聞きますからね。

全体として、日本の濱口竜介監督が撮ったヒューマンストーリーと言われても違和感がないような、私にとっては日本映画との違和感が感じられないほど登場人物たちの感情の動きなどがしっくりくる映画でした。また、映像が白黒ですが、独特の雰囲気がある映画です。
林書宇監督、これから注目!


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