【長編連載小説】絶望のキッズ携帯 第7話 大学院
歯科という業界が嫌になった俺は、正しいことをしてお天道様に恥じない人生を送ることを決意した。正しいこと。それは真実を追求することだ。そして真実を追求するという仕事の一つが研究者だと考えた。研究者になるためには大学院に行かなければならないため、研修医として働いた教室とは別の科の大学院に入学した。
結論から話す。教授だか教室に寄付をしないと学位をもらえない教室だった。ひどいや。俺の職歴がホワイト以下になった。もはや何もできない。仕方がないので論文の読み方などを勉強していたら、友人や知人を介して翻訳を依頼されるようになった。それが意外といい収入になるので本格的に勉強し、この仕事を続けている。そういうと悪くない書き方になってしまったので訂正する。雇ってくれるところがないので自営でやっているというのが正直なところだ。
こんな人間に何が残っているだろうか。ガキの心配をする暇があれば自分の心配をするべきだ。そんなことは明らかなのに、俺はガキが元気にしてるか、うまくやっているかを毎日考えている。ゲーム中毒のクソガキ。俺に何か残ってるなら全部やるから、お前は幸せな大人になれ。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?