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【長編連載小説】絶望のキッズ携帯 第8話 ガキ

ババアの酎ハイが3本目に差し掛かった。大人の意見が聞きたいと言ったババアはブレスを挟むことなく捲し立てている。きっといいラッパーになれる。口を挟む余地を与えない鋭いリリックに、俺は医療従事者特有の心無い頷きで対応していたが、一向に話が進まないので腹が立ってきた。一層のことガキと話したほうが早い。家にいるなら話せないかたずねたところ、隣に座っていたそうだ。おい、クソガキ。お前は自分の悪口を何時間聞かされてたんだ。まったく一方的なMCバトルだ。

ガキが画面に映った。確かに内気そうなヒヨッコだ。こんな奴の癇癪なんて、マザコンの甘えだ。話を聞いてみると、いかにネットゲームが素晴らしいかを語り始めた。なんでもフォートナイトとかいうゲームで、ユーザー数は世界に何億人といるらしい。無料でバトルができる、優れたゲームなのだそうだ。自室にゲーミングPCが欲しいと訴えている。

自室にPC。俺はピンときた。エロだ。俺は素直に女のケツを追いかけることを提案した。照れてはいけない。人間の欲求は生存や種の保存から生まれるというのは広く言われていることだ。俺は声を大にして伝えてみた。しかし女にはまったく興味がないらしい。男にも特に興味はないらしい。ゲームがしたいのだそうだ。まずこのガキは意識を変えることが必要なのではないだろうか。異性に興味を持てば外に出ざるを得ないし、人と接する必要もある。何なら口説くためには会話の中で我慢も必要だったり、先読みする力を養わなければならない。女がすべてを変えるはずだ。俺は確信した。

ババアも息子に恋愛が必要かもしれないと説き始めた。さすがに母親に恋愛しろと言われるのは複雑だろうと思いながら、俺は言葉を挟むタイミングを待った。

大体あんたはとババアがガキのディスを始めた。これはいけない。いい加減見ていられないしキリがない。俺は割って入り、俺が住む長崎に遊びに来ないかと提案した。幸い今は春休みだ。

ババアは快諾した。早くも飛行機の予約をしている。中一の一人旅は不安ではないのだろうか。しかし俺には分かっている。子育ての中休みが欲しいだけだと。なんでもいいが、とにかく俺の一言で、ガキは長崎に遊びに来ることになった。

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