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ライカはなぜ今M6を作るのか?

10月20日、ライカは驚くことにデジタルカメラ全盛の現代に1984年に発表された名機ことM6のリプロダクションを発表しました。この製品で注目すべきことは過去のアクセサリと互換性を保ちつつ、トップカバーを亜鉛ダイカストから真鍮削り出しに変更しつつレンジファインダーにコーティングを新たに施すことでピント合わせがしやすくなっていることです。
すでにフィルムカメラとしてMP、M-Aという二つの製品をライカが発表しているのに今回なぜ新たな製品を登場させたのかについて個人的な憶測を書いて見たいと思います。

私が思う一番の原因は長期化する半導体不足による会社の生産効率悪化を改善するための一手と見ています。

始まりは2018年以降にトランプ政権で顕著に現れたアメリカと中国の貿易摩擦に遡ります。
知的財産や関税による双方の嫌がらせ合戦は当初そこまでの影響は無いかに見えたものの、アメリカが中国の半導体業界に輸入関税や防衛関連禁輸物品に指定するなどの圧力をかけ続けたことによって世界中の半導体生産が台湾に集中し、台湾の半導体生産能力がパンクしました。
これによって世界中で電子部品の取り合いが発生しました。そしてコロナ禍によるアジアの各都市のロックダウンなども重なり世界中でモノづくりのサプライチェーンが混乱し続けています。
欲しい電子部品を注文しても納期は数年待ちというのは当たり前ですし、もしも欲しい電子部品を見つけたとしても、1個100円のものが5,000円や10,000円になっているなどあこぎな転売商社から買わないといけないというような状況も発生しています。

カメラ好きなみなさんはご存知の通り、国産カメラを発注しても本当に手に入らない状況が続いているのはこれらの影響によるものです。ニコンのZ9とか生産終了しちゃった富士のX-E4とかX-T30Ⅱとか。

もちろんライカもこれらの電子部品不足の影響を受けるはずです。
ライカを買う顧客ならば多少の値上げを受けても大丈夫というイメージは私にもあります。でもここで部品のコストアップを販売価格に上乗せするだけでは改善できない問題が発生します。
部品を安定して仕入れることができない状況では生産ラインの稼働計画をきちんと作ることができないのです。簡単に言えば人は雇っているけど部品が入ってこないから作ることができない!!という状況です。工場が物作りをしていないけれど職人さんの人件費が発生しているわけです。
この状況に陥ると売上の売価を上げたとしても損益はものすごく悪化してしまいます。

※ライカと話は逸れますが富士フイルムがX-E4の生産ラインを解体せざるを得なかったのはこの問題が大きいのでは無いかと思います。

さて、日本メーカーはカメラを作れない状況になりますがライカはどうでしょうか?
金属をひたすら削ることで歯車とバネを作り電子部品をあまり使わない製品を作って売ることが可能ですね。フィルムカメラです。
ライカがM6を再生産する理由はデジタルカメラの生産ラインの稼働率が悪化している(と思われる)状況をカバーするための手段として供給の不安定な電子部品に頼らない製品を作ることにした。M6は目新しさを訴求するための客寄せパンダ的なアイコンであるというふうに私は見ています。

もちろん個人的な憶測かつ邪推です。なので全然違うぜ!!と思った方は是非考えを教えてもらえると嬉しいです。

少々長ったらしい文章にお付き合いくださりありがとうございます。


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