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【魚を求めて】水平線にただいま

水平線という場所がある。そこには空間があるはずなのに、場所のように感じられる。

水平線を見るとその場所と少し親しくなったような気がする。たとえそこに初めて行ったのだとしても、挨拶以上の会話をしたような、ともにお出かけをしたりご飯を食べに行ったことがあるような、そんな気持ちになる。馴染みのない土地での期待感と混じり合った緊張感、浮遊感みたいなものが解けて、自分がその地面に根を少し根を張れたような気持ちになる。

その細い、でも確かに根を張れた時、口元の上ってくる言葉は「ただいま」だった。

不思議である。初めての海にただいま。ブライトンの大粒の砂利を転がす波際。ドブロブニクのゆったりとした午後を包む透き通った青。ベネチアの人とボートの往来を少し気だるく眺めるとろりとした水。ゴールドコーストの地球の丸さが見えるような砂浜。どれも初めての海なのに、その水平線に目をやると、自分はここにいていいんだと思えてくる。

ブライトンも、ドブロブニクも、ベネチアも、ゴールドコーストも。水平線できっと故郷の千葉と繋がっている。水平線はそんな場所である。

生きているうちに、全ての水平線に「ただいま」を言ってみたい。

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