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読後感の映画版を発明したら一生遊んで暮らせないかな【リバー、流れないでよ】
定期的にSNSで取り上げられているのを見て、観ねばと思い続けて1年くらいして、改めて人の勧めもあって『リバー、流れないでよ』を観た。1時間26分と観やすく、構成も綺麗でとても良かった。短編小説集くらいのほどよい読後(?)感。読後感の映像版って知らないな…と思い、今軽く調べたら「存在しない」と断言されていて笑った。かなりの人が無いんですか…?とか、欲しいと言っているのに一向に生まれないのって珍しい。発明したら一生遊んで暮らせるくらいの印税(?)入ってこないかな。「観終感」とか?割とかっこよくない?流行ってよ。
自分が2分間のループに巻き込まれたとして、一回死んでみることができるだろうか…登場人物の中では、作家が一番魅力的に映ったな、状況を把握してすぐいかに現状を楽しむかにシフトしていくのは創作家ならではなんじゃないか?と思った。
冬の老舗旅館で突如2分間のループが起き、仲居、料理人、客がてんやわんやする姿を面白おかしくとらえる前半、主人公と料理人の一人の恋模様、ループが繰り返されることによって混乱する中盤、いかにも鍵です、みたいな匂わせが続いていた人が原因だったことがわかり、解決に向かう後半と、起承転結が綺麗にまとめられていて、終始ライトな印象を持った。
⚠️ここからネタバレあり
タイトル通り川が鍵なのか?と思わせるような前半の川が何度も写るシーン、やっぱり!となる中盤の主人公の告白、そしてそれがミスリードで実はあの怪しげな女性が鍵でしたの後半、タイムリープもの、としたらその原因と解決策はかなりお粗末なのかも?とも思うけど、たぶんこの映画がやりたいことはタイムリープを描くことじゃなく、ループの中で登場人物たちがどう変化していくか?のハートフルものだと思うので、構成や伏線をあえてわかりやすくしているんだろう。観ていてもループはいつか戻るんだろうな、くらいで人間関係のほうが気になるので、みせ方として成功しているんだろうと思う。
主人公の女の子を可愛らしく魅せるのも上手い。初めのうちはループに困惑し、揉め事に辟易としているが、恋人?と時間を共にするようになってからは2分が終わるたび楽しかった、という表情を浮かべる。時折急に主人公目線に置かれるのは少しびっくりした(やりに行き過ぎ感もあって)。
フランスに修行に行くから、という理由も言ってしまえばありきたりではあるけど、ループという要素が彼らの悩みや決断、心境の変化に絡んでくることで面白くなってくる。束の間のデートを何度か重ねて、踏ん切りをつけた女の子が失恋、と言い切って断髪し「これは無かったことになる時間だから。」というセリフを放つシーンが一番のパンチライン。ハッとさせられるし強いな、と思った。男のほうはちょっとなんだこいつ感ある。
やっぱり結末はチープで(これは敢えてだと思うので貶す意図は一切ない)タイムパトロールに対する登場人物の受け入れ方も、エンジンを動かす最後の衝撃に狩猟銃を使う感じもいいのかそれで、となるけど本題じゃないから煩わしいんだろうなループの原因とか抜け出す手段とかは。猟師の登場理由は気が狂って自害、にあるはずなので、全員使いたかっただけだと思うけど。
本格タイムリープものに比べれば、記憶が残っていたり、同じ時間を過ごしているのに雪が降りだしたり、世界線という言葉を登場人物が使う割にパラレルワールドがあるわけでも無く…タイムパトロールのお姉さんが説明を濁したり、パラドックスを防ぐために2分戻る(記憶残る)の矛盾感がぬぐえなかったりはするんだけど、たぶんこの辺を気にしたら面白くなくなっちゃう感じがした。あくまでもループは舞台装置と考えたほうがよさそう。
2分という短いループで、登場人物全員がループし、記憶も残るという新しさだけでお釣りがくる。なんかこの読後感(?)前もあった気がして何となく調べたら脚本が上田誠さんだった、この人ほんとに面白い作品作るし上手!と毎回思わされるな、楽しい作品だった!
もし自分が2分ループに巻き込まれたら何するか、考えたけど全員記憶が残る以上はやっぱり突拍子もない事しにくいよね。仲居さんの一人が推しの卒業コンサートのチケットを得るために、普段なら頼みにくいけど知り合いに片っ端から連絡してみた、と言っていて一般人を遂行してたし、自分もそのくらいが関の山な気がした。