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ねえ、忘れないでよ。

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ベーシストの想真と引きこもりの瑠衣。 ふたりは 思いもよらない出逢いを知って 思いもよらない別れを知る。 運命って信じますか? ねぇ、忘れないでよ。
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2020年4月の記事一覧

ねぇ、忘れないでよ。#31

どういうこと?
なんで?
そればかりが繰り返す。
幼子のように。

三人で彼の遺影を前にしていた。

シンラさんは我慢することも
できないようで声をあげて泣いていた。

トキオさんは静かに肩を震わせていた。

私は涙も出なかった。
怒りと哀しみが綯い交ぜになっていた。

なんで一言も言ってくれなかったの。
言ってくれたにしてもその意見に
賛同できなかったと思う。
想真くんが考えていたことは最後の最

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生きて、生きて、奏でた#30

「もしもし、母さん?うん、想真。げんきにやってるよ。母さんはどう?」

「元気そうな声ね。活躍をメディアとかで聞いているもの、そうよね。母さんも元気よ。父さんに会ったんでしょう?色々と驚かせてごめんね。話すタイミング探してるうちに想真どんどん大きくなっていくから、隠すつもりはなかったんだけど、結果的にそうなっちゃったね。」

「そんなこといいよ。母さんはずっと僕の母さんだよ。これはなにがあっても変

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アセロラとグレープフルーツは恋の味#29

時折、揺れる車内。心も揺れていた。

私は大人しく座っている。
助手はしてないけれど、助手席に。

ソウマくんの脳内のマップを頼りに
風の通り道を駆け抜ける。

助手席って元々はエンジンをかけてあげたり
する人をそう呼ぶようになった人のための席
だった気がする。免許とかそういう概念その頃
あったのかな?
なんてどうでもいいようなことが浮かぶ。

「たまにはさ、気晴らしでもいかない?」

そんな

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