ヴェルディで戦い続ける事を決めた理由
久しぶりにnoteを書く。
2021シーズン開幕が明日に迫り、僕にとってもヴェルディに来て3シーズン目の開幕戦となります。ただ、今年は特別な気持ちです。少し前までは開幕時がどうなってるのかすら想像が出来なかった。こうやって開幕を迎える事ができる事への感謝の気持ちを胸に、今の自分の心境を書いていきます。今、自分自身のキャリアの中でも絶対に忘れてはいけない大切な経験をしている事。そして、これからの人生で迷いや困難に直面した時に、初心に立ち返る道標にするべく書き記しておこうと思います。
昨年末から、所属している東京ヴェルディで大きな出来事がありました。経営体制も変更となり、様々なネガティブな報道もありました。僕が所属しているスポンサーセールスの部門は特に大きな影響を受け、次年度の契約更新の話はほぼ全てがストップする状態になった。本来は2020年12月中旬までには全ての企業様との契約事項をクロージングするスケジュールで1年間準備をしてきていましたが、契約更新の話は一旦ストップし、まずは起きている事の現状把握と経緯説明に全力を注ぎました。数年かけて積み上げてきた提案が白紙に戻った企業様もありました。
ただ、年始早々から各社に謝罪と共に事実説明にお伺いし、様々な叱咤激励を頂きながらも前に進んでいます。またいつか改めて整理してアウトプットしたいと思っているのですが、「スポーツ団体に協賛すること」を企業様が意思決定する裏側では、本当に色んな方が社内調整や関係各所への根回しで動いて下さっている事や、沢山の反対意見や逆風がある中で時には頭を下げてまで承認を取って下さっている事など、感謝の言葉では言い表すことができない瞬間ばかりでした。このような状況になったからこそ、スポンサーセールスに就く者として忘れてはいけない「大切なこと」に改めて気付く事ができた機会にもなった。
徐々にではありますが光も見えてきて、各社ごとのアクティベーション起案や新しいプラスの取り組みのお話を進める事が出来てきています。新規契約締結など明るいニュースも発表し、今シーズンの見通しが立つ状態になってきましたが、年末年始は本当に辛かった。
まだ10年ちょっとですが、自身の社会人生活を振り返ってもこんなに辛い経験をした事は無かったです。ヴェルディに転職してきてから、「スポーツの力で企業に貢献したい」という想いで、数年かけて地道に土台作りをしてきた各企業様とのスポンサーシップに関しても、現場同士ではどうしようもない理由で白紙に戻るかもしれない状態になった。
我々の想いを信じて頂き、クラブに期待して下さる目の前のお客様に対して、夢や感動とは真逆の気持ち、不安に感じさせてしまった事への申し訳なさ。ネットやメディアの報道では毎日のようにヴェルディ自体や応援して下さる方々、関係者が面白おかしくネタにされる事もあったし、中にいる僕たちも事実かも分からない話が色々と話題に上がっていた。今まで普通に接点を持ってきていたのに、分かりやすく距離を置いていく人もいた。そして、社内外色んな人の顔色を窺いながら泥臭い調整をしないといけないが、中間管理職である僕の立場上、不安で戸惑っているメンバー達にも全てを伝えてあげられない。
自分自身の仕事で辛い事や悔しい事は前職のリクルート時代でもいくらでもありましたが、「守りたいものを守る事ができない無力さ」、これが何よりも辛かった。こんなにも自分自身の力が足りなくて、悔しくて情けない事があるのかと、年末年始は毎日夜も眠れないくらい悩みました。クソほど惨めな自分が悔しすぎて、夜の公園で一人でめちゃくちゃ泣いた。
思考をぐるぐる回す日々の中、1つの考えに至りました。
「状況が落ち着いたらヴェルディを辞めよう」
嫌気が差して逃げ出したいという気持ちではなく、「今すぐにでも自分のスキルを高めなければならない」といった自己成長のスピードへの危機感。
今回痛感した事は、”今の立場”の僕では会社の危機に対して何の力にもなる事ができなかったという事実。そして、自分に期待して下さるお客様や社内のメンバーにも、真実を自分の言葉で伝える立場にない事。今のままの自分ではヴェルディを救う事ができない現実を痛いほど痛感した。
会社経営についてのナレッジもそうだし、マイナスを一気にリカバリーできるようなインパクトのあるお金を動かすスキルも人脈も圧倒的にない。一度ヴェルディの外に出て、自分を成長させなければいけない気持ちが強く芽生え、この機会に離れようと考えました。「好き」の気持ちだけでは、どうにもならない事が世の中にはあった。
スポーツ業界あるあるでオフシーズンはお誘いを頂く機会が多く、今年はヴェルディが大変な事になっている事が伝わっていた事もあってか様々なクラブからオファーを頂きました。J1、J2クラブやスポーツ関連企業など、魅力的なポジションで待遇も今の倍近くになるところもあった。一緒に働く人、将来性、カテゴリやステータス、エリア、待遇や労働環境、、僕は何を大切にして、どう生きていきたいんだろう。そう毎日悩む中で、ある感情が僕の心の根っこにある事に気が付きました。
ヴェルディで「やり残した事」があるから悩んでいるのではなく、自分の中でヴェルディで「やりたい事」があるからハッキリしないのではないか?
考えれば考えるほど、自分が生きていく上で大切にしたい事が、今の僕にとってヴェルディでしか実現できない事に気が付きました。僕の働くモチベーションリソースは「人」軸が大半を締めていて、決断した理由もこの人軸。大きく3つあります。
まずは、パートナー企業の皆さまへの想い。
年末年始にかけて、沢山のお言葉を頂きました。様々な報道など動きがある度に、まずはお電話で何かしらを伝えないといけないとTELした際に「今、お時間大丈夫ですか?」と聞くと、「あなたが大丈夫?色んな報道を見て、会社のみんなも佐川くんや営業の皆を心配してるよ。」とご迷惑をおかけしてる中にも関わらず労って頂く事もありました。今回の件とは関係なく今期のスポンサー継続ができなかった企業様からも「本当にごめんなさい。来年以降に復活できるように社内調整を頑張るので、”今年はお休み”の認識でいて下さい。」と相当社内で交渉を頑張って頂いたんだと感じました。また、経営陣と挨拶に行った際も、「営業の人たちは頑張ってくれている。どうか社員を大切にしてあげて下さい。」といった言葉や、「頑張って!」と先方の経営陣の方々から僕たちの目を見て熱く語って頂いたり、商談中に感動して何度も何度も泣きそうになりました。他の営業メンバーも同様に、パートナー企業様から様々な忘れられないような言葉をかけて頂き、感動していました。
「こんな騒動を起こしているクラブに協賛していいのか?」そういった社内からの反対意見も沢山あったはずです。そのような困難な状況の中でも、僕たちに期待を寄せて契約更新や新規スポンサー契約の意思決定して下さったり、ご迷惑をおかけしているにも関わらず逆に温かい言葉で励まして頂くなど、本当に感謝の言葉では言い表す事が出来ません。
僕は目の前のパートナー企業の皆様からの期待と恩に応えたい。応えないといけない。シーズンが終わる頃に、「ヴェルディ/ベレーザのスポンサーになって良かった」とそう思って頂けるように、サッカーの結果だけでなくビジネスの面でも貢献していきたい。そして、もう一度ゼロからリレーションを構築するくらいの気持ちで、組織体制から日々のコミュニケーションまで全てのスタンスを見直していく。絶対に恩をお返しする。
そして、サポーターの皆さまへの想い。
一昨年引退された田村直也選手が「チームや選手の事を悪く言われる事よりも、自分達を応援してくれる方々が周囲から悪く言われる事が何より悔しい」といったニュアンスの話をされていて、僕も心の底から同意です。今回もクラブのゴタゴタで辛い想いや肩身の狭い想いをさせてしまった方々が沢山いらっしゃったと思います。自分達のせいで、どんな時もクラブを応援し支えてくれている人が不安で辛い想いをしている事が耐えられないほど悔しかった。
コロナ前、アウェイゲームはゴール裏でユニフォーム着て応援に行く事もあったのですが、負けた試合は僕は立ち上がれないくらい一言も話さず落ち込みます。そんな中で、逆に励ます言葉をかけてくれるサポーターの皆さん。皆さんも悔しさや怒りもあるでしょうが、優しい言葉で「次一緒に頑張りましょう」と声をかけて頂ける事が本当に嬉しかったし、もっと事業サイドが頑張らないといけないと奮起する機会になっていました。
栄光もあるが、悔しくて辛い歴史も多いクラブ。そんな中でも支え続けてくれる人達がいる。「サポーターは移籍できない」、過去に頂いた言葉がずっと僕の胸に残っています。中にいる僕達が、その支え続けてくれている方を絶対に幸せにしないといけない。
そして最後に、共に働く仲間たち。
僕の誇りです。みんな本当に辛かったと思う。プレッシャーで夜も眠れないと言っていたメンバーもいた。スポンサーセールス部門はヴェルディの会社全体の約半分の売上の責任を持つチーム。そして、殆どが入社1年前後の若いメンバーで構成される組織。自分の担当企業で何百万円、何千万円のインパクトのある数字を左右してしまうかもしれない。めちゃくちゃ重大な責任を孤独に背負いながら、イレギュラーに状況が変わり続ける未体験な状況下での提案や商談の日々。相当辛かったと思うけど、弱音も吐かずによく心折れず前向きに頑張り続けてくれたと思う。ヴェルディのセールスチームのみんな、本当に凄いです。全員がこれからのスポンサーシップを牽引する存在になっていけると思う。
そして、ここにいるメンバーの人生を預かっているのは僕だ。そんな立場の僕が少しでも別のキャリアを考えていた事を恥じた。彼ら彼女らの頑張りを必ず花咲かせる。今の経験を全員の今後のキャリアのかけがえのない武器に変える。それまで僕が離れる事はしない。
社員だけではなく我々のセールスには社外からサポートしてくれる仲間がいます。復業セールスチームもそうですし、昨年からスタートしたサロン的な運用をしているビジネスラボメンバーも、主にアクティベーション起案の面で僕たちの弱みをカバーしてくれています。
僕がセールスの仕事と同じくらい魂を込めて始めた事業のヴェルディカレッジも大切な仲間です。ただ、2期生には本当に申し訳ない事をしました。年末の修了式のタイミングがちょうど様々な報道と重なる時期でした。コロナの影響で急遽全てオンラインで実行するイレギュラー運用になった中でも、環境の変化に適応し1年間やり切ってくれた。本来は盛大に1年間の振り返りを行いたかったのですが、時期が時期だけに積極的な情報発信は控える事になり、カレッジ生にも色々と気を使わせてしまいました。
ただ、スポーツ業界を目指す彼らが輝いて働ける環境を作る為にも、先輩である僕たちが道を切り拓く存在になる。頑張っている人が正当に評価される世界を作る。そんな背中をこれからもヴェルディで彼らに見せ続けたいと思う。
自分の立場上セールスについての話が中心になりましたが、クラブ全体が多くの方の温かい想いに助けて頂きました。
期待や応援してくれる方々がいる。僕はその想いを大切に生きていきたい。その方々の想いに応えないまま離れると、僕は一生後悔すると思いました。
そして、未来を他責にはしたくない。自分の想いや行動で未来を変えていきたい。
それがヴェルディで戦い続ける事を決めた理由。
ただ、ヴェルディでのチャレンジを続ける決断はしましたが、根底の課題がある事は変わりません。今年は勉強、学びの1年です。
何もできなかった悔しさを忘れない。大切な人を、守りたい人を本当の意味で守る事が出来るように、もっと強くなります。
最高のシーズンにしてみせます。
今シーズンもよろしくお願い致します。