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本物の美味しさは「レシピ」の先にある。飲食店経営の核である「料理」への3つの想い

株式会社イデアルを経営しています、和田 亮(わだ りょう)です。前回の自己紹介noteには沢山の反応をいただき、ありがとうございました。

私は現在、新潟県新潟市で9店舗の飲食店を経営していますが、もともとは一人の料理人として働いていました。

みなさんは「料理人」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか。「元々料理が得意だった人」「料理の才能がある人」なんてイメージを持たれるかもしれません。

しかし私の場合は違いました。料理は得意でなく、才能があるわけでもない。でも、今は飲食店を経営して20年目を迎えました。

私がこれまでどんな風に料理と向き合ってきたのか。そして飲食店の経営者として、お客様にどんな料理を提供したいと考えているのか。

今回はこれまでの経験で培ってきた「料理に対する3つの想い」について書いてみようと思います。


その1.とにかく実践。本物の美味しさは「レシピの先」にある

私が本格的に料理にのめり込んだのは24歳の頃

もともと将来は「自分の好きなことで生業を立てたい」という想いが強くあり、高校卒業後にプロのスノーボーダーを目指していました。

しかし、24歳の頃にケガをしてスノーボーダーを引退。当時アルバイトをしていた居酒屋『旬魚酒菜 五郎』で、料理人として一流になろうと決意しました。

※このあたりは先日公開した自己紹介のnote記事にも詳しく書いていますので、ぜひ読んでみてください。

私が料理を始めた頃の料理人は、レシピを一から教えてくれません。基本的に何でも『見て盗め』のスタイル。とにかく見よう見まねで覚えていくしかありませんでした。

大変な思いもしましたが、見て盗むことにも意味はありました。注意深く観察して覚えたものは、忘れにくいのです。

簡単に教えて貰ったことは案外簡単に忘れてしまうものですが、よく観察し、失敗を繰り返しながら成功に近づいていくことで体で覚えることができました。

当時は働いている時間はもちろん、日常生活でも常に料理のことを考える日々。

実は以前働いていた会社で「欲しいものや目標とするものをいつも身近に貼っておくと、その自分に近づける」という自己暗示トレーニングを受けていました。(これだけ聞くとちょっと怪しいですが...)

何か目標があれば身近に貼って、自分暗示するのが近道だと考えた私。そこで、リビングやトイレ、ベッド脇など家中の至るところに料理の本を置いて眺めるようにしました。

ただ、30年前にインターネットはありません。簡単に調べることが出来ない時代。パソコンですら持っている人もいません。

そこで私が参考にしたのは、『美味しんぼ』『包丁人味平』『クッキングパパ』などの料理漫画!

当時はまだレシピ本が少なく値段も高かったため、とにかく料理漫画を買い漁って部屋中に置きました

漫画で学んだレシピをお店のまかないとして作るなどして反応を見ながら、料理の腕を磨いていったのです。

料理漫画で覚えたレシピを試す日々。

あとはとにかく、実際にいろんな料理を食べて美味しさを知ること。これも良い経験になりました。

お店のカウンター前に座って、素直に「ここの料理を勉強したくて来ました!」と話すと、親切に教えてくれるお店もありました。

そして習ったり食べたりしたあとは、記憶が曖昧にならないうちに自分で料理してみて試行錯誤。これに尽きます。

美味しいものを食べたときには、美味しさを生みだす要素もよく観察するようにしました。

味はもちろん、お店の内装や雰囲気、料理の器なども重要な要素のひとつ。それらを含め、その場で感じた美味しさや感動を、自分のお店ならどう表現できるかな?と考えていました。

最近はプロ向けの料理教室も充実しています。プロレベルのレシピ本も数多くあります。

しかし、いくら環境が良くても本人が学ぶ意思がなければ何も身に付きません。

与えられた環境以上に、自分から学ぶ姿勢がないと人並み以上の料理人にはなれないと思います。

レシピ通りに料理が作れるのは、料理人にとって最低ライン。本当に美味しい料理はレシピのその先にあります

例えば、いつもと違うお店で、いつもと違う調理器具を使って料理したとします。そのときにレシピ通りの味が出せなければ、料理ができたとは言えません。

その時々の素材の状態や調理環境にあわせて最適な調理を施し、レシピ以上の美味しさを生みだすこと。

それができてこそ、本物の料理人だと私は思っています。


その2.“素材本来の良さ”を活かした料理を提供したい

私が料理人としてこだわっているのは「素材が本来持っている良さを壊さない」ということ。

たとえば、少し前に流行った料理で、分子料理(分子ガストロノミー)と呼ばれるものがあります。

料理を科学的な観点から分析し、素材を液体や泡状にするなど、今までの伝統や常識にとらわれない形式の料理が提供されます。

私も何度か食べに行ったことがありますが、2回目も行きたいか?毎日食べたいか?と聞かれると、正直NOでした。

もちろん驚きや新鮮さはありますが、それが素材本来の良さを高めているのか?という疑問がどうしてもあったのです。

私の理想は、見た目は普通でも食べたら「旨い!!!」となる料理です。

見た目は伝統的、また普通の料理でも、素材にこだわっていたり、焼き加減が絶妙だったり、隠し味が元々の味を引き上げていたり。

そういう見えない努力と工夫が施されている料理を食べたいなと思います。

つまり、料理は素材の良さを高めた状態で提供することが何よりも大切だと考えています。

ミシュランを獲得した二代目マスターと蘭(あららぎ)の看板

私のこの考え方は、新潟市の古町にある日本料理店「 蘭(あららぎ)」のマスターの影響が大きいのかもしれません。

現在は二代目がお店を継がれまして、先日初めて新潟にミシュランが来るとさっそく1つ星を取りました。

もちろん、先代がやられてた時に来ても間違いなく星を取っていたと思います。

そして、わたしは先代のマスターが現役の頃からよく通っていました。

蘭に通うようになったのは、26、27歳の頃に先輩に連れて行ってもらったのがきっかけ。

マスターは私が料理人ということも知った上で、料理のことを色々と教えてくれました。

その中でひとつ忘れられない体験があります。

ある時、マスターにこんな風に言われました。

「日本人が好きなのは昆布から出る“グルタミン”の旨さと、かつお節の“イノシン酸”の旨さが合わさった味なんだ。面白いことをしてやる。まず、すっぽんのスープを口に含んでごらん。次に、この黒吟っていうお酒を飲んでごらん。」

そう言われて実際に飲んでみると、口の中で急に旨味が倍増していったのです。もちろんそれぞれ単体でも美味しいのですが、組み合わせるとより美味しかった。

そのときに「料理って奥深い」「私がやっているのはまだ料理じゃないんだ」と感じました。

職人でありながら料理人としての遊び心があったマスター。今までに見たことの無いような食材の使い方や調理の仕方で楽しませてくれました。

引退する直前まで、今までの調理法に囚われない素材の活かし方にトライされていました。

何かを直接習ったという訳ではありません。しかし、お店に食べに行って会話をしている中で、本当に色々なことを学ばせてもらいました。

素材の美味しさの活かし方や、レシピのその先を追求する蘭のマスターの姿勢は、僕の「料理」の原点ですね。

私が料理を通してお客様に味わってほしいのは、味だけではありません。

お客様にとってこれまでの経験を上回る感動も味わってほしいと思っています。

そのためには素材の鮮度や状態も非常に重要な要素です。鮮度は落ちているけど「食べられる」状態のものを提供するかというと、答えはNO。

「食べられる」状態か否かではなく、「美味しく食べられる」状態かどうかで判断するようにしています。

また日本料理に取り入れたい大事な要素のひとつが、季節感。食材には「はしり」と「旬」と「なごり」というものがあります。

「はしり」とは食材が出てきたばかりの頃。例えば秋刀魚だと、はしりの頃には脂の乗りが少し足りなかったりする。

そこで肝を使って肝焼きにして出すなど、ひと工夫を加えるんです。

「旬」の頃は食材が一番美味しい時期なので、ストレートに素材のそのままの味を楽しんでもらえる調理法が良いです。

秋刀魚で言うと塩焼きなんかが良いですね。

「なごり」の頃には、もうみんながその食材を一度は味わっています。そこで、初めて少し違った食べ方を提案するのです。

旬を過ぎるとどうしても味が落ちてきてしまうため、工夫が必要になります。

そんな風に季節によって素材の味も少しずつ変化していくため、そこに合わせて調理の仕方を変えていく。その判断は難しいけど、とても大切です。

当たり前ですが自分が食べたいものだけ出せばいいというものではありません。

お客様が食べたいものの本質を見極めて料理を提供することが重要です。


その3.お客様の声に寄り添いながらも「言いなり」にはならない

料理人にとって、お客様の反応や声はとても貴重です。お客様が料理を食べた瞬間の表情には嘘がありません。

居酒屋だと、料理が来ても大抵の場合は会話が続きます。

そんな中で、一口食べた時にお客様の顔が「えっ!」「うまっ!」という顔になれば大満足。

私が目指したいのは、まさにこの「会話が止まってしまうほどの美味しさ」です。

お店では、もちろん私自身が「美味しい」と思えるものを提供しています。

しかし、最終的にはお客様が正解だと思っています。

でもここで気を付けたいのは、お客様の言いなりにはならないこと。

例えば居酒屋で「焼きそばが食べたい」「オムライスが食べたい」と言われたとします。

でもすべての要望に答えていたら、何のお店なのか全く分からなくなってしまいますよね。

何でもあるお店にはなるけれど、私が求めるお客様にとって「来たいと思えるお店」かどうかというと、違うのだと思います。

お客様の言うことは本質的ではあるけれど、言われたことの全てを受け入れれば良いというわけではないのです。これは企業理念にも掲げています。

常連様との写真


最後に。私が情報発信に力を入れる理由

以上、飲食店経営者である私の「料理」に関する考え方をお伝えしました。

イデアルにとって「料理」は最重要なピース。

飲食業界に少しでも興味がある方に届けばいいな、と思いこのnoteを書きました。

余談ですが、実は今まで情報発信はあまり得意ではありませんでした。

しかしnoteやTwitterを最近始めたのには、理由があります。

新しい料理へのアンテナを張るために、「フーディ―」と呼ばれるグルメ・食通の方のSNSをフォローするようになりました。

その方々の投稿を見たり交流をしたりしながら、世界で流行っている料理を参考にしたり、新潟にまだない本物の料理を探しています。

その中で気が付いたことは、“発信している人が一番新鮮な情報を得られる”ということ。

発信するには情報収集が必要。情報を追いかけているうちに、自然と最新情報を手にしやすくなるのです。

今後も自分のお店や飲食業界、経営など色々なジャンルで情報発信を頑張っていきます。

よろしければぜひTwitterのフォローをよろしくお願いします。
https://twitter.com/ryowada563


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