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情けは人の為ならず。というけれど。

ほどこせし 情けは人の為ならず 己がこころの 慰めと知れ
我ひとに かけし恵みは忘れども ひとの恩をば ながく忘るな

新渡戸稲造博士

   「情け(なさけ)」について考える時、他人に情けを掛けた自分が「いい事をしたなあ」と思えればいい。しかし実際問題として、相手の反応は大抵が微妙になることが多い。微妙なだけならまだいいのだが、その大半が「…どうも。(もしくは無言)」みたいな感じになる。そんな時はいつも「なんだ…。やらなけらばよかったなあ…」と後悔することばかり。つまり「私なんかが何かしたところでなんのメリットも無いばかりか、迷惑かけるばかりだ。だったら黙っていよう」。それが僕の情けに対する考え方についての大半の感想だ。

    情けをかけたつもりが何だか損をした気分になる事が多かった。僕にとっての「情け」とは、ほとんど無駄と同義だったのである。だから「情けは人の為ならず」と言われれば、その人のためにならないから情けをかけない方がいいという理解になっていた。もちろん、今はそういう意味では無いことは知っている。今思えば自分の伝え方や、情けをかけるタイミングの悪さ、そしてコミュニケーションのテンポの悪さ…すべて自分に理由があるのだろう。だが、考えれば無理もないことではないだろうか。

   例えば、学生時代を思い出して欲しい。同性の同級生は皆、自分中心に考えるだろう。その同級生に「情け」をかけるとはどういうことか。ふたつある。ひとつは同級生からのお願いをすべて聞き入れること。もうひとつは奢ってあげたり、宿題を見せてあげたりすることだったりする。つまり、善意は相手を増長させてしまう。ひとりに「情け」をかけるなら、2人3人…と全員に情けをかけなくてはならなくなると思わないだろうか。そ可否の線引きは、仲良いかどうか?で判断すればいいだろう。だが、当時の私は八方美人的な正確であった事が災いし、ひとりだけ、もしくは数人だけというふうには考えることができなかった。かと言って全員に「情け」をかけることもできない。結果として誰にも「情け」をかけないという選択になった。それが冒頭の言葉を誤認する結果となったわけだが。

   自分の中で行動に統一性を持たせることは大事だ。だからわたしは「情けは人の為ならず」という言葉を逆の意味で理解してそのまま実行した。つまり、情けをかけることを禁止した。その結果どうなったか?わたしは孤独になった。

   誰にも情けをかけないということは、誰からも情けを受け付けないことで辻褄が合う。整合性が取れる。そのため、わたしは情けを嫌い、情けを拒否した。その結果としての孤独。そうすると、やはり他人を信用してはいけないのだという間違った判断が芽生えていく。そうしてますます孤独を窮(きわ)めていったわたしは、大人になっていざ同性に情けをかけようにもさじ加減がわからない。また、意中の異性に情け(下心有り無しに関わらず)をかけたつもりでも、拒絶され、またしても「無駄」と感じていく。モテる人やモテる礼儀を知っている人ならばそれをスマートにこなすだろう。だがそれも経験値がものを言う。つまり、そうでない場合の人間には無理な話なのである(私の話です)。

   いくら「情けは人の為ならず」は真理であると言ってもその真の意味を理解できる人はもしかしたら少ないのかもしれない。あらゆる苦悩や困難を乗り越えてようやく自分の身の回りを顧みることができる。その余裕を得た人だけが最後に至る境地と言っていい。その余裕がさらに人を幸せにする。そう、余裕だ。余裕こそが寛容なのだ。

   だが一方で「情けをかける」という表現は、いささか言葉足らずのように感じる。なにも施しをせずともいいのではないか。例えば感謝の言葉だ。「ありがとね」「助かったよ」「ほんとありがとう」「お礼じゃないけどこれあげるね」「いつも助かってる」「これ良かったらもらってね」…一部何かをあげる表現も含まれているが、何をあげるかは重要ではない。それは気持ちの方が大切だからだ。

   しかも、本当にそう思っていなくても良かったりする。つまり、本心から「感謝」していなくても、そう思っている様に振る舞うだけでいい。極論を言えば嘘でもいい。嘘でもこのような言葉や態度を表すことで、その優しさは巡り巡って自分の立場を向上させる。つまり「情けは人の為ならず、己の心を癒す」のだ。

    自己満足でもいい。下心があってもいい。打算的でもいい。悪知恵が働いてる場合でもいい。偽善者だって構わない。周りの人に情けをかけることは、自分にとってのメリットでしかないのである。やらない手はないではないか。自分のできる範囲で賢く情けを振舞おう。すべて自分が癒されるため。自分のために情けをかけることはいいことなのだ。新学期、新社会人皆さんお疲れ様です*´ㅅ`)"

MUSICAでした*˙︶˙*)ノ"

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