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インフィニティニキ考察:SONYのゲーム作りの主戦場は中国へ 日本のゲーム会社は長らくHDゲームから離れすぎた。

 いま、据え置きゲームが盛んだ。確かに一時のスマホゲームは鳴りを潜めている。そして、STEAMから端を発した新作ゲームの盛り上がりは、パソコン画面やテレビ画面でプレイすることの面白さを呼び起こし、いまや時代は据え置きゲームに回帰する形となっている。昨今のゲーム業界を賑わせている作品の名前を挙げれば、エルデンリング、ファイナルファンタジー7リバース、ステラブレイド、原神、黒神話:悟空ブラックミスウーコン、インフィニティニキなどなど、どれも据え置き機における大傑作である。

 これらの名作ゲームを手掛けたメーカーは海外勢が目立つ。特に韓国や中国のゲームソフトメーカーの台頭が著しい。そういうと日本はもうだめだと言われる向きも多いが、ファイナルファンタジー7リバースは日本のスクェアエニックスが手掛けているし、エルデンリングはフロムソフトウェアとバンダイナムコにおける国産ゲームだったりする。だが、ファイナルファンタジー7リバースを例に考えてみると、その開発のほとんどはSONYの開発スタジオの強力なバックアップがあったことは周知のとおりである。

 それはPS5をどうしても売りたいと考えたSONYの立場から考えてみれば理由は明白だ。売れそうなタイトルに自社開発ソースを惜しみなく投入し、最高級のゲーム開発を可能にするだけでなく、PS5専用タイトルにすることもできるというメリットもあるからだ。ファイナルファンタジー7リバースを皮切りに、PS5で発売される大型タイトルはそのほどんとにSONYのスタジオによる強力な開発バックアップがあったことは明白だ。

 わたしは、特に大型タイトルしかやらないプレイヤーではないが、ファイナルファンタジー7リバースをプレイしたときに若干の違和感を感じたのだ。それは端的に言えば「これはスクエニがデザインした部分はかなり少ないかもしれない」という実感である。というのも、ストーリーこそファイナルファンタジーだと感じた半面、フィールドでアイテムを拾う仕組みや、拠点を解放するシステム、壁を登っていくときの独特のモーションなどが異質だったからだ。また、その直前にプレイしたファイナルファンタジーシリーズの最新作であるファイナルファンタジー16との圧倒的なクオリティの差を感じてしまったからという部分も無視できない。

 つまり、最新作16のクオリティがファイナルファンタジー7リバースのそれに全く追いついていなかったのである。だからこそ「ファイナルファンタジーは16で終わってしまった」と感じた。それは今思うといかにスクウェア・エニックスの内情を知らないまでも、その点を考慮できなかった僕自身がやや恥ずかしい気持ちになるのだが。

 ぼくが日本のゲーム会社に期待することは実はもはや少ない。自分の幼少時代を育ててくれた恩があり、そのブランドに対する高いイメージのハードルがあったことは認めよう。しかし、いくらプロだからといってそれをうまく開発できない状況には理由があるのだし、プロだから面白くして当然というような一昔前のスポーツ根性のような感じ方はもはやすまい。もはや、そういう次元でゲームは作られてはいないのだ。悲しいが、それはある種、仕方がないことだ。

 さきほどの話の続きをしておくと、その後、ぼくは、SONYが強力にプッシュするゲームをいくつか遊ぶようになっていく。それはさながら、任天堂のファーストタイトルゲームに安心感を覚えるようなそれだ。まあ、昔のぼくなら、スクウェアのゲームは絶対外れがないと妄信するようなものなのだけど・・・。だが、実際問題、SONYがプッシュするゲームは面白かった。さきほどのファイナルファンタジー7リバースも、これはスクエニじゃないなとは思いながらもひととおりは楽しめたゲームであったし、その後、鳴り物入りでリリースされたステラブレイドもなんだかんだ傑作だった(もちろんニーアオートマタを下敷きにしていることは百も承知である)。そしてそれは今回発売された新作ゲーム「インフィニティニキ」をプレイしてみて確信に変わったのである。「ああ、これはSONYのゲームの手触りだ。これがいわゆるPS5における一級品のゲームなのだ」と。黒神話:悟空ブラックミスウーコンについては主人公が女の子じゃないのでスルーはしたがきっと面白いゲームなのだろうと思う。

 ぼくはSONYからお金をもらってこの文章を書いているわけではないので、ちゃんと逆の意見も述べよう。SONYのゲーム作りはとにかく高品質だ。背景は超美麗だ。だが、ゲーム性においてはおおむねシンプルといえる。オープンワールドで、素材を拾って集めて加工したり、スキルツリーでキャラクターを強化する。ここの部分における圧倒的なクオリティをさらりと実装するゲームがもし今後もでてくることがあれば、それはSONYのスタジオが絡んでいるといえるかもしれない。よく言えば高品質の地形データを豊富に持っている。悪く言えばそれ以上の独創性やオリジナリティはない。単に高品質。それだけだ。

 そんな風にここ数日インフィニティニキを遊んでいると、ふと気づいたことがある。「あれ?この感じはどこかで体験したことがあるぞ」と。それはファイナルファンタジー7リバースが獲得したオープンワールドのそれであった。むしろ、ファイナルファンタジー7リバースはオープンワールドにしたことで評価されたゲームではなかったかと思う。つまり、その評価の大部分は、SONYが手掛けている部分だと思うのである。スクウェア・エニックスはモンスターやキャラクター造形、バトルシステム、メインストーリーに特化して開発されたに違いない。その部分からはスクウェア・エニックスを感じることはできたからだ。逆を言えば、オープンワールドの仕組みやゲームデザインからはスクウェア・エニックスを感じることはなかった。

 そして、今回のインフィニティニキにも同様のことを感じたのである。オープンワールドの作りこみはSONYお得意の高品質のそれであったため、ファイナルファンタジー7リバース、ステラブレイドをプレイ済の自分にとってはもはや馴染みがあった。安心感と言っていい。つまり面白さの底上げはオープンワールドのそれですでに担保されているのである。そのうえで、オリジナリティの部分は、他社におまかせしている。それを端的に言うと以下の通りとなる。

A オープンワールド+王道RPG ※開発は国内
B サイバーパンクARPG ※開発は韓国
C オープンワールド+着せ替えRPG(基本無料) ※開発は中国

そして、このジャンルに当てはめて開発されたであろうタイトルが以下だ。

A ファイナルファンタジー7リバース
B ステラブレイド 
C インフィニティニキ ※PS5限定ではない

 つまり、PS5を売ろうとしたとき、SONYが主導となってサードパーティー社と協力してキラータイトルを作ったという壮大なプロジェクトなのである。だが、上に書いた通り、インフィニティニキだけは、時限限定にしなかった(できなかった)というのがまた興味深い。開発したのは中国・江蘇省蘇州市を本社に置く中国メーカーである。いまや、中国本土におけるゲーム市場は日本よりも巨大だ。すでにアメリカ企業となったSONYが手掛けるPS5の独占タイトルとする売り方に、スタジオが難色を示したであろうことは容易に想像できる。端的に言えば、中国がすべてにおいて上なのだ。

 確かに国内メーカーはどうも元気がないように思っていた。それは世界的なヒットを生み出せるメーカーが少ないからである。国内向けにヒットを飛ばしているメーカーならあるが世界中でとなるとそれはごくわずかだ。任天堂はハードとセットにすることで世界中に自社のゲームを届けているが、スクウェア・エニックスやフロムソフトウェアはそうではない。にもかかわらず世界中でヒットできるソフトを作り続けている。この2社には特に称賛の言葉を送りたいと心から思うばかりで、それ以外の言葉は出てこない。

 開発体制に問題があるのか、それとも作る気がないのかと個人的にもやもやしていたが、どうやら前者らしい。日本のゲームはながらくHDゲームから離れすぎていた。それは大型タイトルを作る会社はごくわずかとなってしまい、大手以外はみな、大手のお手伝いをするか、自社でスマホゲームを作るくらいしかなかったからというのだ。スマホゲームは課金システムをいかに作るか?というノウハウばかり蓄積されるばかりで、肝心のゲーム性やオリジナリティについてはほとんど過去のIPの使いまわしであった。それでゲームを作りたいと思ってゲーム業界に入り、ゲーム開発をしようとした人たちが、ひらすらスマホゲームの開発に回されたという点にあるという。

 そんな状況下では面白いゲームとはなにか?面白いゲームの作り方、企画書の作り方、企画の通し方、売り上げの立て方などのノウハウは失われてしまった。そうして中堅のゲームクリエイターたちが、いざ会社から新規でゲーム作れといわれても、何も作れず、ソシャゲで利益を担保してきたゲーム会社にはそもそもHDゲームを開発する技術力がないことから開発を海外のゲームスタジオに丸投げするという図式があった。世界的人気を持つIPを抱えている強みが逆にゲーム開発のノウハウを海外に流出させる結果となった。とても頷ける話である。

 いまゲーム業界を牽引しているクリエイターは過去にファミコンを作っていたレジェンドたちだけだ。しかし彼ら彼女らも当然年を取る。そうすると最新のゲームの流行についていくことは難しい。そして昨今のリメイクを手掛けるプロデューサーをするに留まっている。そういう意味では、ファイナルファンタジーの生みの親の坂口博信さんが、ファンタジアンをリリースしたことは若いなと感心すらするし、さすがとすら思う。ファイナルファンタジーのプロデューサーを担当するスクウェア・エニックスの北瀬さんに至っては果たして新作を作っているのかどうか。ぼくは聞いたことがない。

ぼくにゲームを作らせてください。
あのころのスクウェアを超えるにはアイディアが必要です。
僕とゲームを作ってくれる方、募集します。

むじかでした。

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SUMMY(スミー)未来の風ナビゲーター
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