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石楠花直のものがたり集

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石楠花 直(しゃくなげなお)です。 子どもが主人公の小説を書いてみました。クリエータの皆さん是非読んでください。
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記事一覧

奴が喋ると小母ちゃん笑う

奴が喋ると小母ちゃん笑う

彼は微動だにせずそこに立っていた。
それまで私は、彼に感謝していたのだが今は彼が私に対し、戦いを挑んできたのを切っ掛けに、彼に対してライバル心を抱いている。
今度こそ私は彼に一言も物を言わすことなく堂々と彼の前を横切ってやるのだ。
 
新型コロナウイルスが人類を戦慄させている昨今、メディアやネットで大騒ぎするほどの恐怖を私は感じていない、と言うのは、7年前に重度の糖尿病と診断され合併症で肝硬変寸前

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怖~い話

怖~い話

私は京都にある『霊山護国神社』に詣でていた。
この地に眠る『坂本龍馬』のお墓にお参りするためである。
ゆるやかな石段を登っているともう少しで目的の地に到着するという時、人だかりが出来ている一基のお墓の前を通りかかった。
「君もここに参列しなさい」
見た事が有る様な無い様な人に呼び止められて仕方なく手を合わせた。
墓石には『寺田家』とあるが私には訳が分からないし京都には寺田なる知り合いはいない。

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ルールの意味

ルールの意味

ハローウィンの季節になると、仮想した若者たちで渋谷の街は楽園と化す。
お酒に酔ったミッキーマウスやゾンビが街を練り歩き、信号無視に始まって、ひどいときには軽トラックをひっくり返す者まで現れた。
暴動にも見えるルール違反もこの日限りと許される祭りなのだろうか?
 
夢の国の話を聞いたことがある。
 
夫婦は、息子の5歳の誕生日に彼が一度は行きたいと言っていた夢の国に彼を連れて来たそうだ。
主治医から

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かん太君の大冒険

かん太君の大冒険

 潮騒が風に包まれていました。ルミちゃんはママといつもの道を歩いています。ママとのお買い物はルミちゃんにとって大好きな日課です。帰りに駄菓子屋でいつもママに好きな物をひとつ買ってもらえるからです。駄菓子屋には小さな丸いメガネをかけたおばあさんがいます。
「おばちゃんこんにちは」ルミちゃんはいつも元気です。おばあさんはそんなルミちゃんが大好きです。
「ルミちゃんいらっしゃい」ルミちゃんは沢山のお菓子

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泣き虫ウォーズ

泣き虫ウォーズ

泣き虫✕(ペケ)太郎(たろう)と呼ばれた日 

少年は震えていました。心臓は激しく脈打ち、背中から力が抜けるような感覚を覚えています。[人は、時に命を懸けてでも戦わなければならない時がある]誰かがそんなことを言っていました。
彼は体育館の片隅で、今がその時だと思っていました。少年の名前は健太郎、小学五年生です。
 タッタッタッタッタ! ポーン――パン――スタッ。子供たちが体育の授業を受けています。

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