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何故、中国は中東に軍艦を派遣したのか?

中国海軍が中東に行く意味とは?

SNS上で中東情勢を追いかけているアカウントのいくつかが、中国が6隻の軍艦を派遣したことを伝えている。


これについて中国の国防相は、かねてから予定されていたオマーンとの軍事訓練に参加ていて、その後、この6隻はクウェートに寄港する予定だと言う。

この6隻にはミサイル巡洋艦やフリゲート艦も含まれており、訓練のためとはいえ、かなり本格的な船団となっている。
10月7日以後、アメリカはイスラエル国防軍の支援を目的として、空母ジェラルド・フォードを中心とする打撃群を派遣し、追加で更にもう一つ、空母打撃群を派遣している。
アメリカの艦隊は紅海と地中海からそれぞれイスラエルに近づいており、すでに紅海上でイランが支援するイエメンのフーシ派が発射したと思われるミサイルと攻撃型ドローンを迎撃している。このミサイル他はアメリカ軍を標的にしたものではなく、イスラエルに向けて発射されたものとされている。

このような緊張感が増す情勢の中、中国が6隻の軍艦を派遣した意図はどこにあるのだろうか?
中国国防相は、クウェートとの戦略的互恵関係が5周年になったことを受け、また「一帯一路構想」が発足は10周年を迎え、軍事面でもクウェートとの関係を強化する狙いがあると言う。
19日には三日間にわたる『一帯一路フォーラム:The Belt and Road initiative to Beijing to celebrate its 10th anniversary』が閉会したが、10周年を迎えた一帯一路構想は、中国が華々しく花火を打ち上げたにもかかわらず、前回のフォーラムに比べ参加国が38カ国から24カ国に減少するなど、縮小化の傾向は否めない。

特に今回のフォーラムで中国側が目玉としたかったロシアのプーチン大統領の招聘については、参加国がプーチンと共に写真に写るのを嫌がったり、プーチンが来るから不参加を決定した国もあったようだ。またG7で唯一一帯一路に参加していたイタリアも、参加するメリットが感じられないと脱退を表明している。

中国の狙いと誤り

一帯一路は習近平氏が鳴り物入りで参加を呼びかけた、簡単に言うとアジアからヨーロッパを結ぶ巨大インフラを構築しようと言うもの。以前にも触れたように、ここに中国企業を参画させ、金儲けを企んだのが、そもそもの始まり。中国はアメリカの覇権主義の追随をする為に、大規模な事業を行う必要があると考え、一帯一路を思いついた。思いついたまでは良かったのだが、10年前の段階でWTOや国連での発言権を増す目的から既にアフリカ諸国や中南米諸国に対して、資金援助工作とロビー活動を展開していた中国は、実は早くから欧米諸国にその動向を注視されていた。
ただ、当時は、今のように海洋進出等、覇権主義国家の顔を見せていなかったため、外交においてはアメリカも対中戦略を甘く考えていた。
しかし、貿易赤字が表面化し、のっぴきならない状況になったオバマ大統領時代から実は対中政策の見直しが進んでいたのも事実で、トランプ大統領になり、アメリカは対中路線を強硬なものにシフトしていった。
中国経済が好調だった背景には、GDPの4割近くを占める不動産関連事業によるところが大きい。不動産を作りづけることで、そこに個人資産等を投入させ、あたかも資産が増え続けるかのような幻想でGDPを膨らませてきた。その国内の需要は企業収益の増大と共に、地方債の乱発と金融機関の不動産投資等で信用創造を膨らませてきたのだ。日本のバブル期とその崩壊過程と類似しているという指摘もあるが、むしろ、出口戦略で資本主義経済の原則である肝心の資本投下している金融機関の不良債権処理を怠っていることにある。
海外に貸し付けた債権が不良となり回収が不可能になった時、専制主義国家は何を選択するだろう?債権の回収が出来ないのだから、国家の破綻は必至だが、仮にそれを認めてしまうと、習近平の権威が失墜する。と言うことは、海外に投下した中国の資本を回収するのではなく、元々、それが無かったことにしようとするだろう。その残された手法は一体、何だろう?
結局、とどのつまりは世界がグチャグチャになることではないだろうか?
世界が破壊されれば、ガラポン状態で経済がリセットされる。
中国共産党にとっては人民がどうなろうと関係ない。中国共産党が行なっていることが正義なので、最終的にその正義が通ればいいのだ。つまり、中国には中国共産党員か、それ以外かの二者択一しかなく、そこには苛烈なまでの格差と差別が存在している。
その中国が中東に軍艦を派遣したのは、まさに中東における中国のポジションを維持しておきたい狙いがある。中国はイランにもサウジアラビアにもいい顔をしたいのだ。その為にはある程度の力を誇示する必要がある。それが、今回の6隻の軍艦派遣だろう。
中東のパワーバランスの均衡を保つにあたって、いずれかの国が中国を頼りにすることを狙っている。そうやって中東における中国のプレゼンスを確保しながら、国連やグローバルサウスにおける中国のプレゼンスを確保したい。
そして、もう一つは、中東各国に対し、アメリカと対抗できるということを示しておきたいのだ。中国はメンツの国で、一帯一路の通り道である中東で中国は軍事面でも優位に立っておきたいと考えるだろう。
イスラエルとアメリカがテロ組織と対峙している時、中国はテロリストの味方になることはできない。そこまで中国もバカではない。イギリスの二枚舌外交と同じで、テロ組織の支援国にもまたアメリカよりのアラブ諸国にもいい顔をするだろう。そもそもアメリカ軍と戦って、勝てるわけはなく、いざとなれば中国はテロ組織に反対するという姿勢になるだろう。
その時、中国海軍が睨みを効かせている状況であれば、テロ支援国家も正面から中国に反対するとは言えないだろう。
中国がロシアと仲良くしたいのは、互いに専制主義国家であることと、ロシアはチャイナマネーがアテになると見込んで、中国はロシアの石油と天然ガスが欲しい。互いの利害関係はそこにしかない。現状では中国がロシアの足元を見て上から目線でものを言ってるが、一帯一路の巨大利権も狙っている中国としては中東問題にも首を突っ込みたいと考えている。
ただ肝心なのは、中東諸国が中国をアテにするだろうか?
というのも、中国は国内経済がガタガタな上に、アフリカ等に出している金が事実上回収不可能になっている。仮に、港湾使用権等で借金のカタをとったとしても、それを維持するだけのお金は中国にはない。ましてや、チャイナタウンをつくろうにも、そもそも途上国にチャイナタウンを作るメリットは無い。実質的な植民地化を狙うとしても、欧米諸国が諦めた国々を植民地化しても中国にそれほど旨味があるものでは無いだろう。それが南米のベネズエラのように石油が出るなら話は別だが、アフリカ諸国は現在でも内戦状態にある国が多く、正常不安定な国で中国がイニシアチブが取れるほど中国共産党は柔軟性は無いだろう。
つまり、中東へのプレゼンスを確保するために6隻の軍艦を送ったはいいが、中国海軍の実力も勘案すると、無駄骨に終わる可能性が極めて高いのだ。
中東問題は中国が首を突っ込むほど簡単な問題ではない。
ましてや、宗教自体を否定する国家観を持っている中国が、世界の宗教の聖地がある場所で指導力を発揮する可能性も低いのだ。
有り体に言えば、これも習近平外交の失策と言えるだろう。

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