第三次世界大戦の本質とは宗教戦争である
第5次中東戦争
私は海外のニュースソースに基づき、各国の綱引きの現状から、今後の動向を予測しているのだが、今回のハマスによるイスラエルへの攻撃は、中東情勢に詳しいいずれのサイトも予測していなかったことで、むしろ世界はウクライナとロシアに目を向けていてその間隙をぬった奇襲だったと言える。
そこで、中東諸国にいるイスラム原理主義テロリスト集団が、ハマスに同調するような動きが出ている。
ヨルダンのヒズボラ、パレスチナ国内のハマス以外のテロ集団、アフガニスタンのタリバンなどが既にハマスの攻撃に対して支持するとの声明を出している。
そして、ここからが肝心なのだが、イスラム教原理主義者の多くは暴力で革命を行い、イスラム経典が具現化したイスラム教国を作ろうとしてて、それが反政府活動だったりテロ活動だったりする。
ところが、イスラム教の信者というのは世界中にいて、現在も拡散し続けている。それは合法違法を問わず、経済活動を求める移民だったり、本当に何も所有する資産が無く、自分の身一つで紛争地域から逃れてきた難民だったりするのだが、彼らにとっての拠り所はイスラム教という宗教の一点に集約される。
彼らが目指すのは、概ね裕福と思われている先進国だ。ここには、イスラムの教え以上の意味があって、かつてキリスト教国の多くはアラブの地、イスラム教の教えが伝播された地に来て、政治的干渉を加え、イスラムの国々をめちゃめちゃにしたじゃないか、という言い分だ。
これは一面、正しい。
現在のイスラエルは元々、イギリスが統治権を持っていた。
要は中東諸国の楔として、機能していたのだが、第二次世界大戦のドイツ敗戦によって、ドイツで迫害されていたユダヤ人が聖地エルサレムを目指し、元々、居住地を持っていた先人の土地に移住を開始した。
第二次世界大戦後、疲弊したイギリス経済は、もはやイスラエルの地を維持することが叶わず、パレスチナとユダヤ人とアメリカへ三枚舌外交を行い、イスラエル統治の責任を放棄したことが発端となっている。
第二次世界大戦後の不透明な世界秩序の中、中東問題が新たな火種になることを恐れた国連が、イギリス主導で事実上イスラエル建国に舵を切ったことが、中東紛争の発端となる。当たり前だが、イギリスが統治権を主張してきたパレスチナの人たちは、それでも自分たちの土地であるとの認識があったにも関わらず、国連を通じて唐突にイスラエル建国で国際世論が進み、ユダヤ人が退去してイスラエルに来たことをよく思う筈がない。
イスラエル国民の心情
ユダヤ人の2000年来の悲願は、エルサレムにユダヤ人国家を建設することにあり、イギリスがユダヤ人を唆したことで、一気にイスラエル建設に向かった。
実はイスラム教の本質は、争いあうことにはない。諸派に分裂したイスラム教徒の中で原理主義者と言われる人たちが過激思想に傾注したのが現在であって、実はそれほど古い歴史ではない。サウジアラビアに行くと分かるが、クルアーンの教えに従った生活様式は、外から来る人に寛容であり、イスラム以外の排斥は行わない。そして、砂漠の遊牧民から生まれた宗教らしく、外客を暖かくもてなす。
その元々、穏やかな国民性を持っていたパレスチナやヨルダンの人たちが過激になっていった背景には、第二次世界大戦以前からイギリスが統治していたパレスチナからの経緯がある。
非常に雑駁な説明だが、つまりイスラエル建国に至る近現代の背景だけを見ると、キリスト教国がイスラム教国とユダヤ教国の差配をしてしまったことが、問題の発端と言えなくもない。
ユダヤ人はイスラエルを自国と捉え、なんとしても2000年かかって手に入れた国土を死守しようとするだろう。パレスチナの人々は、イランやヨルダンからの支援があると言っても未だ、近代兵器と呼べるものより、ゲリラ戦を展開することが多く、武器だけで言えば大人と子供くらいの差がある。
今回のガザ地区からの攻撃によって、イスラエルは徹底的な報復行動に出るのは間違いないが、実は三方をテロ組織に囲まれているイスラエルにとって、今回の戦いは簡単なものではない。アメリカの第12空母打撃群は、イスラエルを海から支援する構え。
これも繰り返し書いているが、ハマスのようなテロリスト集団を抑え込む最大にして最善の策は、やられた分の10倍返しを行うことなのだ。これは戦争の際の鉄則とも言える。
かつて歴史上の為政者はほぼ一人の漏れなくこの手法を執ってきた。
近年ではイスラム教の独立国家建設を掲げたISISに対しての攻撃がそうだ。現在、ISISはアフガニスタン、ヨルダン、東アフリカ諸国、東南アジアの一部にバラバラになったと言われていて戦力は最盛期の数十分の一にまで減った。これはつまり、そういうことなのだ。やられた分の10倍返しでISISという組織を地上から消し去る目的で徹底的な壊滅作戦が行われた。
ガザ地区とヨルダン川西岸地区の場合、表向きはパレスチナ人をこれらの地区に押し込めてコントロールしてるイスラエルは悪い人たちという論調も聞かれるが、少なくとも1967年に引かれた国境線は維持されている。見え方は人により違うが、イスラエルなりの共存のあり方なのだ。そして、これはとても大事な視点なのだが、ヨルダン川西岸地区は首都エルサレムに近接している。本当にイスラエルがユダヤ国家「だけ」を作りたいなら、パレスチナ人を根絶やしにしてヨルダンかレバノンかエジプトに追いやっていただろうし、首都エルサレムに近づけようともしなかっただろう。その妥協点がどこにあるのか?を知ることは、実は中東情勢を知る一つのポイントでもある。
そして、世界の人々の最大の関心事は、果たしてこれは第三次世界大戦に発展するのか?という問題だ。
日本人には理解されない
何を以て世界大戦とするのか?という定義の前に、このハマスとイスラエルの戦いの影響がどこまで拡大するのか?という問いがある。繰り返すがパレスチナの人々は、自分たちが平和理に生活してたとこにユダヤ人が勝手に国を作ったと言い、イスラエルは2000年間の迫害の末に勝ち取った自国だという思いがある。
ロシアのラブロフ外相は、その落とし所を1967年国境線に置くべきだと主張した。
昨年、「ヒトラーはユダヤ系である」というラブロフ外相の発言が物議を醸し、プーチン大統領が謝罪に追い込まれるという事態があった。ロシアはソ連崩壊後、シリアに軍事介入するまで、直接的な中東への介入を控えてきた。と言うより、それだけの余力が無かったとも言える。これによりイランの中東におけるプレゼンスが増大し、イランはより強くアメリカと敵対することになった。そして、ここが最も厄介なのだが、中東に数多くいるテロリストは、イランと敵対するサウジアラビアの支援によって、非常に微妙な緊張関係を保ってきた。
笹川平和財団シニアフェローの笹川氏が、この点を重要視し、ロシアが中東へのプレゼンスを回復するためシリアに介入し、同時にイスラエル周辺国との対話を重ね、ロシアの立場を固めていったと見ている。そして、これこそが、ソ連時代のイデオロギーの対立ではなく現実路線への回帰だと見ている。
私も同意見。ただ、中東へのプレゼンスを狙っているのはロシアだけではない。中東問題の複雑さを知ってるのは、もちろん欧米だけではなく、それらの国々と長期に渡り関係を保ち、重要な原油の輸入元だとしていた日本も同様だ。
そしてここで重要なのは、日本は軍事的な支援活動については、距離を置いてきた筈の日本が、1970年代、第四次中東戦争の時に発生したオイルショックの時だ。中東は日本に対してアメリカとの同盟を理由に、イスラエルの支援国家と位置付けられようとしていた。中東にエネルギーを依存する日本は直ちに石油が止まることを恐れ、中東への外交を活発化させ、日本の中立的立ち位置を説明して回った。
実はこの時、アメリカからの猛プッシュがあったなら、日本も中東に自衛隊を派遣する議論が巻き起こっている。日本は自衛隊を派遣する法的根拠に欠けていたため、憲法改正の難しさと法改正の困難さをアメリカに説明することになった。
その後、湾岸戦争、国連PKO法によるゴラン高原、アメリカのテロ対策支援のためのインド洋派遣、ソマリアの海賊対策と続く。日本国内的には、それらの国際社会における自衛隊の役割が重要視され、2014年の集団的自衛権の協議に話が進む。
現在、ハマスとイスラエル軍による戦争によって、米軍が空母打撃群を派遣したことによって、にわかに自衛隊がどう関わるのか?の議論が起きることになるだろう。
つまり日本は責任を果たせと言う国際世論がどう高まるか?に注目しておく必要がある。一つには国連の常任理事国であり本来、国連が設立した時の連合国側だった筈のロシアと中国が、先の大戦の枢軸国的な立場に立っており、自分たちの都合に合わせて常任理事国の拒否権を行使している。これは国連加盟国から見れば、おかしい話だと思うだろうが、そもそも国連とは先の大戦の戦勝国連合のことなので、国連という組織がある以上、常任理事国の拒否権は機能し続けることになる。
私が以前、指摘したように、国連で物事の判断をしている限り、実は先の大戦は終わっていないのだ。これは敵国条項に日本が入っていることと重なる。既にこの敵国条項は意味をなさないという国連決議は採択されているが、それは次の国連憲章改正の時に外すと決まっただけで、実際に敵国条項は削除されていない。存在する以上、加盟国の意思、常任理事国の意思でこの条項が存在し続けるのだ。ここを勘違いしている人も多い。
話を元に戻すと、今後は日本の立ち位置と世界の情勢が不安定化した時に、日本が何を言い、何をするのかは今まで以上に世界から注目されることになるだろう。
と言うのも、先進国の中で唯一、国家体制(三権分立)に宗教が影響を与えていない国は、日本だけと言っていい。日本国憲法も含め、法学上も最も民主的な法が制定され執行されているのが日本なのだ。
第三次世界大戦とは?
どうして日本の立ち位置が重要になってくるのか?
ハマスがイスラエル側に大規模なロケット砲の無差別攻撃を仕掛け、イスラエルはアイアンドームで防御したにも関わらず、数多くの民間人の死傷者を出した。加えて、ガザ地区においてイスラエル人入植者を無差別殺傷したことで、イスラエルの怒りに火がついた。では、どうしてハマスはそれほど残虐な行為に及んだのだろうか?
イスラム教内部ではシーア派、スンニ派を筆頭に多くの宗教的分派が存在していて、それぞれに争いを行っているが、実は現在のように残虐な無差別殺傷だったり自爆テロを起こすような原理主義化されたテロリスト集団が形成されていったのは、1945年の中東戦争が勃発して以降だ。本来、統治権を有していたイギリスが自分の手に負えないと判断して中東から引き上げたことをきっかけに、表向きは国連が乗り出して、分割統治を決定した。決定したと言うのは非常に傲慢な言い方に聞こえるが、世界大戦後、世界の秩序の責任は連合国に委ねられた為、国連がそのように決定したのだ。これは歴史の悲劇とも言えるが、仮にイギリスが国連に委ねたとしても統治を放棄することがなければユダヤ人とアラブ人の平和的な交渉が実現していたかもしれないが、イギリスが両方にいい顔をしたい二枚舌外交を行ったが故に、両方を裏切るような形で、表向きはイスラエルが無理やり建国されたということになったのだ。イスラエル側にしてみればイギリスが責任を放棄したからではないか?と言いたくなるのは当然だ。
いずれにしても歴史的な経緯からすれば、そのような形で図らずもイスラエルが建国したことになるのだが、ここからが問題は根深い方向に向かう。
イスラム教徒は自分たちが国土から追い出されたと言い、イスラエルは本来自分のものだったものを取り返して、何が悪い?という論調になる。
つまり、これは互いの宗教的な背景の話であって、経済とか政治とかイデオロギーとは関係のない話だ。だから、イスラエルはアメリカの関与は受け入れているが、自国と自国民を守る為に、他人の力は借りないと、建国以来、明言している。言い換えれば聖なる戦いだと考えているのだ。
エルサレムを聖地とするパレスチナ人もそれは同じで、エルサレムは譲れない聖地となっている。
宗教内の派閥に関係なく、聖地と定められた以上、宗教的にはそこを死守しようと考えるのが当然だ。ただ、元々死海周辺で誕生しエルサレムに関わる宗教としては正確にはユダヤ教徒キリスト教のみで、イスラム教はサウジアラビアで生まれた宗教だ。中東全域にイスラム教が拡大するに及んで、偶像を崇拝しないイスラム教徒のうちパレスチナ人がメッカに向かって祈りを捧げる最も遠い場所としてAl-Aqsaモスクを建立し、自分たちの聖地とした。
またエルサレム周辺ではキリスト教が勃興したことでユダヤ教が隅に追いやられ挙句、当時の世界の中心であるローマがキリスト教を国教にしたことでユダヤ人はむしろ迫害の対象となってしまい、ユダヤ人が世界中にバラバラになってしまったのだ。
先の大戦の結果、枢軸国の一つであるドイツは悪者のレッテルが貼られ、その悪者から迫害を受けていたユダヤ人は可哀想な人たちとなった。次に、イギリスがユダヤ人にもアラブ人にもいい顔をしたことで、共存共栄の道が絶たれ、ロシアやヨーロッパ各国に散ったユダヤ人が元々自分たちがいた場所の統治をイギリスから引き継いだことでイスラエル建国に至ったのだ。しかも長い歴史の中で言えば、一瞬というくらいに短い2年で建国まで至った。
パレスチナ人はてっきりユダヤ人とアラブ人は共存共栄するものだと思っていたのに、勝手に国境線を引かれ勝手にユダヤ人が建国し自分たちを追い出したと考えるのは、当然と言えば当然だ。
そしてここからが大事なのだが、現在、イスラム教徒は世界中に14億人、いると言われている。それに反しユダヤ教徒は1,400万人程度だ。
今回のハマスによるイスラエル攻撃直後から、世界中のイスラム教徒がパレスチナへの連帯を表明している。イリギス、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、アメリカ、カナダでイスラム教徒がパレスチナの旗を掲げ、連帯を呼びかけている。
そのイスラム教徒の多くは、移民や難民として各国に散っている。中東や北アフリカのイスラム教国では、内戦や紛争が続き、多くの民衆が国を捨てて命からがら他国に逃げている。ただ全員そうなのか?と言われれば大いに疑問で、行った先の国で犯罪組織を形成したりその国の国民といざこざを起こしたり、不法滞在や不法移民が大半だったりする。欧米諸国では不足する労働力を補うためと、リベラル左派の台頭によって殊更人権問題を重要視する政策を行うようになり、一例を挙げればドイツなどは左派リベラルであるメルケル首相時代、従来方針を転換して数多くの移民を受け入れてきた。フランスは元々、社会主義政権が強いことから、人権問題を重視し移民や難民を無碍に扱わない政策と執ってきた。イギリスは労働力不足を補うため、国民の反対を押し切って移民を受け入れてきた。
ここ数ヶ月で問題になっているのが、EUの移民政策の転換によって、地中海を渡ってイタリアに入国する不法移民が激増している点だ。イタリアの地中海沿岸都市ではイタリア人と不法移民のいざこざが絶えない。
今回のハマスとイスラエルの戦争で、これら不法移民と難民の多くがハマス支持を打ち出し世界中で声を上げている。それに反して、テロ活動に反対する先進国は揃ってイスラエルに連帯しハマスの行為を糾弾している。
この動きに、私は言いしれぬ不安を覚える。
世界中がイスラム教徒に対して、どのような目を向けるだろう?
全てのイスラム教徒が同じではないにも関わらず、911のアメリカ同時多発テロの後、アメリカ国内のイスラム教徒の多くが差別の対象になったのは事実だ。
世界中のイスラム教徒移民は、行った先の国で問題を起こしている。
ISISに共闘したイスラム原理主義者は、中央アジアや東南アジアでテロ行為を行った。そのISISの残党は、アフガニスタン、フィリピン、北アフリカに散ったと言われているが、いつまた再結集するかも分からない。
つまり、イスラム教徒への迫害が世界中で起きた時、世界の移民、難民政策の見直しが行われ、場合によって国外への強制退去の事態になりかねない。犯罪者でもなくテロ活動を行っているわけでもないイスラム教徒はどう思うだろう?
世界中のイスラム教徒がパレスチナ人への連帯を示した意味は、彼らが程度の差はあっても世界中で同じ思いをしているからこそではないのか?
私はイスラム教徒を警戒せよと言ってるのではなく、今の世界の動きをありのまま言ってるだけだ。ただ、その先にある最悪のシナリオを想定しておく必要があると考えているのだ。
そして、この世界がイスラム教徒と対峙することの重要性と、ウクライナ戦争とハマスとイスラエルの戦争は、世界情勢の不安定さを利用する勢力を台頭させる危険性が極めて高い。
つまり、アジアも火薬庫になる可能性があるのだ。
結論は、先の大戦のような連合国と枢軸国の対立とは言えない混沌が、現在の世界を支配していることを認識する必要があるということだ。
世界中のムスリムの蜂起などということが起きるとは考えにくいが、しかし、ムスリムの中にはある種の遺恨が残る。
そして世界のパワーバランスに歪みが生じた間隙を利用しようという勢力は、アジアにもあるし、中南米にもあるし、アフリカにもある。
そうやって世界同時多発的で散発な紛争が起きる可能性が極めて高い。