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【ジャンル別】本格ミステリの勧め①【青春ミステリ編】

小学生の頃、はやみねかおる『夢水清志郎事件ノート』シリーズを読んで以来、ミステリ小説にどハマりし、そこから江戸川乱歩『少年探偵団』シリーズ、赤川次郎『三毛猫ホームズ』シリーズと順当に階段を登ってきた。

中でも『本格ミステリ』と言われるジャンルがお気に入りで、分かりやすく言えば不可能犯罪を探偵が解決してみせるもの。
「名探偵、皆を集めて”さて”と言い」
ってやつ。

そして気づけば、某大学でミス研の会長をやるくらいには入れ込む趣味になってた。

そんなわけで、ことミステリ小説に限っては、それなりの読書数になっている自信がある。

その中からジャンルごとに僕が偏愛してる作品を紹介してみようと思う。

今回は青春ミステリ編。

青春ミステリと聞くと、学校を舞台にして、日常の謎が登場し、暖かくもちょっぴりビターな真相。
ってな印象を抱くかもしれない。
もちろん、それはそれで正解なんだけど、決してそれだけが青春ミステリでないってことを以下で紹介できたらとも思う。

長沢樹『消失グラデーション』

屋上から少女が落ちた。確かに地面にぶつかった。
しかし、数分後に現場に着いた時には少女が消えていた。生きているのか?死んでいるのか?なぜ消えたのか?的なストーリー。
横溝正史ミステリ大賞受賞作。
事件の核自体は小さなものだし、真相も特段おもしろいわけではない。
けど、たった一つ、いや二つか?の仕掛けが本書を青春ミステリの傑作に仕立てあげた。
前例はある。よく見る仕掛けでもある。
けど、この土壌で仕掛けるならば、意外性とともに物語に青臭い深みを生み出せる。
そこに気づいた著者の勝ちだろう。

東野圭吾『放課後』

今や大ベストセラー作家となった東野圭吾のデビュー作であり、江戸川乱歩賞受賞作。
億万長者のデビュー作は割と堅実な青春ミステリだったのだ。
僕が本書を青春ミステリとして評価するポイントは動機にある。
この本のレビューを見ると、「動機が弱い」という意見をよく目にする。
いやいや待てよと。
青春小説においては、ましてや高校生を舞台とするならば、十分リアリティのある、人を殺すに値する動機だろうと僕は思う。
気になった方は是非ともその動機を自分の目で確かめて欲しい。

村崎友『夕暮れ密室』

バレー部の美人マネージャーが密室状態のシャワールームで死んでいた。傍には遺書が。自殺?殺人?生徒たちが推理合戦を始める…。
ってお話。
生徒たちが繰り広げる推理の中にはトンデモない代物もあって読んでいるこっちは笑えるけど、作中の彼らは大真面目。
やがて、青春ミステリらしい痛みを伴った解決が訪れる。
この痛みって、定期的に摂取したくなるんだよね。
高校生活への憧憬、郷愁、羨望、いろいろなものが混じってぐちゃぐちゃになって、それでも清々しい気持ちになれる。
そんな青春ミステリ。

米澤穂信『さよなら妖精』

米澤穂信の青春ミステリといえばアニメ化もされた『氷菓』が知名度では勝るのだろうけど、ミステリ的な巧さ、そして青臭さで言えばこちらの方が数段上。
でもこの小説においては”青春”という文字を恋愛の観点から見るのは間違い。
主人公の異国に対する抑えようのない羨望、憧憬の念は、自分たちが嘗て感じた非日常への飛行願望と相まって強烈なノスタルジーを感じさせる。
まさに青春。
そんな青さに当てられていると、不意に襲ってくる米澤穂信特有の皮肉に満ちた痛々しい真相。
中でも”墓地に置かれた紅白饅頭の謎”の真相は強烈。

飛鳥部勝則『堕天使拷問刑』

誰が何と言おうとこれは青春ミステリ。
だって帯にも『ボーイ・ミーツ・ガール』って書いてあったもん(白目)
先に挙げた作品たちを正統派とするなら、これは蛇の道。
狂った奴らが、狂った事件を起こして、狂った解決編が齎される。
それでも清々しいほどに青春を感じてしまうのは、僕が既にもう狂ってしまっているからなのか。
灰汁の強い飛鳥部作品の中でもとりわけキマってしまっている作品だけど、それだけに僕の性癖にブッ刺さってしまった。
是非とも皆に読んでほしいところだが、あまりにも入手困難が過ぎる。。。

古野まほろ『命に三つの鐘が鳴る』

これまた偏愛。
恋人を殺したと自首して来たのはかつての親友。
殺された女性はかつての恋人。
犯人は動機を一切語らない。
刑事の主人公が動機の解明に乗り出す。
というお話。
古野まほろの青春ミステリなら『天帝のはしたなき果実』だろって声が聞こえてきそうだけど、無視!
本書は、学校が舞台でもないし、ボーイ•ミーツ・ガールも存在しない。
何ならガチガチの警察小説だ。
だけれども、どうしようもなく青春小説でもある。
主人公の刑事は動機を解明する為に、昔の青春時代に想いを馳せ、手を伸ばし真実を手繰り寄せようとする。
けれども真相と同時に青臭い痛みも襲ってくる。
それでも、と奮起する姿勢は、まさに青春小説の趣。


以上、6作品紹介しました。
上4つは、読みやすく、しっかり青春してるのでオススメです。
下2つは完全に僕の偏愛なので、読む際は御用心を。

今回の【青春編】の他にも【バカミス編】【古典編】【海外編】【ホラー編】【特殊設定編】【短編集編】なんかもやれたらなぁと。
まぁ、気が向いたら書きます。

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