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【映画】Swallow/スワロウ

【あらすじ】

完璧な夫、美しいニューヨーク郊外の邸宅、ハンターは誰もが羨む暮らしを手に入れた。ところが、夫は彼女の話を真剣に聞いてはくれず、義父母からも蔑ろにされ、孤独で息苦しい日々を過ごしていた。
そんな中、ハンターの妊娠が発覚する。待望の第一子を授かり歓喜の声をあげる夫と義父母であったが、ハンターの孤独は深まっていくばかり。ある日、ふとしたことからハンターはガラス玉を呑み込みたいという衝動にかられる。彼女は導かれるままガラス玉を口に入れ、呑み下すのだが、痛みとともに得も言われぬ充足感と快楽を得る。異物を“呑み込む”ことで多幸感に満ちた生活を手に入れたハンターは、次第により危険なものを口にしたいという欲望に取り憑かれていく…。

※以下ネタバレ含みます

確か2年前の年始辺りに日本公開予定で、Filmarksのウォッチリストには入れていたけど、仕事が忙しく劇場では観れなかったやつ。
サブスクに来ても、マイリスに入れたまま放置。
公開日より2年遅れでようやく視聴。

結果、大傑作。
もっと早く観ればよかった。

まず、主演のヘイリー・ベネットが素晴らしい。

彼女を初めて知ったのはヒュー・グラント主演の『ラブソングができるまで』だったはず。
その作中で若者に人気の歌姫的な役で出演してた。
当時は、特段演技が上手かったという印象はなかったけど、なんか雰囲気のある女優さんだなぁとは思ってた。

それから10数年、こんなにも味の出せる役者さんになっていようとはね…

そもそも、『Swallow/スワロウ』を観ようと思い立ったきっかけが、年始に先に挙げた『ラブソングができるまで』を再視聴して、彼女の存在を思い出したからなのよね。

そんな彼女の演技力が今作で遺憾なく発揮されてる。

そして、この映画の内容を説明する際に「異食症をテーマに扱った〜」という文句をよく見るけど、私見ではまったくの的外れ。

この映画を一文で説明するなら「自己肯定感の低い主人公が、自己愛を獲得するまでの物語」ってことだと思う。

なにも異食症の辛さを広める為の映画ではない。

また、Filmarksでざっと感想を見たところ旦那の悪口が散見された。
確かに、厭な描かれ方をしていたし、彼の両親は典型的な上流階級思想にどっぷり浸かっていた。
けど、旦那の嫁さんへの愛は確かにあったはず。

それでも、自分は空気なのではないかと不安に思う嫁さんが、存在を確かめる為にとった行動が”異食”となる。

だから、先に挙げたテーマを演出する小道具として異食症は扱われてる。

ここを間違えると皮肉の効いたラストカットも響いてこない。

常々、嫁さんは過去に飲み込んだビー玉や、画鋲などを排泄物から取り出し、自室にまるで「戦利品」かのように陳列していた。

そして迎えるラストシーンでは、身籠った子をトイレで堕ろすわけだが、ここで重要なのは、排泄物として出した胎児を流して棄てるということ。

それまでは、自分の存在を確かめる意味で大事に取っておいた異物を、最後はもう確かめる必要はない、とばかりに棄て去る。

ここで、ようやく嫁さんは自己愛を獲得して、前に進めるようになったわけ。

そして、先程堕胎が行われ、胎児が流されたトイレも、人の波に埋もれ、何事もなかったかのように知らない誰かそこでが糞をする。

お前が思っているほど、お前の悩みは大きくないし、誰も興味もない。
だから自分を無駄に卑下するな。悩みの種は糞にして流してしまえ。
そして清々しい顔で「うんちでた!」って言おう。

そんな痛烈なメッセージが、皮肉とパンチの効いたラストシーンには込められてると思う。

とても清々しい映画だった。
超オススメ。

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