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「成長につながるブランドパーパス」Jim Stengel #マーケティングアジェンダ DAY1 Keynote1

Opening Remark

ついに、マーケティングアジェンダ2019が始まりました。

今回のテーマは、
"Are you building your brand?"
ということで、このテーマにこめた思いをイトートーカ堂 富永さんより。

「昨今、『この広告は獲得目的かブランディング目的か』という議論がうまれることもあるが、全てのマーケティング活動はブランディングのため。
ブランディングはイメージを作るための何か、矮小化して伝わっているきらいがある。
商品・サービスが与える人の認識の全てがブランド。ブランディングはマーケターの頭と生活者の心の動きを合わせていく、近づけていく作業。

「飲むと骨がとける」もコカコーラのブランドの一部。

ブランディングは穴埋めではない。
ブランディングは数多くの要素の選択、優先度付け、上書きというダイナミックな作業である。
3日間を使って、ブランドというものについて自分の頭で考えるきっかけになれば、うれしい」


Keynote

<キーノートの見所>
昨今、優秀なマーケターを排出することで有名なP&Gのグローバルマーケティングマネージャーをつとめたジム・ステンゲルさん。
ブランドパーパスがなぜ企業に必要か、マーケターが成功を導くためのリーダーシップについて語る。

モデレーターは元資生堂ジャパンCMO、現クー・マーケティング・カンパニー代表 音部さん

音部さん「Jimが他企業のマーケティングマネージャーと違うのは、日本のビジネスに対する影響力が大きいこと。ブランドマネジメント制の導入やCMOのオリジン。生の声を聞けるのは楽しみ」

ジム・ステンゲルさん、登場!

個人的なストーリーから始める。息子の話の紹介から。息子は結婚することになり、奥さんの誕生日をお祝いすることになった。ケーキのテイスティング会に招かれて、わたしたちはチョコレートケーキを選んだ。結婚式場は350人を招待する大きなパーティーを開く予定。私は、親として、この結婚式のプランニングをした。

そこで実感したのは、ウェディングとマーケティングは似通っているということ。

<ウェディングとマーケティングの共通点>
・全て体験である
・感情的である
 マーケティングは心に訴えかけるもの
・緻密な計画
 偶発的に生まれるものではない。魂を込めて計画するもの。
・大きな投資
 いいウェディングにも優れたキャンペーンにも投資が必要。
・短期的・長期的な成功をめざすもの

 さて、私は、Brand Purpose(ブランドパーパス)を学ぶためにP&Gを離れて、Brand Purposeの学習のために生涯を費やそうと思っている。

その活動の一環で、最近、The CMO PodcastというPodcast番組を始めた
各業界のCMOをインタビューしているので、とても面白く、毎回学びがある。

各業界のCMOをインタビューする中で、共通しているなと思った部分は、

・大きなアイデアを考える時間を確保する
 例:金曜午後に予定入れずに、アイデアを持ち込みOKにする
・顧客と現場に近くいるための戦略をもつ
・原則を明確化する
・社員のことをよく話す
・Game of Thrones大好き笑

ということ。

自分にとってのコアな原則は、顧客にインスピレーションを与え、カテゴリーにインパクトを与えるブランドの、ブランドパーパスを実現する人のお手伝いをすること。

では、ブランドパーパス実現をうまくやっている会社はにはどんな会社がある?

例:ユニリーバ
持続可能性を実現している、世界をよくするためにブランドを構築している

例:レゴ
子供たちが遊ぶことにフォーカスしてから事業状況がよくなった

たとえば、レゴのCMOの以下のインタビューで、

レゴにとって以下のことが重要だと述べている。レゴのプリンシプル

- 子どもたちのことを深く理解する
- イノベーションを繰り返す
- パートナーに価値を見出し、チームアップする

それでは、逆に、スベった(うまくいかなかった)企業は?

例:日産
重要なのは、誰にも厳しい時はある。大事ななのは、原則に立ち返って立ち返ること。

例:セラノス
パーパスを失ってしまったため、ステイクホルダーを裏切る結果になってしまった。

自分たちの会社はどうだろうか?
自らに目を向けてほしい。どのように自分の時間を費やしているか?
マーケティングリーダーとしてブランドに命を吹き込む存在になっているか?

ブランドリーダーとして常に一貫して行動していく人でない限りブランドビルディングはできない。

ブランドビルディングに成功するための4STEP

ブランドビルダーになるための4つのステップを紹介する。

STEP1:マーケティングの重要性を再認識しよう

まずは、マーケティングを会社のパーパス、目標、戦略においてより重要視すること。

まず初めにやらないといけないのは、以下の5つの質問を自分の会社に対して問うてみること。

・マーケティングはパーパスおよび目標に寄与しているか?
・マーケティングを実行するためのケーバビリティはあるか?正しい教育している?採用している?
・競争優位をどこで確保するか?
・カルチャーとしてリスクを奨励する文化はあるか?言葉だけでなく行動までうつされているか?
・キャリアパスはあるか?組織の中にきちんとしたキャリアパスとしてマーケティングがサポートされているか?

P&GでCMOを担当している時は、その5つの質問にのみフォーカスした。
単純だが、これは重要でマーケティングが会社のゴールとすり合わせれていないことがあまりにも多い。

STEP2:日常業務の中でブランドパーパスをいかす

STEP2の説明に行く前に、まず、ブランドパーパスの振り返りをしたい。

ブランドパーパスは人々に対するベネフィット、ビジネスそのもの。
社員を惹きつけるもの。
創業者の信念が反映されるもの。
顧客や従業員を惹きつける、半永久的な概念。
ブランドパーパスはコーズマーケティングではない。

たとえば、ブランドパーパスの例としては、
レッドブル:心と体を高揚させること
任天堂:生活にエンターテイメントと喜びと楽しさを与えること
ディズニー:みんなを幸せにすること

ブランドパーパスチェックリスト
・ブランドパーパスはカルチャーに沿っているものか?
・インパクトと信憑性はあるか?
・ビジネスリーダーはそのブランドパーパスを受け入れているか?

この評価チェックができれば、ブランドパーパスは成功する。

ブランドパーパスは家に例えられる。

・ブランドが惹きつけたい対象のターゲットは誰か?
・なぜブランドは存在するか?
・ブランドが約束することは何か?
・ブランドはどのように表現されるか?

を上記のような図で表現できる。

パーパスを起動させるためには?そのアイデアは?
- 自分のパーパスを自分の中で自分ごととして内製化する
- 自分の言葉で語れるようにする
- 上から降ってきたものじゃ意味がない

例:レクサス

全員を巻き込むのは相当な投資。何百人に聞きまわる必要がある。自分地震に腹落ちさせることが大事。

例:airbnb
パーパス:誰がどこにいても”Belong anywhere”であること。

永続的にパーパスは残るかどうか?が大事。そのために、ブランドパーパスの評価軸を決めておくこと。

例:レゴの4つのP
Play:遊びがあるか
Partner:パートナーとの関係性は良好か
Peaple:社員がモチベートしているか
Planet:地球環境に対してプラスかどうか

STEP3:独自の共感力を鍛える

大切なのは、顧客への共感。

例:Pampers
パンパースは赤ちゃんにとって何が大切なのかを分かっているブランド。

自分がパンパースのブランド担当をしたとき、当時は業績が悪かった。
一番の課題は、顧客への共感ができていなかったこと。「工場長がボスなんだ」と当時の上司に言われた。お母さんや赤ちゃんには全く目が向いていなかった。

それを全部変えた。

結果、売上規模は3倍に。赤ちゃんの発育という領域における競争優位を得た。また、P&Gのなかでロールモデルとなるような事例にもなった。

STEP4:勇気のあるリーダーになろう

「会社は何度でも甦る」という本を執筆した際に、何人ものCMOのインタビューをもり込んだ。全てのインタビューで失敗やそれを乗り越える勇気について聞いた。

GEでは、失敗に表彰する制度を作った。それらの研究をもとに、勇気リーダーにとって7つの習慣をチェックリスト化した。

サマリー:ブランドが成功するための4STEP

STEP1.マーケティングをより重要視する
STEP2.ブランドパーパスを日常業務に取り入れる
STEP3.共感力を鍛える
STEP4.勇気あふれるリーダーになる

音部さんとのQ&Aパート

音部さん「STEP1のマーケティングの価値向上を実現するためにマーケティングのプロとして何ができるのか?優れたマーケティングプロの定義は?」

ステンゲルさん
①いいビジネスリーダーか?
優れたマーケターは優れたビジネスリーダーだ。
戦略があるか、競合がわかるか、財務状況わかるか、チームマネジメントできるか、などそもそものビジネスリーダーとしてのスキルは問われる。

②強力なブランドビルダーになること
何がブランドの機動力になるのか理解していること。クリエイティブなアイデアを生み出すための問いを立て続けること。

③ 人・タレント性
多くの人の成長に寄与しているか。ブランドパーパスが事業の成長に寄与しなければ長続きしない。

音部さん「会場のなかで、ブランドパーパスがあるよ、という会社の方は?」

(多少手が上がる。)

音部さん「ブランドパーパスを理解する上で、ベネフィットとの違いを理解することが大切だと思う。ベネフィットとパーパスの違いは?」

ステンゲルさん「たとえば、パンパースの例。パンパースのパーパスは、赤ちゃんの擁護者であること肉体的にも精神的にも知的にも赤ちゃんに貢献すること。
一方で、ベネフィットは、商品・サービスで赤ちゃんをサポートすること。ベネフィットはパーパスを具現化するもの。

音部さん「パーパスはブランドの存在意義。ベネフィットは生活者が体験するものということですね」

「もう一つの質問。STEP3の共感力について。そのために何をすれば良い?たとえば、新しいプロジェクトが始まるとしたら、何する?」

ステンゲルさん「まずは、自分の周りで、自分よりも離れた人たちと話をすること。ブランドにとって最も重要な人は?と聞いて出てきた人のなかで、その人たちに1つ質問する。『ブランドが成功するために自分は何をしたらいい?』と聞いてみること。そうすると、だんだんと優先度が見つかるようになる。
2つめは、顧客と時間を過ごすこと。B2Bであれば、一番の上位クライアントと時間を過ごす。B2Cであれば、実際に商品やサービスを使ってくれる人と時間を過ごすこと。数日でも数時間でもすれば、アイデアが溢れてくるはず」

音部さん「Consumer Immersionという言葉を思い出す。顧客の生活の中に自分を置いて、顧客自身の生活に自分が浸ってみる、という顧客理解の一手法のこと」

「それでは、次に、勇気について。勇敢さや勇気は何か、を書籍の中で触れてあったが、勇気は手に銃をもっていることではなく、失敗を許容することだ、と。そのためには、ナレッジや失敗体験が次に生きると見えないといけないと失敗を恐れてしまうと思う。失敗を許容するためには何をすればよい?」

ステンゲルさん「これは、あらゆる企業において課題。しかし、失敗なくしてクリエイティビティはない。一つのアイデアとしては、それぞれの組織の中で少しの予算と時間をクレイジーなアイデアに振り分けてみること。1万ドルくらい。そういった企業風土を醸成することが大切。たとえば、とある大手飲料メーカーでは、イノベーションが足りないという課題があり、CEOがプロジェクトリーダーとなって、アイデアのプロトタイピングをしてアイデアを評価するプロセスを実行した。Amazonも失敗は良しとしている。何かしら顧客の課題を解決するアイデアであれば、失敗を許容する。大切なのは、失敗を許容した上でそれを評価して、活かす仕組みをつくること」

音部さん「失敗を評価するプロセスの立ち上げ、も必要なのですね。最後に、ステンゲルさんの会社のパーパスは何ですか?」

ステンゲルさん「ブランドパーパスという考え方を通じて、さまざまな企業にとってPositiveな媒介になること。続きは夜のパーティーで話しましょう。ありがとうございました」

雑感

マーケティングの仕事に携わっている端くれとして、世界的にもトップマーケターである方のお話を直接聞けたのは感無量だった。「ブランドパーパス」というともすると捉えどころのないが、ビジネスにおいては最重要である概念を、事例を踏まえながら実務家にもわかりやすく説明してもらった感覚。

ちなみに、その後の懇親会でステンゲルさんと直接話す機会があって、フランクに
「お金も人も少ないスタートアップにおいてブランドパーパスは重要か?それはなぜか?」
「経営層ではなく、マーケティングリーダーやメンバーレベルでブランドやブランドパーパスの重要性を感じていて、全社的な取り組みにしていきたい場合、それを経営層に対して説得していくにはどうすれば良い?」
などの質問にも快くお答えいただくことができた...ありがたすぎる...

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