キャリアの形 - マネージメントの考え方
エンタメ業界は、シーンのプレイヤーの入れ替わりが激しい世界だ。
同じ年にデビューしたとしても、3年後、5年後、10年後、それぞれのキャリアの道はみんな違う。
そもそも長く続けること、ロングキャリアを第一線で居続けることは容易ではなく、誰にでも出来ることではない。
僕は自分が関わる子たちには、出来る限り長く活躍して欲しいと思っている。
なので、そのために全力で尽力するが、時の運みたいな、自分たちだけではどうにも出来ない流れもあったりして、キャリアの築き方で悩んでいたことがある。
その時に、師匠の村田さんに相談したら、こう助言を頂いた。
「長く続けること、理想は緩やかな台形みたいなキャリアが作れればだけど、自分たちだけの力ではどうにも出来ないこともあるし、関わるクリエイターによって良くも悪くも望むキャリアは違う。長く続けることは簡単ではないし、それを目指すなら相当の努力をその分長期に求められる。それは辛いよ、という人も中にはいて、1曲がスーパーヒットしたら引退して隠居したいみたいな人もいる。だから、キャリアは年数より面積で考えてみなさい。3年間でスーパーヒットして引退する人と、30年長いキャリアを続ける人と、面積で考えてみたら、もしかしたら同じかもしれないし、どちらかが突出してるかもしれない。どっちのキャリアが望むべき人生なのかは人に依るんだよ。」
面積で考えなさい、というのは、なるほど、この話を聞くまで全く思ってもみなかったことだった。
3年間で作るキャリア面積と30年で作るキャリア面積、その大きさが同じだとしたら、どっちを望むかは人によって絶対に違う。
長く続けること、それは本当に大変で、努力の上に努力を重ね、自分のスキルやテクニックの向上、そしてどんどん発展する時代の中、常に新鮮な感性に新陳代謝しながら敏感に世の中を感じ、作品の切瑳琢磨とアップデートをし続ける。
それは、ずっとずっと自分や世の中と闘い続けるということ。
かなりの欲望と努力、そしてそれを維持する健康とバイタリティがないと簡単には出来ないことだ。
それは長距離マラソンみたく、キャリアのペース配分も考えながら組み立ていかないと、いつか確実に息切れを起こす。
この長距離走みたいな継続が苦手な人も勿論いる。
その場合は走り切れる限りの短距離を全力で駆け抜け、時代の波も味方につけて疾走するキャリアを作る。
相手によって望むキャリアの適切があるので、その子にとってのあるべきキャリアを作ること。なんでもかんでも長ければ正解ではないこと。その視点があることを村田さんから教わり、変な意味ではなく少し気が楽になった覚えがある。
僕だけの視点で言えば、やはり長い台形がベストな考えなので、そこを目指してしまいがちだけど、相手によってその理想形は違う。でも、僕が思うベストな面積と相手のベストな面積が最終的には一緒になるように、自分が関わることでそれが最大化出来るような存在になろうと思えたのは、この時からだった。
あと、キャリア形成は山登りにも似ていると、村田さんは教えてくれた。
麓から始まり、山を登っていったら、いつか頂上がある。
それはピークと呼ばれるものかもしれないけれど、いつまでも登り続けるだけの山は、この世にはないから、いつか頂上に到達することは自然の摂理。
頂上に着いたら、今度は降りるしかないから、それを急降下するか、ゆっくり降りるか、これも相手が何をどう望むかにもよるけれど、ゆるやかに降りる道筋を通れるのが、多分多くの場合、ベストだと思う、という話もしてくれた。
そして、キャリアが山登りに似ているならば、スタッフ、特にマネージャーの役割はシェルパみたいな存在。
世界一の山であるエベレストに登りたければ、優れたシェルパが必要になる。
シェルパの存在なく険しい道を行こうとすれば、大抵の場合、難儀する。
下手すると、エベレストみたいな山だったら、最悪、命を落とすこともある。
マネージャーがシェルパみたいな存在であるならば、ゆっくりでも短距離ダッシュでも関わるクリエイターが進みたい道を選択してガイドしていけるような優れたシェルパに、僕はなりたい。
そのためには、日々勉強し、吸収し、固定観念や経験則に縛られず思考を柔らかく持ち、自分を常に成長させなければいけない。
マネージメントのシェルパ役として、関わる子たちが望む理想のキャリア面積を一緒に追求し、ガイドし、ベストルートを模索していける存在でありたい。
https://twitter.com/Ryota_Shishido ラストラム→TOKYO FANTASY→RED 主に音楽関係のマネージャー 新しい才能との出会いを求めています。 音源やプロフィールはツイッターのDMかinfo@red.jp.netまでお気軽にお送りください!