歩くこと、生きること
毎朝、さんぽをしています。
さんぽ部を結成して五ヵ月。「おさんぽ対話」のカルチャーを広めるべく、雨の日も、風の日も、さんぽをする日々を送っています。朝陽を浴びて、風を感じながら思索に耽る時間は格別です。
そして、この数ヵ月、歩くことができるしあわせを噛みしめています。「歩く」は、あたりまえの行為かもしれません。でも、この“あたりまえ”がいかに有難いものか。それを教えてくれたのは、23才になるビション・フリーゼのトムと義父でした。
トムは数ヵ月前から自分の足で立ち上がることができなくなりました。わたしか妻が持ち上げないと立てない体になってしまいました。23年も生きていることが奇跡に近いので、無理もありません。本当に親孝行の子で、今まで全くと言っていいほど迷惑をかけずに健やかに育ってくれました。尿意をもよおすと鳴いてわたしたちを呼びます。立たせるとなんとかバランスをとりながら自分の足で歩いてトイレに向かいます。それは夜中であっても同じことで、老犬を介護する生活が続いていました。わたしのスペース(音声配信)を聴いてくださったことがある人なら、トムの鳴き声を聴いたことがあると思います。
九月の一週目、東京出張から帰ってくると一目でトムの様子がおかしいことがわかりました。崩れるように後ろ足を曲げて倒れていたトムは、呼吸が乱れていて、床ずれで顔が赤茶けた色をしていました。わたしたちが留守の間、近所に住む妻の親友が面倒を看てくれていたのですが、水やエサ、トイレの世話くらいのことで付きっきりというわけにはいきません。
おそらく、夜中に起き上がることができず一晩中鳴き叫んでいたのだと思います。目が虚ろになったトムを抱きかかえると、体がカンカンに熱く、舌をだらりと垂らしていました。抱えたまま水を飲ませ撫でていると、なんとか呼吸は落ち着いてきましたが、その日からトムは歩けなくなってしまいました。
「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。