坂口恭平展『everyday』──OAG Art Center Kobe──
神戸は岡本まで、坂口恭平さんの個展『everyday』へ行ってきました。
ギャラリーは山を麓、坂の上にあります。建物に入ると空間は穏やかに広がり、自然光とあたたかな灯りが柱や床に溶けているようでした。その空間に、50点もの恭平さんの絵が展示されていました。その様子はとても心地良さそうで、ポツポツという雨音とも調和して、そこに在ることの詩的な佇まいを味わえた貴重な体験となりました。
パステル画が展示された空間で、恭平さんは一つの作品のように椅子に腰かけていました。リラックスしたムードで、来場者の人たちとお話をしています。互いの穏やかな呼吸は、この空間にふさわしい音楽のようでした。
わたしもご挨拶させていただきました。束の間の対話の時間。ストンと落ちずに鬱の縁辺を低空飛行している感覚。恭平さんにとってもそれは未体験であり、それは何か新たな創出の前触れでもあるかのようでした。宙に浮いた飛行のようでもあり、海底を潜水しているようでもある。その中で、恭平さんは何を思索し、模索するのか。
音楽のこと、ことばのこと、「歌は忘れない」、発見とは眠った記憶を呼び覚ますこと、先人の傷を癒す表現。次から次へとことばをカタチにするごとに展開してゆくイメージと、そこから生まれる新しい問い。やわらかい恭平さんの声とことば。「掘る」というよりも「撫でる」ように記憶の中から、新しい種が発芽するのを誘発する営み。これもまた音楽です。
楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。恭平さんの絵画を、展示された空間を、そして“坂口恭平”を鑑賞する贅沢な時間。
思索と模索の旅は、恭平さんをどこへ連れてゆくのでしょうか。春が訪れた時、熊本に会いに行きたいです。
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また、恭平さんと対話ができるとうれしいです。
少しずつ、書き残していきます。