ベンチャーCTOがイギリスで10日間ワーケーションをしてチームの「バス係数」を考える
こんにちは。
新規事業開発を推進する80&CompanyのCTOを務める大川です。
先日、Glastonbury Festival(グラストンベリーフェスティバル) という、規模や名実ともに世界最高峰のイギリスのアートフェスティバルにいってきました。そのフェスティバル(5日間開催)に合わせて、前後5日間の合計10日間のイギリス滞在。
イギリス滞在中は隙間時間でホテルやカフェで仕事をしつつ、フェス開催期間中も定期的にSlackをチェック。日本との時差は8時間(サマータイム)のため同期的なコミュニケーションは難しかったのですが、何本かオンラインMTGもこなしつつ、大きな問題なくワーケーションを満喫できました。
社内からも「よく10日間も休めたものだ」と驚き(?)の声も上がっていたので、休むために心がけていた「バス係数」というものをお話ししたいと思います。
はじめに
私が務ている80&Companyは、2022年12月現在会社規模は社員+役員で約50名、常時協働する業務委託のパートナーを含めると100名、プロジェクト数は20-30程の規模のベンチャーです。
会社のフェーズは所謂第2創業期であり、私はいくつかのプロジェクトを進めながら組織の仕組みづくりに勤しんでいるのですが、その中で最近よく意識してるのが「バス係数」と言うものです。
バス係数とは?
Team GeekやGoogleのソフトウェアエンジニアリングなどの技術書でもよく紹介される言葉ですが、バス係数とは「 チームのメンバーがバスに何人轢かれたらそのチームが破綻してしまうか?」というシンプルな係数です。
例えば、PM、テックリード、バックエンドエンジニアなど、どのポジションの人が1人でもバスに轢かれた場合にチームが破綻するなら、そのチームのバス係数は「1」となります。この数値が高い程、ロバストネスが高いと言いますか、トラブルが起こっても相互に助けあえてチームが止まらない、健全な状態であると言えます。
チームのバス係数が低いと、例えばメンバーが体調を崩した場合やメンバーが抜けた場合にチームやプロジェクトが破綻してしまいますし、そのような状態では休暇もまともにとれやしません。
バス係数と同じような意味では、単一障害点(SPOF:single point of failure) = バス係数が「1」という言葉も使ったりします。
(例:PMの誰々さんがSPOFになっている)
チームのバス係数を高めるためには?
手っ取り早いのは実際に休暇をとってみましょう。笑。
というのは冗談ですが、、
もし今自分が休んだらチームやプロジェクトが破綻してしまう、、と思うならば要注意です。このようなご時世ですので急に誰かが体調を崩すことも実際にありますしね。。
バス係数を高める主な対策としては次のようなことが考えられます。共通することはチーム内の属人化された業務や知識を減らすことです。
1. 知識やナレッジを明文化してwikiにまとめる
言わずもがなですがwikiの整備。そして小まめにwikiをメンテすることを心がける。情報はすぐに古くなっちゃますしね…。
2. プロセスを整備して運用する
こちらも同様に言わずもがなですが。人によるマネジメントがなくても業務が回るように業務や開発のプロセス・運用フローを決めておきましょう。
3. 体制や役割分担を明確にしておく
小規模なチームならまだしもクライアントや部署を超えてのやり取りが発生するチームでは特に必要なことですね。誰に何を聞いたら、誰に何をお願いすればいいかは明確にしておきましょう。
4. リーダーの権限や役割を移譲しておく
サブリーダーの役割を決めて権限を移譲しておくのももちろん、リーダーが不在でもスムーズに意思決定ができるように合意形成のプロセスも決めておきましょう。
5. モブワークを習慣化する
最後に、業務範囲が属人的にならないようにwikiに情報を溜めることはもちろんですが、モブワークなどで普段から自分の業務範囲以外の業務に触れて経験しておきましょう。経験しておかないと、急に普段とは違う業務を任せられてもwikiやドキュメントにある情報を探すのに時間がかかったり、そもそも情報辿り着かないこともあったりします。また、トラブル対応や緊急リリースを急に任せられても不安にならないようなメンタル的なケアも兼ねて。
定期的にバス係数を確認しよう
バス係数を高めるための準備には相応の時間がかかります。
普段からwikiやプロセスの整備やモブワークなりで作業を属人化させないことを意識して仕事しておかないと、休む直前になっても十分な引き継ぎは行えません。長期休暇をとる前日にバタバタと夜遅くまで引き継ぎ作業をする経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。私はあります。。
リスクマネジメントにもなりますが、チームやプロジェクトの定期的な振り返りでリーダーやマネージャーのポジションも含めて属人化していない業務がないかを確認するなど、バス係数の確認もプロセスの一環とするのがいいと思います。
自分がいないと回らない業務は何か?
他のメンバーに業務を引き継ぐ為に不足していることは何か?
情報か、人的リソースか、プロセスか?
はたまた引き継ぐための準備をする時間か…
チームで解決できない場合は経営側へアラートを
wikiやプロセスの整備やモブワークなどコミュニケーションはチームやメンバーの責務でもありますが、そもそも属人化を解消する為の引き継ぐ相手もいない状態はチームを超えた上長や経営側の責任でもあります。そのような状態に気づいた時は上長や経営側に早めにアラートを出しましょう。
実際に休んでみてどうだったか?
今回の私の場合、10日間も休むことは半年前にはわかっていたので、2-3ヶ月前から徐々に社内外の関係者に周知したり、プロセスなりを事前に準備していたこともありほとんど問題は起きませんでした。一方で、実際に休んでみてから気づいた整備されていないプロセスもやはりありました。
あとは局所的に負荷がかかってしまった人もいました。
(ありがとうございました🙏)
それも学びとして、誰かが積極的に長期で休めること、そのことがきっかけででもチームや組織のバス係数が高くなっていくことは健全な組織かなと思っています。
もちろん、長期休暇をとれるかはプロジェクトの状況にもよりますので、頃合いをみて交代でうまーく休みましょう。
ベンチャーは長時間労働が当たり前?
以前Twitterかどこかで話題になっていましたが、ベンチャーやスタートアップは長時間労働してナンボだという話。
現実問題として、ベンチャーだからといってどうこうという話ではなく、雇用側と従業員は対等な力関係にあるわけではないので労働時間について希望が通らない人が多数いるということがあるのではないでしょうか。
また、長時間労働でもパフォーマンスが出続ける人もいれば、適度に長期休暇を挟むからこそパフォーマンスも出る人もいますので、長時間労働したい人・できる人"だけ"がそうできるようになればいいなとは思っています。ただ、そのような人はベンチャー関わらず少数派かもしれません。
そう考えると、ベンチャーといえども長時間労働を前提とした資金計画や、やりがい搾取のような動員方法はいずれ破綻して長く続くものではないのではと思います。
おわりに
別の記事でも言及しましたが、余暇の時間も大切です。
個人個人に合った、今の時代に合った、パフォーマンスが最大化される働き方を追求できる会社が増えるといいですね。
おまけ
グラストンベリーフェスティバルの様子はInstagramにも載せています。大袈裟に聞こえますが人生観が変わるフェスティバル。私と一緒に参加した友人、先人の方々やメディアの記事もご参考くださいませ。