#18 YOASOBIを生んだのはボカロではない。
24/12/11: 900 views達成!皆様ありがとうございます!
好評につき一部リニューアルしました。
YOASOBI。このグループにすごく惹かれる自分がいる。デビューした時は、ボカロシーン・歌い手シーンの派生、進化系として登場したと認識されていたと思う。「夜に駆ける」のMVがいわゆる「リリックビデオ」な感じだったのも相まっている。この段階では、僕も「流行りものの一つ」だと思っていて、あまり注目していなかった。
「夜に駆ける」には視聴制限がつくんですね…!
(夜に駆ける/YOASOBI)
ずっと真夜中でいいのに。やヨルシカ含めて、一体化したムーブメントだと思われていた節もある。彼らもまたYOASOBIとは全然違う出自を持ったJ-POPアーティストだとは思うけど、その話はここではしない。
ここまでの彼らの活動を見ていて、YOASOBIの源流はボカロシーンではないことを、みんな薄々感じているのではないだろうか。オシャレな音楽という認識も部分的には間違っていないと思うけど、もっと近いものがあるんじゃないかと思う。例えばPerfume、Capsuleとかの突き抜けたアーティスト性とはまたちょっと違うんじゃないかと思う。
ちょっと考えてみたい。
YOASOBIと過去に最も近かったグループは、なんだろうか。
演奏時のAyaseさんの立ち位置がとても小室哲哉っぽいので、Globeとか。
男女2人組の系譜で言うと、ELT?ドリカム?やっぱりCapsuleなんだろうか(これはこれで正解だと思います)。
…だいぶ近づいて来たが、ここで名前を挙げたいのは、「いきものがかり」の2人である。このブログは「YOASOBI = いきものがかりの正当後継者」説を簡単な考察から進めたい。
Ayaseの曲
YOASOBIの最大の個性は、兎にも角にもAyaseさんの作る曲にある。
正直、2人のパーソナリティというのは、YOASOBIの活動からは極力排除されている。あくまでプロモーションのために、ちょっとそれぞれ違った地雷感のある(?)可愛らしい2人が出て来てますよ、というだけに過ぎない。まずルールとして「小説」を歌詞にしなければいけないという十字架(?)を背負っているので、自分達が表現したい日々の鬱憤を歌詞にしたりすることも出来ない(そういう時はYOASOBIの屋号は外すみたいですね)。
僕が思う彼の作風は端的に言うと、
「"王道進行"のバリエーションに挑む作曲家」だ。
「王道進行」ってなーに、という解説&紹介は、このブログが出来るきっかけでもある"basement-times"(色々あったけど僕はめちゃくちゃ好きだった)の記事を参照頂きたい(是非ずっと公開しておいて下さい、谷澤さん&石左さん…)。
改めて考えると王道進行の出てこない曲の方が珍しいというほど、J-POPで超お馴染みの進行。特徴を簡単に言うと「明るい、暗いの境界をうろうろ出来る」進行(Basement-timesでは「ロビンソン」を挙げているが、より初学者向けだと思う例は、「君はロックを聴かない」のサビのあの感じです)。
YOASOBIのアルバムを一聴してビックリしたのは、もうとにかく全曲が王道進行の目白押しなのだ。確かに彼らの曲をイメージすると、「明るいのか暗いのか」という絶妙な所を行ったり来たりするイメージがないだろうか。
「夜に駆ける」は王道進行とJust the two of us進行(丸の内進行)のループ感あるミクスチャーだ。
「群青」はビートを落とした王道進行でサビを展開。
「怪物」はリフはメタル調のマイナーコードで、サビだけで王道進行の、昔のゲスの極み乙女。的な曲。
コレコレ。なんか嫌いになれない。
(パラレルスペック/ゲスの極み乙女。)
彼にとって最も作りやすい曲調は「ハルジオン」や「三原色」なんだと思う。てらいのない王道進行。
もう一生分王道進行と言った気がするが、彼が意図的に王道進行をやめようと(とはいえ一部では出てくるのだが)して書いているのが「もう少しだけ」という曲だと思う。たしかにこの曲は基本メジャー調、明るい雰囲気がキープされている。
Have a nice day.
(もう少しだけ/YOASOBI)
そして遠回りはしたが、この王道進行の使い手、以前はいきものがかりであったと思うのだ。
「気まぐれロマンティック」は一見すごく明るい曲なんだけど、フレーバーのように王道進行を潜り込ませた名曲だと思う。
なぜか大学時代のカラオケ定番曲だった
(気まぐれロマンティック/いきものがかり)
一方でいかにも!な王道進行がデビュー曲「SAKURA」である。この頃の曲調、YOASOBIっぽくないですか?(「HANABI」とかも)暗いか明るいか、印象が行ったり来たりしますよね。
(SAKURA/いきものがかり)
Ikuraのボーカル
幾田りらのボーカルは、速い節回しを跳躍の多いメロディで歌うYOASOBIの曲だと隠れがちだが、めちゃめちゃストレートである。最近発表された新譜の、東京スカパラダイスオーケストラとの客演を聞くと一目瞭然。
後半めちゃくちゃな譜割りが面白い
(Free Free Free feat.幾田りら/東京スカパラダイスオーケストラ)
参考記事↓
まさに、いきものがかりボーカル、吉岡聖恵さんのような、伸びやかな発声じゃないでしょうか(どうでも良いんだけど関ジャムでやっていた「上手い女性ボーカリスト」のような特集に、miletさんとかアイナ・ジ・エンドさんとかが呼ばれるのは良いんだけど、なんで聖恵ちゃんのようなボーカリストが呼ばれないのか個人的にはやや疑問である)。いきもの初期アルバムによく収録されていた、歌謡曲風の曲群によく似ている。
彼女が以前所属していたグループ「ぷらそにか」でのカバーを聴いてもよくわかる。
「君はロックを聴かない」のカバーがすごく好き
あと、顔もちょっと似ている(…)。
まとめ
と、いうことで、重要な点をまとめると以下である。
YOASOBIはイメージ以上にJ-POPの真正面から切り込む「いきものがかり」の後継者的存在
Ayaseの作る曲はイメージ以上に「王道進行のバリエーション」の追求が徹底されている
Ikuraのボーカルはイメージ以上にストレートで伸びやか
Ikuraと聖恵ちゃんはイメージ通りちょっと顔が似ている
そしていきものがかりはきっと、ドリカムの後継者的存在なんだろうなぁと、「未来予想図II」の素晴らしいカバーを聞いた時思った、という話で締めたいと思います。一貫して「過去」扱いして申し訳なかったですが(主に文章の流れのためです)、僕は彼らも大好きです。念のため。
(未来予想図II/いきものがかり)
関連記事: