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#16 歌詞カードの解説文を書く仕事につきたかった。
子どもの頃妙に惹かれていたものに、「プロ野球選手名鑑」というのがある。
プロ野球選手名鑑とは
プロ野球は個人成績が重要なスポーツだ。それをなんとなく眺めてはあーだこーだいうのが楽しい。そんな時に役立つのが野球名鑑。ポケットサイズで、シーズン開幕前に各社が発売する。子どもの頃、あそこに書いてある紹介文がなんとも大好きでした。できれば選手名鑑の紹介文を書く仕事につきたかった。
例えば、2022年のプロ野球カラー名鑑、坂本勇人の紹介文はこんな感じ。
名実ともに球史に残る遊撃手は華麗なプレーで魅了
坂本みたいな選手は、タイトルで結構欄が埋まっちゃうのでこれしか書けないんだな〜。ここだけ読んで誰かを当てるという遊びを友達とやってた記憶もある。
子どもの頃もう一つ好きだったのが、「歌詞カードに載ってる全曲解説」。これを書く仕事にも就きたかった。
歌詞カードに載ってる全曲解説
専門用語では「ライナーノーツ」と呼ぶ歌詞カードに載っている全曲解説。これが如何に贅沢なものか、大人になるまでよく理解していなかった。
その出会い、大きいきっかけは、小学生の時、東京駅の大丸デパートで買ったミスチルのベスト、「1992–1995」と「1996–2000」。
このベストのライナーノーツを書いたのは、小貫信昭さん。最近、小貫さんの書いた「Mr. Children 道標の歌」という本が発売された。
(むしろこの本を読んでいて、「あれ、もしかしてベストの解説文を書いた人か...?」と思い調べ直した)
今回は話さないが、尾崎豊のトリビュートアルバム「Blue」のライナーノーツもすごく素敵。
こちらを書いたのは、尾崎豊のプロデューサー、須藤晃さん。各曲のミュージシャンに依頼していく経緯などがたっぷりと語られている。
Mr. Children Bestの小貫さんの名解説
それでは、選手名鑑と同様に、以下のライナーノーツが何の曲を指した文章かあててみましょう。答えは最後に。全てライナーノーツの締めの一文を抜粋しています。
まず、例題。
「顔のわりに小さな胸」といった、独特な女性観による桜井の詞は、他の追従をまったく許さない領域に。
これは「Over」。この歌詞を特に否定も肯定もせず、独創的だという一点で書いているのは素晴らしい。
シングル曲は必ず売上枚数が書いてある。さすがCDが売れる時代。
タイアップからヒットが生まれる時代なのに、その申し入れは一切なし。にもかかわらず、94年12月12日に初登場1位を獲得。136万枚をセールス。
豆知識系も好き。
バンドの絆を確かめ合うようなPVも感涙モノ。この曲のみ入った定価500円CDの形で96年4月10日にリリースされ、初登場1位。175万枚のセールスを記録した。
アルバム曲はやや情緒的な解説に。シングルと違って、各曲に対して売上情報がないからか。
まさに桜井の、バラード・マスターとしての風格を感じる出来ばえだ。曲が終わった後の、余韻こそが御馳走だ。
なんとなく、野球名鑑の文章と似て、数値情報と豆知識のミックスが妙に落ち着くこの文章。その後のミスチルのベスト「micro」「macro」でも受け継がれたのだが、続く「2011-」のシリーズでは無くなってしまい残念だ。では、最後に答え合わせをどうぞ。
答え:順に「Everybody goes」、「花」「つよがり」。