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#19 19回目なので、19という2人組を振り返る。
わざわざ数えなくても良い19回目の連載は、是非彼らの話がしたいと思っていた。19(ジューク)。数字の表記だけでも良いのだが、「19歳で出会った」という由来の他にJuke Boxの「Juke」という意味もあるらしい、という話も聞いたことがあるので、個人的にはカタカナ表記がしっくり来る。わかりやすさを重視して本文中は19と表記する。
出会い
正確な時代考証も知りたいとは思うけど、今回は個人的な話から始めたい。19がデビューしたのは99年だそうなので、その頃自分は8歳。以前、相席食堂で千鳥の2人が「19は自分達の青春」のような話をしていたので、多分10歳くらい上の彼らがちょうど19歳くらいで、デビューしたという訳だ。
はじめて19を好きになったのは「足跡」というシングル曲。「あの青をこえて」や「あの紙ヒコーキ、くもり空わって」に比べるとやや暗い印象の曲だが、今思うと小室進行の3連フォークなんてめちゃめちゃ熱い曲だなあ、と思う。当時やっていた音楽番組(多分「歌の大辞10」)で聴いて好きになった。作曲はイワセケイゴ。この頃から今まで、僕はどちらかでいえば「ケイゴ派」である。
解散後から追い始めた
本格的に聴き始めたのは多分中学生の頃で、「19が解散した」というのはなんとなくわかった上で、「19 青」「19 春」というベスト盤を借りるところから始めた。
次にオリジナルアルバム。3枚あって、どれも大好き。1st「音楽」を聴いた時は、ナレーションが入ってくる斬新さとか、ええ、19って3人組だったんだとか、色んなことに驚いた。今思うと、健治とケイゴが最も「デュオ」として輝いていたのは、例えば「音楽」に入っている「恋」のような曲である(作曲は健治)。326(ミツル)の書いた歌詞が、当時中学生の僕の恋愛観にめちゃめちゃ刺さった。
「ぼくだけ。」といつも信じてみたけれど そうでもないみたい(笑)
うすうすどこか 気づいちゃ いたけれど 「やっぱり...ちと、ツライ.」
とんでもなく2000年代な歌詞である。ガラケー全盛期。
懐かしトピックとして、彼らのインディーズ時代(「少年フレンド」という名前)をまとめたアルバム「18〜卒業ライフは入ってない〜」というのもあった。覚えている人はおられるだろうか。
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「up to you」の衝撃:音楽性の違い
2ndの「無限大」で最も衝撃だったのは、この時点で既に326はメンバーではなくなり、「Special Thanks」のところに大きく「326」と書いてあったことである。たった1年の間に色んなことが変わり始めている。
そして、なんといっても3rdアルバム「up to you」だ。
健治とケイゴ。そして326。彼らはそれぞれ、自立したアーティストだった。今思えば解散はいたしかた無いことなのかもしれない。その「解散の匂い」、よく言われる「音楽性の違い」が、あまりにも濃厚にパッケージングされたのがこの「up to you」だった。
健治はその後「3B LAB.★」というバンドで活動する。そのことは未来人視点では知っていたのだが、なんと「up to you」の健治作曲の曲のいくつかには、既に編曲の部分に「3B LAB」がクレジットされているのである。解散の匂いが濃厚になってくる19のラストアルバムで、既に次のバンドが本格始動しているのだ。
言うまでもないが、3B LABはケイゴの曲には参加していない。それぞれが作る曲によって、サポートミュージシャンが全く異なるのだ。ビックリすることに、お互いの声が入っていない曲も多い。
この曲なんかはいかにも当時流行っていたテクノロックという感じで、なかなか良い曲だと思う。申し訳程度にコーラスを歌うケイゴを見ることが出来る(明らかに別録感満載のコーラス、多分音源でもケイゴなんだと思う)。
「up to you」の衝撃:シングル曲とのギャップ
衝撃はまだまだ続く。特にこのアルバムのハイライトとも言えるのが、後半ケイゴのその後のソロキャリアを予感させるような、非常に濃ゆい楽曲、「コッツウォルズ」だ。
このライブ映像では、健治はハードなギターでケイゴの曲に参加
2年前の「恋」のあの感じはどこにいった、今思うとこの感じは非常に理解できるのだが、当時は「怖っ」が先立ってしまい、なかなか受け入れられなかった。
なんとこの「コッツウォルズ」の次が健治作の爽やかなシングル曲、「背景ロマン」である。
今聴くとLa'sの「There She Goes」を参考にしたのかな、と思う
シングルなので当然、ケイゴも歌う。これが終わると、歌詞カードに「手を上へ、胸に愛を…」しか書いていないという衝撃作「毎週火曜日」が始まるのだ。もう二重人格もいいところで、リスナーの感情はぐらんぐらんである。
そしてソロキャリアへ
この「up to you」は個人的には「日本の"アビー・ロード"」だと思っている(最近Disney+のドキュメンタリー映画、「Get back」を見てその思いを強めた)そういうネタ的な視点抜きにして、2人の独立した才能が爆発した名作だと思う。
ソロキャリアについて詳しくない部分も多いのでまたいずれ書きたいが、
当時は「健治はロックに、ケイゴはなんか暗い感じに」というイメージだった。改めて、誤解を恐れずにちょっと簡単に言ってしまうと、
「健治は(とてもとてもキャッチーな)メロコア路線」「ケイゴは(あまりにもメロディが美しい)シューゲイザー路線」へ行ったということが出来ると思う。
なぜフォークをやっていた彼らが、と振り返れば思うが、当時流行っていたフォークも、メロコアも、シューゲイザーも、元はと言えば「シンプルなメロディ・コード進行」という点で共通している。全てカウンターカルチャー的な側面が強くて、ある意味、派生ということが出来ると思う。
なかなか長いこの記事の最後に言いたいのは、19の2人は今でも積極的に様々な活動をし、姿を表している。健治の曲は、初期曲も含めてサブスクで意外なほど聴けるので是非。個人的に「ケイゴ派」の僕としては、いま彼がYouTubeにアップした「おうちライブ」の素晴らしさをあげたい。
この「19 holoday」は、名曲「あの青をこえて」のソロバージョンから始まる。あの頃19と青春を過ごした大人達は是非観て頂きたい。
参考:こちらの方のブログ