夏の夜にただひとり取り残されて
ああ、どうしてだろう?
何をしていても、誰かと一緒にいても、君のことだけが頭から離れない。
これは恋なのかもしれないと思い始めた夏の夜。まるでラムネみたいに透き通った感情に嘘はなかった。
自分では恋だと認めたくなかった夏の夜。何が何だかわからなくなって、どうしようもなくて。どこにも止まり木を見つからない感情だけがただ暴れ出す。
この感情が恋だと認めてしまえば、私の負けになってしまう。恋は惚れたもん負け。でもあなたになら負けてもいいかなって。少しだけ思う時もあるの。
どうやっても報われない恋。相手には恋人がいる。恋人しかライバルはいないけど、相手から横取りする勇気は今の私にはない。
ねえどうしてそんなに嬉しいそうに恋人の話をするの?
なんで私の話をしてくれないの?
あなたに会う前に切った髪に気づいてよ。
あなたの話を聴くのはあなたのそばにいたくて、あなたの顔が見たくて、あなたの声が聴きたいからなのよ。ねえそれぐらい気づけよ、ばか。
行き止まりの思いは報われることがない。まるで道に生えている雑草みたいに誰にも気づかれない。あなたに気づかれないこの思いは報われないのならもはや無に等しいからいっそのこと出会ったこともなかったことにしたい。
恋は報われると素敵なものになる。でも報われない恋の方が世の中に多い。
恋をすると女の子は美しくなる努力をするし、男の子はかっこよくなる努力をする。でもあなたのために可愛くしたところでなんの意味もないから、
この思いは一方通行で、あなたの元に私の思いが届くことなんてなかった。
近づけば近づくほどわかる距離感。恋とはほど遠くて、それでもあなたの側にいたくて。
それでも少しだけ希望を持たせてくるから、淡い期待を寄せてしまうんだよ、もうばかみたい。
2人で飲んだ夜。少しカラフルなカクテル1杯で酔っていた君。慣れないグラスを片手に氷を揺らす君。かっこつけてるみたいだけど、格好良くなんてなかった。
普段はお酒なんて飲まないくせに、私の前ではお酒は飲む君。自分に酔っているんだろうか?それともお酒に酔っているんだろうか?
グラスに付いた水滴がポツリと落ちる。私の思いがあなたへとポツリポツリと近づいていく。そんな思いとは裏腹に決して届かない星みたいな存在の君。
手を伸ばせば届きそうな距離。でもその願いは叶わない。
汗をかいたグラスは私の感情を映しているようだった。刻一刻と流れる時間に焦りと戸惑いを隠せない。
一生このまま時間が止まればいい。それでも刻一刻と迫り来る終電時刻。
帰りたくない、ずっと一緒にいたいと思える夜だった。
でもどうせ君はあの子の元に帰ってしまうから、それなら最初から期待なんてさせないでよ。
夏の夜にただひとり取り残されて。
空に流れる月を見て、君はひとり今何想う?