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なんの変哲もない穏やかな週末
週末、特に予定もなく、お昼過ぎまで寝ていた。顔を洗って、ご飯を食べる。洗濯機を回して、バルコニーに洗濯物を干す。猫が窓越しにこちらを眺めている。何を思っているのかはわからない。一つわかるのは、外に出してもらいたいわけでないということだ。我が家の猫は超がつくほどのビビりだ。インターホンが鳴るたびに物陰に隠れるし、大きな音に過剰に反応しては尻尾を下に下げながら足元に擦り寄ってくる。
そんなビビりの猫だが、時々めいっぱいの勇気を絞ることがある。突如生み出されるあの勇気は一体どうやって生み出されているのか。猫の思考は読み取れない。本音を知ることはできないのが残念だ。
猫は家の住人がバルコニーに出るたびに、自分も出たいと声を上げていた。そして、これまでも数回窓の向こうに行こうとしたことがある。ある日、バルコニーへ出ようと勇気を振り絞った猫が尻尾をぶんぶんと振った後に、全速力で窓をめがけて走ってきた。それを阻止しようと窓を閉めると、なんと猫は窓に挟まれてしまったのだ。何が起きたのか理解していない猫は大きな声で鳴いて、こちらに助けを求めていた。すぐさま窓を開くと、猫は寝室逃げ込んで、そこから出てこない。近くに行くと、体が震えている。申し訳ないと思った。だが、外に出て危険な目に遭うよりは幾分かマシだとも思った。
振り絞った勇気は実を結ばず、それ以降猫は窓が開くたびにどこかに隠れるようになった。自業自得と言えばそれは事実なのだけれど、可哀想だとも思った。もちろん誰かが悪いというわけではない。我が家はマンションだ。猫がバルコニーに出てしまうと、下に落下する可能性もある。猫の命を守るために取った行動だ。そして、猫もただ好奇心に従っただけである。命を守りたいと願う気持ち、好奇心に従った行動の結果が、猫が窓に挟まったという結果を生み出した。
あの日から数ヶ月間は窓が開く音に敏感になっていた。窓が開くたびに、一目散にどこかに隠れてしまう。大丈夫だよと声をかけなければ、姿を見せない。そんな猫を可哀想だと思うと同時に、たまらなく愛しく思う。最近はどうでも良くなったのか、窓のドアが開く音を聞いても何食わぬ顔をするようになった。だが、もう外に出たいと思わなくなっている。猫にとっては大きな失敗談だが、命を守るという点で言えば、外に出たいという好奇心が生まれなくなったことは安心材料の一つになったのも事実だ。
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