君のウソ、私のホント
嘘をつく君の仕草はいつも特徴的で、それが嘘だってことを見抜くのに、大して時間はいとわなかった。
君が嘘をつく時のわかりやすい仕草。君が嘘をつく時は決まって私の顔を見ない。何が本当で、何が嘘かなんて君の目を見ればすぐにわかってしまう。
夜の街。都会のネオンがやけに眩しくて、どこに行っても暗闇とは出会えない。別れたときぐらいは真っ黒にして欲しいものだけど、そう簡単にはいかないところが恋と似ているね。
月が沈む。月と同じようにして私の気持ちも沈む。沈めば沈むほど君の心がわからなくなって、でもズブズブに溺れていく自分がやけに醜くて、君の手のひらで上手に踊っていたあの頃の私が好きだった。
諦めきれなかった純情。最初は終わりを予期しなかった恋。今ではもう終わってしまった2人の愛。
始まりは偶然に。そして、儚くも終わりは唐突に。
些細なことでの衝突の連続が終わりのベルを告げる。
君といたという事実。でも君の手のひらの上で最後まで上手に踊れなかった私の負け。いつから君の好きという感情は嘘になってしまったんだろうね。
恋は追いかけると上手くいかないというセオリーにまんまとはまる始末。セオリー通りいかない恋の結末に納得がいかず、行き場のない思いだけがただ募る。
決して上手くない嘘で騙して私を踊らせる君。私を踊らせる嘘が一生続けばいいなって本気で思えた人生最初の大恋愛。でもできれば嘘を本当にしてみせたかった。
運命の赤い糸。小指に括りつけられた糸をいくら辿っても。君の元にはたどり着かなかっただけの話。運命の人は君じゃないなんて言葉は君には使いたくなかった。
私の本当は君にとっては迷惑な話で、2人が離れるのにはただそれだけの理由で十分だった。
君のウソ。私のホント。
私は君の嘘に溺れて、君は私の本当に苦しんだという悲しい結末。
終わるに値する恋だった。盲目的な恋だった。運命的だと信じたかった恋だった。
でも終わってしまったという事実だけが今は残る。終わってしまった恋路の焼却はどこにお願いすればいいの?
いっそのこと燃やしてしまいたい2人の写真。いつまでも色褪せず笑顔の2人が横に並ぶ。
さようなら、1度だけ愛した人。
いつかどこかでお会いしたならば、もう一度運命の赤い糸を手繰り寄せてみせるから。
大丈夫、私はきっと弱くない。
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