吾輩は人間である
吾輩は人間である。名前はサトウ。大阪で生まれた。愛する猫のために毎日文章を書いている。
あまりにも原稿が進まないから、どうしたものかとパソコンの前でずっと睨めっこをしている。このまま原稿を書けなかったら、きっと正気を保てなくなってしまう。時計の針は22時を指しており、もう5時間も悩んだのかと、正気を保つのに必死である。
どんな月曜日もいいスタートダッシュを切りたいものだ。月曜がだめだったら、1週間がすべてだめになるような気がする。とはいえ、締め切りにはまだ時間があるため、原稿が書けないからといって憂鬱になる必要はないのだけれど、締め切りに追われる生活から逃れたいとずっと思っている。
どうせなら締め切りを追いかける余裕を持ちたい。締め切りに間に合わせることができるのであれば、締め切りを追うこともできるはずだ。作業自体は同じなのだから、ダラダラする時間を減らして、締め切りを追えばいい。頭では簡単に理解できる。けれど、それを実践するのは難しい。いや、難しいと思っているだけで、実践していないのが事実だ。
あまりにも原稿が進まない。進捗は30%程度である。もしかするとお腹が空いているから頭が冴えないのかもしれない。きっとそうだ。思い切って晩御飯を食べることにした。茄子ともやしとピーマンとお肉を炒めたもの、ほうれん草のおひたし、サラダを食べる。お腹が満たされて、胃の機能が効果を発揮していることが手に取るようにわかった。
さあ、原稿を書こうとパソコンを開ける。困ったものだ、突然睡魔がやってきた。そういえば今日の夜からこたつを出した。猫はこたつで丸くなるという歌がある。あの歌のとおり、こたつに入った猫が一度も出てこなくなった。こたつの布団を捲ると、すやすやと寝息を立てている。飼い主が原稿で悩んでいるにも関わらず、うちの猫はお構いなしだ。
たまにうちの猫になりたいと思う日がある。生きているだけでご飯が出てくるし、誰にも脅かされない安全な寝どころもある。鳴き声さえ聞かせれば、ある程度の要望を聞いてもらえるし、猫は自分の意のままに生きている。飼い主の邪魔をすれば怒られることもあるけれど、どれだけ寝ても「静かにしていて偉い」と褒めてもらえるのだ。羨ましい。1日だけ猫と入れ替わって、意のままに生きてみたい。
だがしかし、吾輩は人間である。名前はサトウ。大阪で生まれた。小愛する猫のために毎日文章を書いている。
さて戯言はこの辺にして、目の前の原稿と向き合おう。今この文章を書いている理由は、あまりにも進まない原稿からの現実逃避を行うためだ。愛する猫のために原稿を書く。それが飼い主が果たすべき使命なのである。