「なんとかなる」を盲目的に信じたい
今日は難病の定期通院だった。月に1度の定期通院。もう1年半近く病院に通い続けている。いつも通り消毒と検温チェックを済ませ、受付へと向かう。最初は知らない顔だらけだったのに、いまではもう知っている顔がずらりと並び、すっかり常連客になってしまった。
「サトウさん、こんにちは。今日のお洋服がめちゃくちゃ可愛いですね」
顔見知りになった年配の看護師さんから声がかかる。これが恋愛に発展するやつだったらどれだけ良かっただろうか。そんな確率は1%もない。昔からなぜか年配の方からのウケはとても良いのだが、どうせなら若い人にもモテたいものだ。
おっと、本筋が逸れてしまった。受付を済ませ、いつも通り視力検査がはじまる。
右目はすぐにパスしたが、問題は左目である。左目はいまほとんど見えていない。視力検査もいつも相当時間がかかってしまう。看護師さんに申し訳ないと思って罪をすると、「これが私たちの仕事なので、気にしないでください」と返ってくる。
仕事なのは重々理解しているが、それを言葉として相手に伝えられるその優しさに少しだけホッとしてしまった。視力検査が終わり、眼圧のチェックがはじまる。
左目の眼圧は低いが、左目の眼圧が高すぎる。担当医に瞳孔を開く目薬をさしていいかのチェックが入った。いつものことだからもう慣れている。無事目薬を差してもいいことになったので、看護師さんに目薬を差してもらって、待合室にて診察を待っていた。
「サトウリョウタさん、診察室にお入りください」
診察がはじまる。緊張のあまり手に汗が滲む。1度深呼吸してから診察に入った。眩しいライトを両目に当てられる。両目を担当医にじっくり観察され、担当医が「右目の眼圧が高すぎて、このままだと手術入院になります」と言った。
その途端、頭が真っ白になった。「冷静になれ」と心の中でじぶんに言い聞かせる。焦りは無くならないが、担当医の話を聞くぐらいならできる。さあ、心の準備はできたぞ、どんと来い。
このまま眼圧が上がり続けると、最終的には失明してしまうため、眼圧を下げるために、手術をする可能性もあるらしい。手術のあとは3週間ほど入院をする必要があるとのこと。
手術を回避する最終手段として、目薬を2本追加された。全部で目薬が4本になった。毎日目薬を差され続けている目を少し気の毒に思う。
看護師さんとの最初の微笑ましいやりとりが台無しになる。頭では事の重大さを理解しているが、心がついてこない。「冷静になれ」ともう1度心に言い聞かせる。
普段なら落ち込んでところをすぐに持ち直すことができた。これまでに難病の辛さをなんども乗り越えてきた。手術も回避してきたし、今回もきっと大丈夫だ。僕は逆境に強い。だから、絶対大丈夫。そう言い聞かせるしかない。
物事は思うように運ばないことが多いかもしれない。でも、最後に笑うのはじぶんで、この辛さも人生の中のほんの一欠片に過ぎない。だから、きっと大丈夫。
なんて言葉では簡単に言えるが、不安なものは不安だ。でも、なんとかなる。その言葉を盲目的に信じたい。いつの日か病気がちゃんと治りますように。できることを1つずつやっていく。僕は絶対に諦めない。最後に笑うのはこの僕だ。
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