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かくれんぼ
「もういいかい?」「もういいよ」という合図で始まるかくれんぼ。
君と私のかくれんぼはいつも楽しいものだった。
私はいつも隠れるのが上手で、悪い顔をしながら見つかりにくい場所を、まるで子供みたいに探していたよね。
君が最後は見つけてくれるから思う存分に隠れていたあの頃。
1~10まで数える間は君が目を瞑り、その間に私が隠れるというただの遊び。
いつも私を探すのに一苦労していた君。
君が私を見つけられない時は、決まって私が自分から君の前に現れた。
「君の負けだね」って言って微笑む私。負けが確定した時に見せる「参った」という君の困り顔を見るのがやけに好きだった。
じゃんけんの勝ち負けで鬼を決めるあの行為。
いつもは私がグーで君がパーを出すというお決まり。そして、じゃんけんのようにいつも君に守られていた私。
君の温もりがたまらなく好きで、守られていると自負できるほど君からの愛を感じていた。
君はいつも私を抱きしめる。あの幸せな瞬間が永遠に続けばいいとそう願っていたあの頃。
最後はなぜかじゃんけんで勝ってしまった私。それはもう守ってくれる君が側にいないというお告げ。君がパーで私はチョキ。君との関係性を切り刻んでしまった私。
些細な衝突の連続。良いところではなく、嫌なところばかりに目が行く始末。君に守ってもらえなくなったきっかけを作ったのは確かに私だった。
「もういいかい?」
君からの返答は無音。何も返ってこない返答に私は終わりを感じた。君が私の知らないところに隠れる。どこを探しても君はいない。
2人並んで撮った笑顔が溢れる当時の写真。今では笑えなくなってしまった2人。あの頃とは何が違うんだろうね。もう今となってはその答えすらわかりやしないから嫌になるよ。
君を見つけられずにもうそろそろ日が沈んでしまう。
あれ?これで終わりだなんて信じられないから「もういいよ」って早く言ってよ。
かくれんぼなんかしてないで、私がいつも実行する君の前に現れるネタバラシをして、私を困り顔にしてみせてよ。
いつもは隠れることしかしない私は探すことには慣れていないから、どうしたらいいかわからず、ただ立ち尽くしていた。
焦らさず私の前にもう一度現れてよ。
なんて言ったところで、既にいなくなった君とはもう会えない。
ねえどこにいるの?
私を好きだった君はもうここにはいないという残酷な事実。私から離れしまった君。今では1人になってしまった私。
私をひとりにしないでよ。
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