梅棹忠夫『知的生産の技術』を読んで
岩波新書の、ロングセラーのようで、半世紀前くらいに学者が書いた本らしい。
書店で岩波のコーナーを眺めているときに、興味をそそられた。最近読書をしたり、このnoteに書いた文章を投稿したり、ということを継続できているので、「知的生産」ということへの念が強くなっていたのかもしれない。
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メモの取り方、資料の整理の仕方、読書や執筆の仕方といった、知的生産に関することが、章立てて網羅的にまとめられていた。
たぶんほとんどのことが常識的といえるぐらい当たり前のことなのだけど、実行できているかというと決してそうではなくて、そのような原則的なことが書かれているからこそ、長く読まれ続けている本なのだと感じた。
あるいは、今では常識的と感じられるようなことも、当時はそうでなかった、というようなことも少なくないのかもしれない。この本の中には、書かれた時代をふまえると、予言的とも思えるような節がいくつかあった。
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この本でおすすめされていることの中に、B6サイズのカードを使用する方法というものがあった。
とりとめのない思考や、読んだ本の要点や情報などを、このカードに記して保存しておき、時々それらを繰って、見直すことで、そこから新たな着想を得よう、というものだ。
このアイデアに感化されて、すぐにアマゾンで「京大式カード」というものを購入してみたのだけど、逐一カードにメモをとるということは自分にはどうにも面倒で、今のところ習慣づきそうにない。
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この筆者は、賢くて、本当に自分で一から様々なことを思索することのできる人物なのだと感じた。
安易に社会通念に依拠せず、自分の経験はもちろんのこと、他の人の観察や、歴史から、自分なりの考えを持つに至れる人なのだと思う。
そういったことは、自分もできるようになりたいと志していることなので、自分の道の先を行っている人として、尊敬できるような気持ちがした。
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さて、賢い学者であるとはいっても、人付き合いをおざなりにする人物、というわけでは必ずしもないようで、文章を読んでいるとこの筆者の周りには仲間のような存在がいつもいる、ということも見てとれた。
『論語』の中に、詳しい表現は忘れてしまったが、「正しい志を持つ人は、良い仲間に恵まれるものだ」というような意味合いの一節があったと思うのだけど、それを体現している人のようにも感じた。
知的なアプローチを好む人なので、一見わかりにくいかもしれないけれど、この筆者の思索や提言の根本には、世のため人のため、とう信念があったような気がした。