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Q.読み書きが苦手なお子さんの支援方法について、教室でできる支援方法があれば教えていただきたいです。

A.こちらの質問は前回の記事の続きでございます。読み書きが苦手なお子さんの支援方法について、教室でできる支援方法があれば教えていただきたいとのこと。早速お答えしていきます。

前回の記事はこちら☟

はじめにお断りしておきます。今回のご質問はお子さまの苦手さや先生の置かれている環境によって答えが変わってくるものです。よって、今回はどんな状況であってもこういった「心構え」をしておくと支援がしやすくなるよ、といった内容でございます。具体的な支援方法についてはまた別の機会にお話しできたらと思います。

それでは回答に移ります。

読み書きが苦手、といってもその苦手さは様々です。
【読みの苦手さ】
•文字を形として捉えられない(同じ文字のマッチングができない、文字の弁別ができない)
•文字のルールがわからない(ひらがなであれば、一文字一音ということがわからない)
•文字と音の連合ができない(文字がもつ音を正しく言えない)
•単語をまとまりとして捉えられない(一文字ずつ拾い読みをする)
•文節の理解が難しい(文節を無視した読み方になる)
•文を最後まで正しく読めない(文末を自分なりに変えて読んでしまう)
•文章の要点をつかめない(書かれてあることの理解が難しい)
•作者の意図を汲めない(作者の意図や文章のテーマと異なった解釈をする)
などなど

【書きの苦手さ】
•鉛筆操作が苦手(点から点へ線を引くことができない)
•形を書くことが苦手(図形の模写や文字のなぞりができない)
•模写を上手にできない(形が歪な文字になる)
•大きさの調整ができない(小さな枠に文字がおさまらない)
•文字を想起して書くことが苦手(文字を覚えられない、誤った字を書く)
•黒板の文字を写すことが苦手(誤字脱字がある)
•自分の考えを書くことが苦手(何を書いたらいいかわからない)
•丁寧に、速く書けない(雑で速い、丁寧だけど遅い)
などなど

ざっとこれだけの苦手さの種類がありますので、「こういう支援をすれば全部うまくいよ!」ってことはありません。まずは「読み書きが苦手」という漠然とした実態を、読みはこれはできるけどこれが苦手、書きはこれはできるけどこれは苦手、と細分化してみることをおすすめします。

細分化してみて実態を把握し、さあ支援の手立てを考えようと思っても「どんな支援をすればいいの?」という疑問が湧くと思います。その疑問が湧いた時は「読みも書きも、何かの目的を達成するための一つの方法である」ということを思い出してください。

これは以前の記事にも書きましたが、学習の本質とは新たな世界を探究するために必要な知識を身につけることです。

以前の記事☟

お子さまはみんな生まれながらの探検家、冒険家です。初めてのものに出会ったとき、目を輝かせ「なんだこれ!?」と口に入れてみたり、いじってみたりします。

それがだんだんと新しいことを学ぶ方法が「読む、書く」に限定され、それがたまたま苦手な子は学習する気力をなくしてしまいます。

私が一番恐れているのは、子供たちが気力を失ってしまうことです。そうなってしまうと支援をすることが難しくなってしまいます。

なので、お子様の教育に携わる我々は「多様な教育的ニーズに応えられるよう準備しておく」ことが大事です。授業が読み書きだけで成り立ってしまうと、それが苦手な子は参加できません。

読むことが苦手なら、違う方法で学ばせる。
書きの場合も同様です。

大抵の場合、「読み」によって学んで欲しいことは教科書に書いてあることの理解です。であれば「聞く」によって理解をすすめたらいいでしょう。

また、「書き」の目的は授業内容の記録や自分の意見の表出です。であれば「写真に撮る」「データ化する」「タイピングする」「話す」によって記録や表出をすればいいでしょう。

このように、「読み」「書き」を目的ではなく方法として捉えれば、自ずと支援方法は見えてくると思います。ただ、その支援方法もやり方を間違えればうまくいかない、継続できないということがあります。

どういうときに上手くいかないか、それは「やりたい支援ができない環境なのにしようとしてしまう」場合です。これは物がない、時間がない、心意気がない、という状況だと生じる問題です。

タイピングをさせてあげたいけどPCがない。
この子に合った教材を準備したいけど時間がない。
こういった支援ができるのに、管理職や主任からOKが出ない。
といった問題です。

こうした問題は必ずありますので、ここを無理に突破しようとしない方がいいです。頑張って準備したことを「それはできないよ」って言われちゃうと心が折れます。心が折れてしまったら立ち直るのが大変です。

なので何かを準備しようとするときは事前に今の環境で何ができるのかを考えることが肝心です。

では、支援が継続できないケースというのはどういう状況か。それは「その支援について、保護者や本人からNOを突きつけられてしまう」というケースです。

こういったケースは共通理解と合意形成を怠ってしまった場合に起こります。共通理解とは「お子様の実態についての共通理解」であり、合意形成とは「目標についての合意形成」「目標達成までの支援や手立てについての合意形成」です。

共通理解を怠ると支援を継続できないよ。ではどうやって共通理解を得るの?それはズバリ「情報伝達を欠かさない」に尽きます。この情報とは事実のことで、事実をありのまま保護者に伝えていく。これが共通理解を促進する上でとても大事なことです。

事実とは何かというと、お子様の実態と自分(先生)の印象、感想です。「今日はこんなことがありました」「この一か月こんな様子でした」「1学期はこんなことができました」「こんな様子を見て私はこんな印象を抱きました」などです。

大切なのは事実と感想を混同しないことです。「文字が全然書けません」「周りの子が困っています」「話を理解できません」これらは事実ではありません。

こういった伝え方を繰り返していると、だんだん保護者と我々との心の距離が離れていって、その子の実態についての共通理解ができず、目標についても理解を得られず、そうするともちろん支援についての合意形成もできなくなってしまいます。

物事、出来事の事実を抽出し、ありのまま伝えるにはスキルが要りますが、ここで話してしまうととても長くなってしまうのでまたの機会にします。知りたい方はコメント欄に書いてください。早急に記事にします。

話が色々な方向にいってしまいました。最後にまとめです。
読み書きが苦手な子への支援方法について
•まずは何ができて何ができないかを把握しましょう。
•「読み書きは方法」の視点に立って、目的を達成するために必要な支援を考えましょう。
•自分(先生)が置かれている環境でできる支援を行うようにしましょう。
•保護者と学校との間でお子さまの実態についての共通理解を図りましょう。
•お子さまの実態について保護者に伝達する際は事実と感想を混同しないようにしましょう。
•事実はありのまま伝え、感想は「私はこう感じた」と感想であることを踏まえて伝えましょう。
•お子さまの実態について共通理解ができたら、目標や支援の手立てについて保護者や本人と合意形成を図りましょう。

以上です。今回は読み書きが苦手な子への支援について考える際の「心構え」について解説いたしました。

お子さまの苦手さや先生の置かれている環境によってできる支援が変わってきますので今回は具体的な方法は助言することができませんでした。申し訳ありません。今回の内容を参考に支援の手立てを考えて頂けたらと思います。

また、個人情報に留意した上で具体的なお子さまの教育的ニーズや環境について具体的に教えていただけたら、より具体的な方法についてお答えできます。お時間があって気が向いたときにまた質問していただけたらと思います。

質問への回答は以上です。
この記事では、教育・心理・特別支援といったテーマを中心にご質問への回答をさせていただいております。
ご質問はコメント欄で募集していますのでお気軽にお寄せください。(教育•心理・特別支援以外のテーマも大歓迎です!)

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