【ノウハウ共有】石川県・Slowワーケーションで伝えられる3つのポイント by HafH
2021年5月21日〜30日の10日間、HafHの利用者の皆様にお声がけして、石川県でワーケーション企画を実施しました。時は、ゴールデンウィーク後でもともと観光閑散期、そしてコロナ第4波真っ只中。緊急事態宣言発令中で、県内の公共施設・観光施設は軒並み閉館・閉園。金沢21世紀美術館も、兼六園さえも入れない。
企画中止も大いに検討されましたが、団体行動ではなく個人行動である点、ホテルは感染対策がしっかり行われている場所であるという点、何より、宿泊施設さんと一緒に準備をしていた中で、我々は宿泊施設のチカラになる存在であるべきだと小さいなりの責務も感じていたところがありました。この企画、もし行政と一緒に進めていれば、有無を言わさず中止となったでしょう、行政の支援なきワーケーション企画であったからこそ実施ができました。(よく考えると、行政企画じゃないワーケーション企画ってあんまり見たことないぞ...???)
ワーケーションという言葉は、言葉だけが先行し、政府や自治体といった行政がかなり前のめりに推進しようとしていて、市場がついてきていない印象があります。先日発表された「月間総務」の調査によると、ワーケーションを導入している企業は3.5%。85%以上が導入の検討さえも進んでいません。
かたや前のめりだったはずの行政はというと、コロナ感染拡大の中でワーケーションに手を出したくても出せないというのが現状。あらゆるワーケーションツアーが次々に中止となっています。言葉に踊らされ、本質なきまま形だけ作られたハコモノワーケーションは、結局、もろい。我々は、ワーケーションという言葉にこだわることなく、個人、一人ひとりのニーズと向き合いながら、新しいライフスタイルの多様化を後押ししていく。その結果、生まれたのがこの企画でした。
なぜ石川県でワーケーションだったか
↑企画の内容はこちら
ワーケーションの代表エリアといえば長野県、和歌山県、鳥取県あたりがリーディングエリアと言われています。これらの地域は、実はコロナ前からリモートワークを活用した企画・プロモーションの実績が積み重なっており、企業誘致、移住定住促進、関係人口の創出、さらにはウェルビーイングといった社会課題、社会のニーズにしっかり取り組んできた地域です。手厚いサポートが用意され、ワーケーションに取り組みたい市場をしっかり捉えつつあります。
一方、石川県は、ダメ元で自治体側へ事前にアプローチをしてみましたが、全く動きがなかった。能登半島で多少の動きがあった程度で、全国的に広めようという機運の高まりには至っていなかったのが実情です。
↑ANAワーケーションの取り組み
冒頭のリーディングエリアと比較すれば、ワーケーション環境が整っているとは決して言えない石川県で、なぜHafHは企画を実施したのか。誰に求められるわけでもなく、我々が石川を選んだ、これにはそれなりの理由がありました。その思いはこちらのnoteに書かせていただいています。
ノウハウその❶実施期間は1週間以上で自由に選べる
冒頭記載をさせていただいた通り、実施期間は10日間。この間、各参加者が自由に出入りし、宿泊していただくスタイルで企画をしました。1泊でも、10泊でもその前後に延泊しても良い。豊富な宿泊先のバリエーションが揃う石川県のHafH拠点を自由に選んでもらえるという、この選択肢の幅を常に用意しておくところは我々のこだわりです。駅目前のシティホテル《ハイアット ハウス 金沢》から、能登半島の温泉旅館《和倉温泉・ホテル海望》まで、一人ひとりのニーズが違うということを前提にプランニングをすること。
何時に集合して、みんなでどこに泊まって、と先に決めておくことは、参加する側も、企画側も簡単なのですが、僕たちはこれを勧めません。ワーケーション必要なのは「余白」です。何をするにも余白。この「遊び」がないと、セレンディピティ(偶発的な出会い、奇跡、ご縁)は生まれにくくなります。
なぜなら、自分で「選ぶ」と、人は選んだ自己責任を大なり小なり背負うことになります。自分で選んだからには「楽しまないと」「充実させないと」という思いが高まり、この”潜在意識”が「面白い出会いやご縁」を生み出す大切な調味料になるのです。人に選ばれたものってなかなか心から愛せない、あの感覚です。ワーケーション を楽しんでもらうためには「自分で選ぶ」余白をたくさん作ってあげることが大切です。
期間中、実際に滞在した約50人は、石川県内に210泊を超える宿泊がありました。そのうち30人がアンケートに回答したのですが、回答者のうち石川県内の滞在日数は平均6泊を超え、前後の移動宿泊も含めると1週間以上宿泊したことがわかりました。さらに、この回答者の4割が「滞在日数が短かった」と回答。1週間ではまだまだ物足りない、もっと滞在するようプランを立てていればよかったと少し後悔していることがわかります。
自治体がつくるハコモノワーケーションのモニターツアーは2泊3日の決められた工程になっているものがほとんどですので、ニーズの実態と自治体の認識にズレがある。集合時間と解散時間を決めこんだ2泊3日ツアーを検討している自治体はぜひ見直すべきです。きっと「楽しい」観光ツアーで終わってしまい、「満足度が高かかった」以上のフィードバックは生まれてこないでしょう。
さらに上図には参加者の属性が記載されていますが、参加者の半数以上が30代以下の会社員だったという所も特筆すべき特徴です。リモートワークが普及し、会社が制度としてワーケーションを導入していなくても、個人レベルで、働き方の幅が広がりつつあるということです。会社が認めてくれているわけではないけれど、リモートワークになったので自分の働きたい場所で働けるようになった会社員はいる。あとは、企業側がこのニーズにどう対応するか、です。
おこめさんも、実際に石川県・Slowワーケーションに参加されたひとりです。大手IT企業に勤めていて、働く場所は個人の裁量に任されています。
ノウハウその❷企画は「用意する」ではなく、日常へ「いざなう」。
さて、参加者を集めたら「どんな企画でおもてなしをしようか」とついつい考えてしまいがちです。ビーチ沿いなら「マリンアクティビティをやってもらって」観光地なら「あの代表的な観光地に行ってもらって」と、これまでやってきた自慢のおもてなしをあれこれ詰め始めることでしょう。
この時点でワーケーション企画としての本質を誤解しています。2泊3日で組んでしまえば、もはやそれだけで終わってしまう。いつ仕事をすればいいの?となるツアーが出来上がってしまうかもしれません。1週間以上滞在することを想定すれば、毎日、毎日、おもてなし企画があるとそれはそれで双方疲弊します。あちこちせわしなく連れて行かれて、ご馳走三昧で胃袋も疲弊。過食で健康にもよくないワーケーションになるかもしれません。
松下先生(関西大学)の言葉を借りれば、ワーケーション2.0に必要なのは「ホスピタリティ」ではなく「関わりしろ」です。先生のnoteを読めば、参加者を「お金を使ってくれる消費者」ではなく、地域にとって必要な「パートナー」だと思って接すべきだとわかります。そのために必要なのは、特別なおもてなしプログラムではなく、地域の日常にいざなうということです。
毎朝やっているジョギングついでにゴミ拾いに来てもらう。いつもの喫茶店で、いつものように世間話に花を咲かせる。いつもの散歩コースをご一緒させていただく。いつも飲んでいる場末のスナックでママに愚痴を聞いてもらう。ワーケーションを通じて訪れる参加者は、この「日常」に、喉から手が出るほど触れたいと思っています。
実際に、石川の日常に触れるたび、石川県民の「日常」が豊かすぎました。都会に媚び売らず、自分たちのものとして大切にしているものがある地域は、強くて、かっこいい。石川がまた好きになりました。
ワーケーション期間中のスケジュールは主に、3つのパートで構成されます。
❶平日昼間(就業時間中) ❷平日朝夕 ❸週末(休み)
平日昼間は、皆さん業務があります。ワーケーションに来ているからこそ、「サボってるんじゃないか」と言われやすい状況にあるからこそ、仕事は仕事でキッチリやるという気概をもって取り組まれる方が少なくありません。会議は自室で。会議ではない時間は「コワーキングデイ」を我々で用意し、参加者同士で同じ場所を使って働きます。場を共にすると、怠け虫が出にくくなり、仕事が捗ります。
朝や夕方の企画は、地元の皆さんの日常に触れていただきました。ジョギング、散歩、お茶会、など。飲み会などは泣く泣く中止せざるを得ませんでしたが、いつもいくという老舗居酒屋から仕出し弁当を取り寄せてくださいました。それだけで、我々も少し「地元の役に立った」ような気がします。週末はちょっと遠出をして、能登や小松、白山へ。石川全域に魅力ある地域があるので、ワーケーションフィールドとして最高のポテンシャルがあると感じました。
おすすめの石川県・小松市HafH拠点「Takigahara Craft & Village」
ノウハウその❸つながりをつくる仕掛けにこだわる
ワーケーションを満足するものにしていくためには、何より新しい出会いやご縁を想像以上に用意していくことが大切です。
偶然の出会いをどうやってデザインするか。まずは、オンラインで出会いやすい仕掛けを作っていくことが大切です。作り込めばこむほど、いろんなアイデアがあって手間をかけることは可能ですが、HafHが石川県・Slowワーケーションで実施したのは2つ❶共通のハッシュタグ「#HafH得ワーケーション」をつくる❷LINE OPEN CHAT で交流する、これだけです。
この10日間の間にツイートで呟かれた関連ツイート(検索→「#HafH得ワーケーション」)は約110件。これらツイートの、総いいね数は40,000を超えていました。1ツイートあたり平均370いいね分のパワーがあるアカウントを持っている人がワーケーションをすると集まる可能性があるというのも、HafHコミュニティの興味深いところです。
関連ツイートの総RT数は引用RT合わせて5,000超。総返信数、約580。HafH、並びに石川(金沢)のPRとしても大いに成果が残ったと言える数字です。このご時世、何百人も同じ場所に呼ぶことが難しいのですが、何千人もの人に「行ってみたい」と思ってもらうことはできる。小さな工夫と小さな手間で、コロナ後に向けて大きなポテンシャルを残すことができます。
誰一人、本職として芸能活動をしているわけでも、ワーケーションの有識者でも、大企業の社長や役員が来たわけでもありません。一人ひとりが自立したHafH利用者で、情報発信スキルを持っている人らが、本人たちの意思で来てもらい、本人たちの意思で発信をするから、その発信のパワーもエンゲージメントも高くなります。
LINE OPEN CHATには、今回のHafHからの参加者・HafH拠点宿泊事業者・石川の地元住民の皆様、そしてHafHスタッフが合計100名以上参加。HafHからの日々の情報アップデートだけでなく、HafH参加者と、地域の皆さんとの交流が、気軽に行われる場となりました。
例えば参加者から「エリアのコワーキング情報を知りたい!」と連絡があれば地域住民から「ここはどうか」と即レスがくる。逆に、地域のHafH拠点事業者さんからコラボの提案を受けて、参加者が得意料理を作ってくれる食事会が生まれたり。決して一方的でなく、あらゆる関係者が自由に議論をする形で、交流が進んでいきました。「ツイッターでは繋がっていた」「LINEで見ていた」あの人と会えた!という喜びも、ただ出会うのとは違う喜びがそこに生まれます。運営側があれこれリソースをかけて準備するのではなく、参加者らが自発的にコミュニケーションがとれる、ここにも「余白」を作ることで、さらにセレンディピティの可能性は無限大に広がります。
まずは、実際にワーケーションする人たちに会って見よう。
ワーケーションする=移動を伴う働き方を選ぶ人たちは、確実に市場が広がっています。矢野経済研究所の予測によると、700億円市場が五年後には5倍以上の3,600億円市場に。これは日本のガラパゴス的なトレンドでもなんでもなく、世界を旅して働く市場は人数にして10億人市場とも言われている。今後、働き方のあり方は、コロナの収束後も大きく変わっていくと言われています。
行政予算を取りに行く、対症療法的な事業ではなく、大きなライフスタイルの変化トレンドを掴み、地域に人の流れを生んで行く。その気概を持って、あらゆる地域で上質なワーケーションの企画が生まれていくことを期待しています。その際に、HafHがうまく後押しできれば幸いです。
正解の見えないVUCAの時代に、自分なりの正解的生き方を見つけていくことがこれからのワークスタイルシフトにとって重要。ぜひ、一度、旅先で働くスタイルを、1週間以上のスパンでご検討くださいませ。
その最初の行き先として、東は石川、西は長崎で、HafHがお待ちしております^^
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