近親転調 一歩進んだ和声学 Part 27
今回は転調を含んだ和声を学んでいきます。今までは調は転調せずに一つの調のみの和音の連結を行ってきました。ここでは和音の連結の際に転調が起こった際、どのようにすればよいのかを見ていきましょう。
1 和声学における近親転調
最初に近親調に転調する連結を行います。
近親調はとある調において5度の上の調である属調、5度下の調である下属調、調号が同じで3度下の調である平行調、主音が同じである同主調の4つのことを指しますが、この和声学においてはある調の各音度調のことを近親調と呼びます。ある調の各音度調についてはこちらで述べていますので、一度目を通していただければ。
例えば、ある調がハ長調(Cメジャー)である場合、近親調は
ニ短調(Dマイナー)
ホ短調(Eマイナー)
ヘ長調(Fメジャー)
ト長調(Gメジャー)
イ短調(Aマイナー)
となります。
ハ短調(Cマイナー)の場合、近親調は
変ホ長調(E♭メジャー)
ヘ短調(Fマイナー)
ト短調(Gマイナー)
変イ長調(A♭メジャー)
変ロ長調(B♭メジャー)
となります。
近親調に転調をすることを近親転調といいます。
転調において
先行する調を先行調
後続する調を後続調といいます。
そして
先行調の最後の和音を離脱和音
後続調の最初の和音を転入和音といいます。
では、以下の例で先行調、後続調、離脱和音、転入和音を見てみましょう。
先行調はハ長調(Cメジャー)
後続調はイ短調(Aマイナー)
離脱和音はハ長調のIの和音
転入和音はイ短調のV7の和音
となります。
離脱和音→転入和音への進行を転調進行といいます。
2 転調進行における上3声の連結
転調進行における上3声の連結については、今まで行ってきたこととあまり変わりはありません。
(i) 半音階的関係をなす2音が含まれている場合は、同一の声部で増1度関係に連結します。
ただし転入和音が減7の和音だった場合は対斜が許されます。
(ii) (i)が当てはまらず、離脱和音と転入和音で共通音が存在する場合は保留します。
(iii) (i)、(ii)のどちらにも該当しない場合は上3声はバスに対して反行させ、転入和音の構成音の一番近い音へ進行します。
ここからは新たに覚えることです。
(iv) 転調進行において、後続調の導音に達する増2度進行は内声に限り許されます。
(v) 離脱和音に限定進行音が含まれており、かつ転調進行においてこの限定進行音が正規の限定進行を行えない場合は保留、または増1度進行させます。ただし、導音は場合によって跳躍進行を行うことができます。
(iv) 転入和音がII7の和音、IV7の和音の場合は第7音の予備を必要とします。
3 不完全カデンツ
転入和音はS和音、V和音が用いられることが多いです。
この場合は後続調の最初のカデンツは不完全な形となります。これを不完全カデンツといいます。不完全カデンツ数字に斜線をつけて表記します。
また離脱和音にT和音以外を用いる場合は先行調も不完全カデンツとなります。
先行調の最後のカデンツ、後続調の最初のカデンツが不完全カデンツとなる場合はD和音→S和音となる場合があります。カデンツの原則は、調が一定している場合にのみ適用されるので問題はないことになります。
4 終わりに
これらを踏まえて次回は近親転調を含む、バス課題を解いてみます。
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