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フーガト短調BWV578 楽曲分析
今回はJ・S・バッハ(1685~1750)のフーガト短調BWV578の楽曲分析を行います。フーガというのは対位法という作曲技法が使われている楽曲で、対位法というのは「複数の声部(パート)が調和を取りながら重ねていく」技法です。対位法ではどのパートがメロディでどのパートが伴奏というのがありません。全ての旋律がそれぞれ独自性を保ちながら曲が構成されていくのが対位法の大きい特徴です。はたしてその技法を使ったフーガというのはどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。
1 拍子、調、構造
4/4拍子、調はト短調です。
フーガというのは基本的には1つのメロディ(主題)を用いて、曲を展開していく技法です。この主題を扱う部分を「提示部」といい、次に推移部的な部分の「嬉遊部(ディヴェルティスマン)」という部分が現れます。
この
提示部ー嬉遊部ー提示部ー嬉遊部・・・・・・・・・
を繰り返しながら最後の部分にあたる「追迫部(ストレッタ)」を通り曲を締めくくります。
提示部と嬉遊部の繰り返す回数は曲によります。
まとめるとフーガの基本的構造は
提示部ー嬉遊部ー提示部ー嬉遊部・・・・・・・・・追迫部(ストレッタ)
となります。
フーガを作曲する際には複数の声部(パート)が必要になります。
2パートからなるフーガを2声のフーガ
3パートからなるフーガを3声のフーガ
などといい、この曲は4パートからなる4声のフーガです。
では細かく見ていきましょう。
2 解説
① 提示部 0:08~
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提示部ではフーガの根幹となる主題が奏でられます。この主題はどの声部(パート)で現れるかは曲次第ですが、ペダル(足鍵盤)で開始することはほとんどないと思います。
フーガにおいてこの最初の声部で奏でられる主題部分を主唱(しゅしょう)といいます。(黄色のハイライトが主唱です)。
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主唱が終わった後違う声部で主題を繰り返します。この時、4度下または5度上に移して奏でられます。結果的には属調(ここではニ短調)で奏でられることになります。
この属調で主題を演奏し始めた声部を応唱(おうしょう)といいます。(オレンジのハイライトの部分)
そして最初の声部では別の旋律を奏で始めます。これを対唱(たいしょう)といいます。(緑色のハイライトの部分)
その後短い経過句を挟み、第3の声部で主唱を奏で始めます。
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第2の声部では応唱が奏でられますが、幾分か変形された形になることもあります。第1の声部は自由唱となり自由に旋律を奏でますが、ここでは第2の声部と合わせて対唱を奏でています。
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第4の声部で応唱を奏で、第3の声部では対唱が奏でられます。第1、2の声部は自由唱となり、自由な旋律が奏でられます。(青色のハイライトが自由唱)
ここでは第2声部には旋律が無く、第1声部のみで自由唱を奏でています。
これがフーガの基盤となる提示部の構造です。
鍵盤作品では3声、または4声のフーガ多く、2声のフーガや4声以上のフーガはそこまで作品数は多くありません。
② 嬉遊部~第2提示部 1:18~
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嬉遊部では自由に旋律がそれぞれのパートで奏でられます。もちろん全パートが常に奏でられるわけでは無く、時には休止を挟みながら進んでいきます。嬉遊部でよくある技法として反復進行という技法が使われますが、今回は説明を省略します。わずか3小節の嬉遊部のあと、すぐさま2回目の提示部に向かいます。
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ここでは主題が変形された形で使われており、まず第3声部で主題が現れた後第1声部に移動してそのまま奏でられます。第3声部は対唱を奏でます。
③ 第2嬉遊部~第3提示部 1:46~
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第2嬉遊部はわずか2小節と2拍分しかなく、すぐさま第3提示部が現れます。
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第3提示部は変ロ長調で始まり第2声部に主題が現れます。その後は第3声部に移りそのまま奏で続けます。第1声部では対唱が奏でられます。
④ 第3嬉遊部~第4提示部 2:09~
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このように何度も嬉遊部と提示部を繰り返しながら曲が進行していきます。
そのまま変ロ長調で第3嬉遊部が始まり、第4提示部では第4声部に主題が現れ、前半は第1、2声部で対唱が奏でられ後半は第2、3声部に移ります。
⑤ 第4嬉遊部~第5提示部 2:36~
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第4嬉遊部を経由して第5提示部では主題が第1声部でハ短調で奏でられます。対唱は変形された形で途中から第4声部に現れます。
⑥ 第5嬉遊部~追迫部 3:08~
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第5嬉遊部を通り、最後の盛り上がりとなる追迫部が主調のト短調で現れます。第4声部で主題、第1声部で対唱を奏でていますが、本来であれば追迫部は主題が終わる前に応唱を導入するという特徴を持っていますが、今回はそれが現れていません。最後は同主調ト長調の主和音で終止します。
この短調の曲で曲の最後が同主調の主和音で終わることをピカルディ終止と呼びます。
⑦ 総括
以上となります。いかがでしたか?
このフーガはそこまで難しい対位法は駆使していませんが、短いながら精緻な書法がそこにはあり、対位法の巨匠であったバッハならでは技だと思います。この他にもかなり高度な技巧を使ったフーガも存在します。未完成ですがバッハの集大成ともいえる『フーガの技法BWV1080』もぜひ参考にしてみてください。
この他にも楽曲分析を行っております。
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