ポロネーズ第1番 楽曲分析
今回はショパン(1810~1849)のポロネーズ第1番嬰ハ短調op26-1の楽曲分析を行います。ショパンのポロネーズで初めて出版されたものです。有名な第3番や第6番などに比べると個性は薄いですが、彼の祖国の音楽であるポロネーズを理解する上で重要なものとなります。どのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。
1 拍子、調、構造
3/4拍子、調は嬰ハ短調
AーA'ーBーAーCーDーCーAーBーAの複合三部形式です。
しかし、構成に関しては議論すべきことがあります(後述)。
2 解説
① A 0:00~
"Allegro appassionato(速く情熱的に)"の指示のもとff(フォルティッシモ)で4小節間の導入が始まります。Aの主題は左手のポロネーズリズムのもと、嬰ハ短調の属和音(G#7)から開始され、6小節目で嬰へ短調、7小節目で嬰ハ短調に戻る、と1小節ごとに転調が行われています。9小節目からは主題が多少変形された形で再現され、11小節目でナポリの6の和音(D/F#)が現れると、12小節目で属和音が鳴らされ3拍目で嬰ハ短調の主和音(C#m)を鳴らしてAを終わらせます。ここではポロネーズ特有の弱拍で終わる女性終止が用いられています。A'はAをそのまま繰り返しただけで、特に変更点はありません。
② B 0:56~
Bは"sotto voce(囁くように)"の指示のもと、嬰ト長調(変イ長調)で始まり1小節目で和音を鳴らし、2小節目の減7の和音のアルペジオのフレーズで前半は構成されています。Bの前半はこの2つのフレーズを用いて曲が構築されています。ここでは"cresc.(クレッシェンド。だんだん強く)"など強弱記号の指定が細かいです。9小節目で一旦嬰ト長調(変イ長調)で前半を区切ると、10小節目からは低音でシ(B)の音を鳴らしながら、嬰ハ短調の平行調であるホ長調の属和音(B7)を鳴らし新たなフレーズが現れます。14小節目からはメロディを2オクターヴ下に下げて再現され徐々に音量を落としていき、17小節目で"riten.(リタルダンド。だんだん遅く)"をかけながら、原調の嬰ハ短調の属和音(ここでは第2転回形)が現れ次のAに進みます。
③ A 1:31~
再現されたAは"con forza(力を持って)"の指示のもと、力強く奏でられます。前半は和声も変えられており、ここでは一貫して嬰ハ短調で通されています。後半(5小節目以降)は同じ通りで終止の仕方も同じです。繰り返し記号がついていますので、Bから繰り返しが行われます。
④ C 2:50~
Cからは"Meno mosso(メノ・モッソ。それまでよりは遅く)"となりテンポが落ちます。しかし"con anima(コン・アニマ。生き生きと)"の指示がありますので、しっとりとした雰囲気にはならない方がいいでしょう。ここでは同主調である変ニ長調に転調します。8分音符の伴奏に乗ってCの主題が現れます。全体的に半音階の使用が顕著であり後半(9小節目以降)からはその傾向が強く現れます。10~11小節目の間は1拍ごとに転調しているので和声が感じづらいでしょう。ここも繰り返し指定がされています。
⑤ D 4:36~
Dの部分は調性が不安定で和声を最も感じづらい部分です。メロディは左手に表れ、右手は8分音符の刻みに終始します。1~4小節間は明確ではありませんが変ロ短調に傾いており、5~8小節間はハ短調に傾いています。9小節目からははっきりと変ホ長調が現れます。しかし、13小節目からまた調性をぼやかし、不安定さを保ったままリタルダンドをかけながらCに戻ります。14小節目には"ben legato(ベン・レガート。十分に音を滑らかにさせて)"の指示がありますので、低音部は滑らかに奏でるようにしましょう。
⑥ C 5:16~
再現されたCは最初のCと変わりありません。
ここで問題なのですが、この曲はどこが終止なのか私もわからない部分があります。参考音源では繰り返しのCが終わった後に再度AーBーAを演奏し曲を閉じていますが、ショパンは自筆譜にはこの再現されたCで"Fine(フィーネ。終わり)"と書き込んであります。
しかし、様々な音源を聞く限りほとんどは中間部が終わった後AーBーAの部分を演奏しています。これはショパンが後に変更したことなのか、はたまた第3者が勝手に付け加えたものなのか、終わり方に関しては未だ考えさせられる部分があります。はたしてその真相は?
3 総括
以上となります。いかがでしたか?
構成自体はそこまで複雑さはなく、わかりやすいものでした。中間部の和声がなかなか曲者ですが、それ以外は和声も難しい場面はなく音楽的に凝っている部分は少ないような印象を受けます。先程も言いましたが、曲の終わり方にいたっては未だにはっきりとした結論は出ていません。そこが解明される資料が今後出てくるのでしょうか。
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