The Pianist of Pianists
ピアニストの中のピアニストと称される演奏家兼作曲家がいました。
レオポルド・ゴドフスキー(1870~1938)です。
現リトアニア出身の彼は超絶技巧を要するピアノ作品群を産み出しました。
まず彼の代表作といえば、『ショパンの練習曲に基づく53の練習曲』です。
53の練習曲
この作品はショパンの遺した練習曲(作品10、作品25、作品番号なしの3曲)を用いて作られた曲集です。もとの練習曲は全部で27曲なのですが、ゴドフスキーが遺したのは53曲にもなります。これは一つの原案に何曲も作られた結果によります。
楽譜を見てわかる通り、かなりの難曲となっておりこの作品集を全曲録音したピアニストは現在でもたった4人となっています。
またこの作品は左手のみで演奏する曲もあり、一層難易度を高めています。
日本では『別れの曲』で知られている作品10‐3や『革命』の名で知られている作品10‐12などが左手のみで演奏するヴァージョンが遺されています。
別れの曲8:54~
革命1:12:31~
聞いてみると両手で演奏しているように聞こえますが、すべて左手のみの演奏です。左手のみで両手弾いているような響きを出すことができるこの曲集は音楽的にもとても完成度の高いものではないでしょうか。
オリジナル作品
彼が遺したオリジナル作品も同等の難易度を誇っており、演奏困難です。
代表作として『パッサカリア』があげられます。
パッサカリアとはオスティナート・バス(低音域で何度も繰り返される主題)を基に自由に変奏するスタイルの曲のことです。
この主題はシューベルト(1797~1828)の未完成交響曲D759の冒頭の主題を基に自由な変奏を繰り返しています。
曲全体の構成としては44からなる変奏、エピローグとカデンツァ、最後にフーガを置いたスタイルとなっています。
次に紹介するのが『ジャワ組曲』です。
この作品は彼がジャワ島に訪れた時に、インスピレーションを受けて作られた作品です。作曲されたのが1924~1925年ということで、無調音楽がだんだん表れてきた時代ですがこの作品は調性音楽の範囲で留まっており、ロマン派風の作品群となっています。
最後の紹介するのがピアノソナタホ短調です。
この作品は5楽章構成で演奏時間約54分の大作です。
ピアノソナタとしてはかなり規模が大きいものでしょう。
難易度もさることながら、長い演奏時間がピアニストにとって体力をかなり消耗する過酷なものとなっています。しかし彼独特のメロディセンスと音楽の構成力によって一聴の価値がある作品だと思います。
演奏する分には敬遠されそうな作曲家ですが、とても聞きやすい音楽であると思うのでぜひ聞いていただきたいと思っています。