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栄養パフォーマンス(ニューパ)を考える

いわゆる開発途上国で栄養改善の事業に関わっていると、マルチセクター・アプローチの重要性であったり、バランスの良い食事を食べましょうであったり、そこに間違いは一切ないのですが、果たして本当に現実的な解決法なのか?と思うことがあります。

栄養価が高くバランスの摂れた健康に良い食事(healthy diet)は、往々にして高価であることが多く、毎日のように気を遣って食べることは実際とても難しいのが現実です。

もちろん長期的に見たら、常に健康に良い食事が適度な価格で手に入る状態、そしてもっといえばヘルシー・プラネットの観点から環境負荷のかからない状態で生産されていること(sustainable healthy diet)を目指していく必要はありますが、すぐに達成されるほど簡単なことではありません。

エチオピア農村での栄養価の高い理想的な食事。毎食卓これを作るのは簡単ではありません。


ニュートリション・パフォーマンスを考える

現代は、コスト・パフォーマンス(コスパ)はもちろん、タイム・パフォーマンス(タイパ)であったり、あらゆるものの効率を追求する時代です。

僕が栄養改善の事業に関わっていて思うのは、栄養も「ニュートリション・パフォーマンス」をもっと考えるべきではないかということです。せっかくなので、「ニューパ」と呼ぶことにします。

例えば、農業を通じた栄養改善のプロジェクトをしていると、どうしても作物の「多様化(diversification)」を目指していくことで栄養バランスをよくするケースが多いのですが、diversificationはめちゃくちゃコストがかかります。ニューパが良いとは言えません。ついでに言えば、いろんな時期にいろんな作物を育てることにもなるので、タイパもよくない気もします。

理想論としてdiversificationを目指すのが良いのはよく分かるのですが、実際にフィールドで村人たちと話をしていると、「農業だけにそんなに時間を使えないよ」という声もあがります。電気や水のないような村での生活は、やったことがある人には分かると思いますが、想像以上に一つひとつのことに時間がかかるものです。


そこで僕が最近考えるのは、

“the most bang for the buck” rather than diversification

筆者(2023)

ということ。つまり、多様化を目指すよりも、その土地で最もニュートリション・パフォーマンスの高い作物を特定し、その作物だけにフォーカスする栄養改善のアプローチです。

僕たちがなぜ普段の生活でコスパやタイパを重視しているかというと、その浮いたお金や時間で他のことをしたいからだと思います。栄養改善についても同じで、ニューパの高い食事から栄養を摂取することで、浮いたお金や時間は他のことに使うことができます。

栄養改善のプロジェクトはこの視点が抜け落ちているケースが多い気がします。ニュートリション・パフォーマンス、通称ニューパ。ぜひ流行らせていきたいと思います。