食べたいから育てる、いや、育てたいから育てる
せっかくこんなに天気いいのに、外に出れないなんてな。
もったいないな。
自然にふれたいな。
そんな思いから始めたベランダでの家庭菜園。
育てているものは、
トマト、ミニトマト、ナス、そしてメロン。
これは自粛期間中にできた小さい家族のお話。
新たな同居人
我が家に来たとき、彼らはすでに苗であった。生き物を育てることが苦手な僕には芽から育てることはハードルが高かった。
その意識はのちに覆されることになるのだが、それはもう少し後のお話。
可愛くて可愛くてしかたない。
水をあげ、それに揺れる彼らに愛おしさを感じた。
引越し、そして過ち
通販で鉢植え(4つ)と土を買った。
彼らにも自分の部屋が必要だろう。
そして根を広く伸ばし、すくすく育ってほしい。
その中で、前々からしてみたかったことをすることに。
『鍋で野菜を育てる』
僕の中にある、「おしゃれな野菜の育て方」が鍋で野菜を育てるなのだ。
そのために使わなくなった鍋を1年以上取っておいたほどである。
きゅうりにはこのおしゃれな鍋を与えてあげた。
大きな鉢植え、沢山の土。
毎日水をあげ彼らはスクスク育っていった。
雨の日の次の日、大きな問題が起きた。
朝いつものように彼らの様子を見に行くと、
きゅうりの鍋に水がたまり、彼はぐったりしていたのだ。
その時僕は大きな過ちを犯していたのだと気づいた。
鍋の底に穴を開けなければならなかったのだ。
雨水が溜まりに溜まってしまいきゅうりは溺れてしまった。
すぐに余っていた鉢植えに土ときゅうりを移し様子を見たが、彼が元気になることはなかった。
僕はあらためて生き物を育てる難しさを実感した。
新たな出会い
野菜を育て始めてから、スーパーの家庭菜園コーナーを見るのが一つの楽しみになっていた僕。
その日もふらふらと家庭菜園コーナーをのぞいていた。僕の目はある苗に惹かれた。
「メロン」
メロンといえば高級食材。
特別なことでもない限り、口にすることのできない高嶺の花である。
あのメロンが家で育てられるなんて、そしてゆくゆくは食べることができるなんて。
僕は悩むことなく彼を家に招いていた。
家につき、きゅうりの墓と化していた鉢植えにメロンの苗を引越してあげた。
これから彼がどんな風に育っていくのか楽しみである。
芽生え
僕は日頃から彼らの栄養になったらと思い、野菜の皮や切れ端、種などを与えていた。
その中には南瓜の種もあった。
その日もいつものように象のジョーロで水をあげている時、ある違和感を覚えた。
なんか多い。
ミニトマトの鉢植えとメロンの鉢植えに新たな芽が出てきていたのだ。
よく見るとそれは南瓜の種から発芽していた。
まさかこんなことがあるとは。
肥料として与えた種から芽がでるなんて。
しかも日を追うごとに、芽の数は増え、スクスク成長していた。
一つの鉢に複数の苗が共存することへの心配もあるが、今は彼らをこのまま育てることにした。
5/13東京の感染者数9人
そして今日は5/13。
ついに東京での一日の新規感染者数が、うちで育てっている命の数を下回っていた。
我が家の4つの鉢植えには10もの野菜が育っていた。
トマトは花をつけていた。
今後鉢を増やして、ひと苗に一つの鉢で育てなければならないだろう。
土も買い足さなきゃならないだろう。
実に楽しみだ。
まだ自粛期間は続く。
彼らが実をつける頃には自粛期間は終わっているだろうか。
彼らを口にする時には、自粛期間を思い出話にできているだろうか。
もしかしたら、今よりひどい未来かもしれない。
でも今は、彼らを食べることができる未来を楽しみに過ごしたいと思う。
それまでは彼らとの自粛生活を楽しもう。