見出し画像

ぽちゃん

読書の秋に読みました。

毎日、毎日、毎日、楽しくてしかたない時期があった。
(今も楽しいけど、あのころの楽しさは若さのせいかなんか桁違いな気がしてる。)

当時職場の隣の席にいた先輩が「私は今までいやな上司にも部下にも当たったことないから、人に恵まれる運とか能力が絶対あると思う」と言った。

それを聞いてわたしも、そういえばいやな先輩なんて中学校でしかいなかったな…?これはわたしのもその才能あるわ!と確信した。
社会人4年目。転職して2年目。後輩はもちろんまだいなかったし、いやな上司に出会う程働いてはなかった。

いったんそう思うと、職場の人たち全員がとても優しくていい人に思えてきて、わたしの毎日はますますハッピーだった。

当時付き合っていた同じ職場の彼氏に、その先輩の話と、わたしも多分その才能があって、周りにいい人ばっかり集まってるから、最高にラッキーだという話をした。
彼は「相手は自分をうつす鏡って言うからね。君の周りにそんなに優しくて楽しい人が集まるのは、君自身が周りにそういうふうに接しているからだよ」と言ってくれた。
「いつもにこにこしてるからみんな話しやすいんだよ」と。

わたしは秘書をしていたから、その事務所にいる人みんなと関わりがあった。そして上司の部屋の前に門番みたいに座っていたから、わたしがいやな雰囲気を出すと、みーんなが過ごしにくいよなと思って明るく振る舞うように気を付けていたから、彼が言ってくれた一言はすごくうれしかった。

(「みんなににこにこしてるから、ちょっと嫉妬するけどね」と付け足した彼は天才だと思うし、今後これを超えるときめきは多分難しい。)

わたしはこの夜以降、ちゃんと相手の目を見て話すことと、ぶすっとしないことと、相手にいやな態度をとられたときは、自分が先にいやな態度とってないか反省することをずっと心がけてる。
ナスミがいろんな人に言った言葉みたいに、わたしの心にぽちゃんってなって波紋が広がってる。
(彼、元気に生きてるけどね。)

「あなたには、これから何人も何人も会う人がいて、あなたと別れを告げる人がそれと同じ数だけいるんだなと思ったのです」

出会って別れを告げたたくさんの人のうちの1人だけど、人はみんなこういうのを繰り返していて、そのたくさんの出会いと別れが、それぞれに何かを残して通りすぎるんだろうな。どの別れもきっと寂しいし悲しいんだろうけど、別れの受け止め方が少し上手になった気がする。目に見えなくても、もらったなにかまで消え去るわけじゃないから。

もしかしたらわたしの何かが、どこかで誰かに波紋を広げてるかもしれないと思ったら、生きて、出会って、別れるって本当にすごい。相手と向き合った証明だよね。
今までわたしと出会ってくれた人たちに、できればナスミみたいに、心を温めるような波紋が広がっててほしい。


ちなみにいやな上司にも先輩にも後輩にも出会わないまま社会人10年目くらいを迎えている。周りの人に恵まれる才能あったなと確信する日々。
どうしても苦手な人はいるけど。そこはもう『おんばらざらだるまきりくそわか』と『よいことも悪いことも受けとめて、最善をつくすッ』という気持ちで乗り切れる。いろんな波紋を知った大人は楽しいから。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集