こんな恋の物語

ある晴れた朝
僕は早起きしてシャワーを浴びる
朝食は食べずにパーカー着たら
おろしたてのスニーカーを履いて
家を出る

職場近くのバーガーショップ
モーニングセットを注文し席に着く
ハンバーガーを頬張りコーヒーを飲み
ポテトを一本くわえたら
持ってきた本の栞を外してページを捲る

隣に座っている
ショートカットが似合う女の子
あっ、と小さく声を漏らして
椅子から降りて屈み込んだ

立ち上がった彼女はこちらを向き
手をゆっくりと差し出して
どうぞ、と優しい声で微笑んだ

彼女の手のひらには僕の栞
ああ、と小さな会釈をしながら
ありがとうございます
僕もゆっくりと手を伸ばす

こんな恋の物語
夢想する

どうして僕らは
恋をするのだろう

好きになれる人を探して出会い
恋をしたら片想いは辛いと憂い焦がれ
恋人ができると窮屈だと自由を求める

本音を隠して
美句をならべ
聞きたくても聞けずに
声を飲み込み
手を振り誤魔化し
暗闇の中に涙を溢す


そしてまた
恋がしたいと言う

なんてわがままで
なんて悲しく
なんて孤独な

こんな恋の物語
僕らは紡ぐ

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