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4月は始まりと自戒を込めて

4月はスナップを撮らなかった。

仕事が忙しくなった、
写真集を作るのに時間をかけていた、
写真展の作品をプリントしていた、

などと言い訳はいくらでもできるが、私は基本的に言い訳は好きではない。
時間など作ろうと思えばいくらでも作れるはずだが、その努力をしなかった。端的にいうとサボりたかった。

あ、でもそうだ。
嫁と花見をしたかったのと桜を撮りたかったということで4月始めに富士へお出掛けに行った。去年は引っ越しでバタバタしていたので桜を見ることができなかった。せっかく静岡に住んでいるのだ、富士山と桜の合わせ技をしたいではないか。
そんな気軽な気持ちで富士へ行ったのだが、目の前に広がる景色はまさに絶景であった。

今まで見た桜の中で一番見事だっただろう。そんな桜を嫁と見ることができて良かった。

それくらいしかスナップを撮らなかったが、私はそれでも良いと思った。そんな時があってもいい。気持ちが乗っていない時に写真を撮っても良いものは撮れない。
そんな甘言に身を委ねるようにスナップに出かけなかった。




そんな私に転機が訪れた。それが4月下旬に開催した"iroiro展"だ。

"iroiro展"とは、東海地区のフォトグラファー23人による"個性の色"をテーマにした写真展。かっこよく言ってみたが、要はテーマ自由の写真展である。昨年冬から企画・フライヤーデザイン等少しずつオンラインで話し合いを進め、先日の4/26〜5/1の一週間開催した。私も29日〜1日の3日間在廊し、たくさんの方とお話ししたり他メンバーの展示作品を見たりして楽しんだ。

きっかけはいくつかあった。

1つ目はヒラノリオさんとのお話しだ。
最終日にヒラノさんが来てくださり、少しお話しすることができた。膨大な知識と経験を話してくださり「なるほど」と頷くことが多かったが、特に印象に残っていることが写真展の展示に関する話だ。

−とある写真家の写真展。展示会場は壁がぶち抜かれた廃ビル。壁がないので当然窓もない。風と日差しが遠慮なく入ってくるその会場の展示は、和紙にプリントされた人物写真だったという。
単に和紙にプリントされたことが珍しいとかではない。止めどなく入る日差しに照らされて写真に透明感が与えられ、風でゆらめく紙の動きがさながら写真の人物の髪が揺れているように見えるものだったとか。−

正直、そんな発想なんて思い付かない。「思い付く」という言い方がそもそも烏滸がましいのかもしれないが、その展示法を聞いた時、自分は何て狭い世界にいるのだろうと思った。
自分の展示方法が良い悪いとかではないが、空間のデザイン・写真を最大限に魅せる努力というものの底知れなさに畏怖の念を感じ、同時に写真展の奥深さにより面白さを感じた。
まだまだ写真について知らないことがある、私はまだまだ0.5だと自分の写真集と重なる思いだった。

2つ目は写真展自体だ。オフラインの展示をするのは実に1年ぶりであったが、やはり実際に人と会う・話す・他の方のプリントを見るでは情報量がオンラインと比較すると全く違う。
主題は大きく副題は小さく展示された組写真、独創的で解説付きの展示作品、ピクセルの海に潜って編集した作品、各々が思いを込めて作った写真集…自分の発想にないことができる人は素直に尊敬の念が生まれる。
写真展に参加する意味を感じさせられた、良い写真展だった。

そして3つ目はうっちーさんの何の気なしに出た言葉だ。

子どものおしりを狙ううっちーさん

あれはそうだ、SIGMAのdpについてうっちーさんとせりなさんと話をしている時だったか。
全く同じ言葉を思い出すことはできないが、こんなことを言っていた。

僕はカメラを常にバッグの中に持ち歩いているよ。
良い瞬間に出会えてもカメラがないと撮れないけど、カメラがあれば撮れるから。

至ってシンプル、至極当然のこと。だけど私はここでハッとさせられた。冒頭に申し上げた通り、「まあいっか」の気持ちがあったからだ。実際、今までも良いなと思う瞬間をカメラが無いから仕方ないと逃してきたことが何回もあった。

気持ちがないと良い写真が撮れないのは間違ってないと思うし、まあいっかと気を抜く瞬間があっても良いと思う。
だけどそんな気の緩みの積み重なりが、自分が常にカメラを持ち歩かない言い訳を生み出していたように思えてならなくなった。
そんな過去の自分を超えていけるようにしたいと思えた写真展だった。




4月は私の反省文のようなnoteになってしまったが、この自戒noteを読んで誰かの心を奮い立たせることができたなら幸いである。
あれから私はどこに行くにもX100Vを持ち運ぶようになった。常に何かを撮れるわけではないが、それでも何かを逃さないようにして日々の生活を送っていきたいものだ。

それでは。

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