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マスクとマヌケでメガネを曇らせる私
私、メガネを4つ持っているのですが、自宅用のボロいメガネでまちがえて外に出ると、マスクの影響もあり思いっきり曇るんですよね。
どうがんばっても曇ります。
いくらマスクの鼻まわりを閉じてもメガネが真っ白になるんですよね。
なにも見えなくてこわくてしかたありません。
それに周りから見てもマヌケでしかたないんですよね。メガネがくもるってほんとバカでマヌケみたいです。
でもそうなると考え方も変わって、少しでも他人にマヌケに見られたい自分としては「メガネがくもってもいいんだ!」となるんですよね。
そう私って人からマヌケに見られたい願望がひじょうに強くてもはや変態レベルなんです。
年齢を重ねれば重ねるほどマヌケに見られたいと思うようになるのです。
だから電車に飛び乗って温度差でメガネが真っ白になると、あえてそのまま放置してシートに座ってキョロキョロしてみたりするんです。
あとお茶したあとにお会計のときにマスクをしてメガネをくもらせて、財布での小銭探しをまごついて見せたり
道を歩いていてメガネを曇らせて電信柱にぶつかりそうになったりとそれはそれはもうマヌケで大ハッスルしているわけです。
私はこの先が心配です。私自身のこの先がほんとうに心配なのです。なぜマヌケでいたいのでしょうか。
なぜなら周りがみんな「しっかりしよう!」という人ばかりだったからです。わたしは子どものころからちっともこの言葉になじめませんでした。
ずっと違和感がありながらも、それなりにスポーツや勉強をがんばって社会人となりましたが、30代中盤ぐらいまで「仕事ができる人」にまるであこがれませんでした。
それよりも社内に生息していた「仕事ができない人」に猛烈に惹かれたのです。40代、50代になっても仕事ができなくてみんなにバカにされている人。
そんな人に私もなりたい。そう思ったのです。
だから私は結婚も子どももなにもかもあきらめました。ひとりで生きていくことにしたのです。
しかし人生とはおもしろいもので、そう開き直るとマヌケに魅力を感じるマニアックな人がいるものです。
妻はわたしのそんなマヌケなところを気に入ってくれて、ひょんなことから結婚してしまいました。
妻はいまだにほんとうに私がしっかりすると残念がるのです。わたしが仕事でほめられたりすると本気でがっかりしています。私の好きな人の感じじゃない!というわけです。
逆に私がマヌケにやらかして外で恥をかくと本気でよろこびます。そして「いいね!いいね!その調子!」と言うのです。
これが日々行われているのですから、ますます私はマヌケに向かいがちになるし確実にマヌケになっています。
この歪な関係はまわりに言ってもなかなか理解してもらえません。両親も結婚当初は「そんな甲斐性なしじゃ奥さんに捨てられるよ!」と心配されたのですが
どうやら妻がマヌケを求めているらしいとわかってからは何も言わなくなりました。
そう、つまり、わたしがマヌケであればあるほど彼女は私を捨てないのです。これは確信があります。
なんだか話が転がって変な方向に来ましたが、まあこんな感じなわけです。
マヌケを望む妻とマヌケでありたい私が心配です。
が、もはや腹をくくるしかありません。わたしはこの一生を通じてマヌケを貫きたいと思います。
残りの人生、覚悟を決めたいと思うのです。