はじめての人事、必要な知識

「人事に必要な知識」と聞いてまず思い浮かべるのは、労働法や民法など人事領域に関連する法律知識ではないでしょうか?法律をマスターしたり、資格を取得することが、人事担当者としての第一歩だと思っている方も少なくないように感じます。

しかし、専門的な法律知識は実はそこまで重要ではありません。なぜなら、法律知識はその分野の専門家、例えば労務関係であれば社労士に、個別のトラブルは弁護士に聞けば解決することだからです。法律の丸暗記や過去の判例の収集といった「お勉強」は必要ないのです。

ただし、高度に専門的である必要はありませんが、最低限の知識は必要です。何も知らないでいい、というわけではありませんのでご注意ください。

知識の深さとしては、専門家と会話ができるレベルを目安です。
何かを専門家に相談しても、専門家の言っていることが理解できなければ、それは情報を表面上だけでやり取りしている伝言ゲームにすぎません。会社と専門家との間に人事が立つ意味は、情報をかみ砕き、会社の考えを適切に専門家に伝え、専門家の言葉を適切に会社にフィードバックすること。それを実現するために、最低限の法律に関する知識が必要になるのです。

それと並行して、専門的な知識にアクセスする手段を確保しておくことも人事には求められます。例えば社内から何らかの質問が上がってきたとき、「どの本を調べればわかるか」「誰に聞けばわかるか」が明確になっていれば、すぐに対応することができます。

しかしその問題に関する知識がなければ、手探り状態で進むしかありません。仮に最後には解決できたとしても、かなりの手間と時間が必要になるでしょう。聞くべき専門家を間違えると余計な費用が発生してしまったり、時には信用を失ったりもします。効率よく問題を処理していくためにも、専門的な知識へのアクセス手段は、常に意識して準備しておくとよろしいかと思います。

ここで注意しておいてもらいたいことは、専門的な知識にアクセスした結果「法律ではどの条項で規定されているか」「どの判例を典拠にしているか」といった専門知識を覚える必要はないということです。繰り返しになりますが、丸暗記はその分野の専門家の仕事です。以前聞いたことを忘れてしまっても問題はありません。そのための専門家ですから、遠慮せずに聞いてください。

人事は人事施策の専門家であり、法律知識の専門家ではない。このスタンスは人事として仕事をすすめていく上で重要です。

反対に、ぜひ学んでおいてほしいことは「人事とは一体何か」「どのようなことが求められているのか」といった、人事に関する基礎知識です。この部分はいわば人事の専門分野ですから、深く踏み込んで取り組む必要があります。書籍でも構いませんし、セミナーなども頻繁に開催されていますので、積極的に活用してください。

他には、人事関連のニュースも知っておいて損はありません。例えば働き方改革に関する法改正などは、詳しく知っておく必要はないものの、「どのようなことが行われるのか」「目的は何か」「人事としてどんな対応が必要になるのか」は理解しておくとよろしかと思います。社内の誰かに尋ねられた時、簡単に説明できる状態が理想です。

また、他の企業は実際にどのような人事施策を行い、どういった効果を上げているのかの情報収集も怠らないようにしてください。他社の動向を参考にしながら、適宜自社の人事制度をアップデートできる体制を作っておくことが大切です。

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