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競馬業界は畳み人不足

車移動の多い全北海道民におすすめの音声メディアVoicyの人気コンテンツ『風呂敷「畳み人」ラジオ』でおなじみ、幻冬舎の設楽悠介さんが『「畳み人」という選択――「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書』を出版された。これ、競馬業界の人にはぜひ読んでほしい本だったのでnoteにしました。

いきなり余談 ブロックチェーン版おもしろい

僕も、0代後半から20代は畳み人要素強めに生きてきた自覚はある。だからこそ「畳み人」という言い方を聞いたときは「うまいこというなあ」と同時にどんな人を指すのかぱっと想像がついたし、Voicyの放送はすべて聞いていた。最近は広げ人的気質が強くなってきたなと感じているものの、これはやはり読まないわけにはいかないと手にとってみた。

いや、違う。本音を言うと、ラジオ全部聞いていたし「そんな新しいこと書いてあんのかな?」とちょっと躊躇していた。最後、背中を押したのはブロックチェーン版の発売でした。

限定100冊、買ったあとに加筆される本。おもしろいじゃないですか。日本円またはEthereumで購入ができて、今後は二次流通も可能になるそうだ。加筆のペースや内容も読めないなかで6,000円は高く感じるかもしれないけど、こういった取り組みは興味深いし、早速Ethereumで購入してみた。(決してEthereumが急落したからじゃないよ)

肝心の本の感想はというと、多少畳み人スキルに自負はあったけど、自分もまだまだだったなと感じさせられる、さすがの内容。改めて畳み人に求められるものを言語化してもらたことで、これからはもう一段高いレベルで畳んでいけそうだと感じた。

競馬業界は広げ人と畳みすぎの人に二極化している?

僕の狭い理解の範囲内では、馬の業界は「てっぺん獲ったる」「なにか新しいことやらないと」と広げることだけ考えている人と、「自分たちが食える分だけ稼げれば」「ずっといちスタッフでいたいです」と小さく小さく畳んでいこうとする人に二極化している印象がある。

業界に危機感を持って打開策を見出すという点では、もっと広げ人の数も必要だし広げ方のレベルも上げなければいけない。ただそれ以上に、せっかくいいアイデアをもった広げ人が出てきても、実現に導く畳み人が伴わないケースが多く見受けられる。素晴らしい理念を持った新しい育成場ができたり、オーナーが出てきたりしても、社長を支えるCOOのような存在がいないと社長が直接フォローできる規模以上に成長させることが難しくなってしまう。こうした畳み人不足を解消するためにも、競馬業界の人たちにはぜひ読んでもらいたい一冊だと感じている。

本のプロモーションで設楽さんも盛んにおっしゃっているけど、ほとんどの広げ人も昔は畳み人だったということは間違いなく知っておいたほうが良い。なんなら、広げ人として有名な方も、現役の畳み人だったりする。広げ人と畳み人の関係は棒磁石のN極とS極みたいなもので、もともとS極だったやつも、磁石を折ればたちまちN極としての役割を果たすようになる。誰と組むか、どんな仕事かによって、柔軟に入れ替わる役割だと思っている。

広げることだけ考えたい人も、優秀な畳み人が見つかるまでは自分で畳まなきゃいけないシーンが多いだろうし、見つかったあとも畳み人の感覚がわかっている広げ人のほうが成功しやすいはずだ。
小さく畳もうとしている人のなかには、「ほんとは広げ人やりたいけど、自信がないから畳んでます」みたいな人もいるのではないか。そういう発想にだと畳みレベルもあんまり高くなかったりするから、まずは畳み人極める!くらいの気持ちで読んでみてほしい。規模が小さかろうと、きれいにまとめ続けるのってけっこう大変なはずだから。

個人的に意識したいポイント2つ

詳しい内容はもちろん本を読んでいただけたらと思うが、個人的には以下の2点を今後徹底していきたい。これは畳み人を続けて来た人であれば、多くの人が感じたことのある課題なのではないだろうか。

・広げ人のアイデアを「はじめは」一緒に面白がれ
・連絡係になるな。意思決定の範囲をすり合わせ、現場判断をせよ

1つ目は、広げ人のアイデアを「はじめは」一緒に面白がれ。ここのポイントは、「はじめに」である。

畳み人というのは、現実を見るタイプが多いこともあってか、広げ人が思いついたアイデアを聞いたときに、ついそれを実現するための「ハードル」が頭をよぎる。そこを、まずは面白がるように意識するようにするのだ。ただ、これはアイデアや畳み人の言うことにずっと賛同し続けろということではない。最初に賛同・共感し、畳み人の信頼を勝ち得ることで、「アイデアの共犯者になって、軌道修正できるポジションを取る」ことができるということだ。最終的にそのプロジェクトを中止すべきだと思ったときには、それを進言できるくらいの”共犯者”を目指せばよいのである。

真の畳み人は意思決定者である

2つ目、「連絡係になるな。意思決定の範囲をすり合わせ、現場判断をせよ」。ここはもうそのままなので、一部を本から引用させてもらいました。

プロジェクトの根幹や方針に関わる大きな意思決定はリーダーである広げ人が行うべきですが、とくに日々の仕事で発生する中小規模の意思決定を行うのは、現場を指揮する畳み人の大きな仕事です。
あなたが広げ人から強い信頼を得ていれば、広げ人にエスカレーションする案件については自己判断してもいいでしょう。ただその判断に不安が有る場合は、広げ人と事前にすり合わせをしておきましょう。どの程度の予算規模や事柄であればあなたが意思決定していいのか、予め広げ人と合意形成しておくのです。このすり合わせを前にしておくかどうかで、その後の仕事のスピードは格段に違ってきます。

本当の畳み人は、リスクを取らない連絡係ではない。シンプルで小さな案件であれば誰でも畳めるから、畳み人には誰でもなれると思っている人も多いかもしれない。ただ、真の畳み人は広げ人と一緒にスピード感を持ってプロジェクトを進める共同経営者のような存在なのだ。

各論もしっかり書いてあるので、明日から使える

上記の2点以外にも、「広げ人のことを世界で一番理解しろ」「畳み人は全リスクを察知し、広げ人にはマクロなリスクのみ伝えよ」「常に相手とその先にいる他者のことまで想像せよ」など、見出しだけでも畳み人スキルを何割も上げてくれそうなことが書かかれているが、最大の魅力は明日使える各論を丁寧に書いてくれているところだ。

さすが畳み人本というか、「ふわっと畳めるやつはたくさんいるけど、ここまでやりきれてはじめて一流の畳み人だぞ」というメッセージのようにも感じる。具体例はもちろん本に譲るが、ダバディのように広げ人の感情を伝えよといったことから、上司への報告の仕方、業務時間の計測・短縮方法といったところまで、本当に読んだ直後から使えることが散りばめられている。

アイデアに価値はないと言われて久しいが、広げ人タイプであればそのアイデアを実現に導くのに必要な要素をつかめるはずだし、まだキャリアが浅かったり畳み人気質だったりする人は明日から仕事のレベルをぐっと上げることができる一冊になっている。

こういうOSのように装着しておいてほしいことがまとまっている良著は、ありそうで少ない。このところ、三浦崇宏さんの『言語化力』、田端さんの『これからの会社員の教科書』など、”知っておくとチート的に仕事ができるようになる本”が多く出版されている。これらの本は、各論や具体例をふんだんに使って書かれているのでさっと読むことができるから、若手向きの本だと毛嫌いせずにぜひ目を通してみてほしい。コンテキストを共有できていれば仕事のスピードは加速度的に速くなる。うちの牧場の新人はもちろん、競馬業界で働く人がたくさん読んでくれたら、仕事のしやすさはお互い一気に上るだろうなあ。




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